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高齢の親を熱中症から守るために、家族が意識しておきたいこと


職場の熱中症対策から、家族を守る視点へ

皆さん、日頃より暑い中でのお仕事、本当にお疲れさまです。職場では、熱中症について労働災害防止の観点からも注意喚起が行われていますが、今回は少し視点を変えて、ご家族や身近な高齢の方の熱中症対策について、保健師の立場からお伝えします。

当社では、仕事と介護の両立支援の一環として「ゆるっとかいご」さんと協業し、介護に関する相談や、仕事と介護の両立を支えるサポートサービスを提供しています。日々の健康管理と同じように、介護やご家族の体調変化も、早めに気づき、相談できることが大切です。

残暑が続く時期は、まだまだ油断できません。ご両親や離れて暮らすご家族、身近な高齢の方について、「最近変わった様子はないかな」「室内の暑さ対策はできているかな」と、少し意識を向けるきっかけにしていただければと思います。

特に高齢の方は、暑さや喉の渇きを感じにくく、ご本人が「大丈夫」と話していても、体調の変化が進んでいることがあります。言葉だけで判断せず、食事量、会話の様子、室温、水分の取り方など、確認できる根拠をもとに見守ることが大切です。あわせて、いざというときに誰へ連絡し、どのように動くのかを、ご家族で話し合っておくと安心です。シルバーウィークなどの機会に、ぜひこのコラムを参考にしてみてください。

【このコラムのポイント】

・今回は職場の労災対策ではなく、ご家族や身近な高齢の方の熱中症対策のお話です

・高齢の方は「大丈夫」と話していても、体調の変化が進んでいることがあります

・いざというときに誰へ連絡し、どう動くかを、ご家族で話し合っておくと安心です

【目次】

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高齢の方の「大丈夫」を過信しない

高齢の方の熱中症で特に注意したいのは、本人が「暑い」と感じる前に、症状が進んでいることがある点です。

暑い時期になると、高齢の親の熱中症が心配になる方も多いのではないでしょうか。

実際、熱中症で救急搬送された方のうち65歳以上が57.1%と最も多く、発生場所も住居が38.1%で最多です(消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」)。暑さで倒れる場所は、屋外よりもむしろ自宅の中なのです。

高齢になると、暑さや喉の渇きを感じにくくなります。そのため、本人が「暑くない」「大丈夫」と話していても、気づかないうちに脱水や熱中症が進んでいることがあります。

今回は、高齢の親を熱中症から守るために、家族が気づきたいサインと、日頃から意識しておきたい対策をお伝えします。

この章のポイント

・熱中症で救急搬送された方の57.1%が65歳以上、発生場所は住居が38.1%で最多

・高齢になると、暑さや喉の渇きを感じにくくなる

・本人が「暑くない」と話していても、気づかないうちに脱水や熱中症が進んでいることがある

熱中症は「いつもと違う」が大切なサイン

熱中症の分かりやすい症状として、めまい、立ちくらみ、頭痛、吐き気、体のだるさなどがあります。

ただし、高齢の方の場合は、はっきりと「頭が痛い」「気持ちが悪い」と訴えないこともあります。そこで家族が意識したいのが、生活の中に表れる小さな変化です。

  1. いつもより元気がない
  2. 食事の量が減っている
  3. 水分をとる量が減っている
  4. 会話の反応がいつもより鈍い
  5. 歩き方がふらついている
  6. トイレの回数が少ない

特に「会話の反応がいつもより鈍い」という変化は、認知症の症状との見分けが難しい場合があります。

ただし、呼びかけに応じない、返事の内容がかみ合わないなど、はっきりと反応がおかしいときは別に考えてください。意識の障害は熱中症の中でも重い段階のサインです。様子を見ずに、後述のとおりすぐに救急車を呼んでください。

判断するときのポイントは、「いつもと違うかどうか」です。昨日まで普通に話していたのに、今日は反応が鈍い。このような変化があるときは、脱水や熱中症の可能性も考えてください。

熱中症が重症化すると、脳や内臓に影響が出ることがあります。暑い時期に「いつもと違う」と感じたら、様子を見るだけで終わらせず、早めに状態を確認することが大切です。

この章のポイント

・高齢の方は「頭が痛い」「気持ちが悪い」とはっきり訴えないことがある

・元気・食事の量・会話の反応・歩き方・トイレの回数の変化を見る

・判断のポイントは「いつもと違うかどうか」

家族が意識しておきたい3つの熱中症対策

1.水分を飲むタイミングを決める

高齢の方は、喉の渇きを感じにくくなっています。そのため、「喉が渇いたら飲む」のではなく、生活の中で水分を取るタイミングを決めておくのがおすすめです。

たとえば、次のようなタイミングを、普段の生活の流れに組み込むと続けやすくなります。

  1. 朝起きたとき
  2. 食事のとき
  3. 薬を飲むとき
  4. 入浴の前後
  5. 寝る前

一方で、「夜にトイレへ行きたくないから、水分を取りたくない」と話す方も少なくありません。その場合は、一度にたくさん飲むのではなく、少量ずつ、こまめに取るようにします。

水が飲みにくい方には、お茶やゼリー飲料、味噌汁など、本人が取りやすい形を工夫してみましょう。

また、汗を多くかいた日は、水分だけでなく塩分も一緒に補うことが大切です。汗をかいたあとに水やお茶だけを大量に飲むと、体の中の塩分が薄まり、かえって体調を崩すことがあります。経口補水液を常備しておくと安心です。

注意:心臓や腎臓の病気などで水分や塩分の制限がある方は、どのくらい取ればよいか、主治医に相談してください。

2.室温を感覚ではなく数字で確認する

本人が「暑くない」と話していても、実際には部屋の中がかなり暑くなっていることがあります。

そこで、室内に温度計や湿度計を置き、「今、部屋が何度なのか」を目で確認できるようにしておくと安心です。

目安は、室温28℃前後です。環境省も、暑い日には冷房を使って室温をおおむね28℃前後に保つようすすめています。ここで気をつけたいのは、28℃はエアコンの設定温度ではなく、部屋の温度だという点です。設定を28℃にしていても、室温がそれ以上になっていることは珍しくありません。必ず温度計の数字で確かめてください。

数字が見えるようになっていれば、離れて暮らす家族も、電話で室温を確認できます。本人にとっても、自分の感覚だけで判断せず、室内の状態を把握しやすくなります。

室温が高くなっているときは、我慢せず、部屋の環境を整えることが大切です。熱中症は、我慢で防げるものではありません。

3.「熱中症かもしれない」ときの連絡先と動き方を決めておく

熱中症が疑われるときに、誰へ連絡し、どのように動くのかを、あらかじめ家族で決めておきましょう。

いざというときに、「この程度で救急車を呼んでもよいのだろうか」「近所の目が気になる」と、ためらってしまう方もいます。しかし、熱中症は対応が遅れると危険なことがあります。

次のような状態が見られる場合は、遠慮せず救急車を呼んでください。

  1. 自分で水分を取れない
  2. ろれつが回らない
  3. 反応がぼんやりしている
  4. まっすぐ歩けない

救急車を呼んだあと、到着を待つ間にもできることがあります。

  1. 涼しい場所へ移し、衣服をゆるめる
  2. 首の周り、脇の下、脚の付け根を冷やす
  3. 意識がはっきりしないときは、無理に水を飲ませない

熱中症は、体温をどれだけ早く下げられるかが回復を大きく左右します。エアコンの効いた部屋へ移し、保冷剤や氷のうをタオルで包んで当ててください。ただし、意識がはっきりしないときに飲ませようとすると、水が気道に入るおそれがあります。その場合は飲ませず、救急隊の到着を待ちましょう。

親と離れて暮らしている場合は、緊急時に誰が様子を見に行くのかも決めておく必要があります。

近くに住む親戚や近所の方、ケアマネジャー、訪問看護師、介護サービス事業所など、いざというときに連絡できる相手を整理しておきましょう。

この章のポイント

・水分は「喉が渇いたら飲む」のではなく、飲むタイミングを決めておく(水分・塩分の制限がある方は主治医に相談)

・室温は感覚ではなく数字で確認する(目安は28℃前後。エアコンの設定温度ではなく室温)

・熱中症が疑われるときの連絡先と、救急車を呼ぶ目安を家族で共有しておく

遠距離介護では、専門職に具体的に伝える

離れて暮らす親の様子を、家族だけで毎日確認するのは難しいものです。そのようなときは、ケアマネジャーや介護職など、親に関わっている専門職の力も借りましょう。

大切なのは、単に「熱中症が心配です」と伝えるだけで終わらせず、何を確認してほしいのかを具体的に伝えることです。

「訪問したときに、エアコンで室温を調整してもらえますか」

「水分をどのくらい取れているか、声をかけてもらえますか」

このように伝えておくと、介護職も確認するポイントが分かりやすくなります。遠距離介護では、家族が見られない時間を、専門職の目で補ってもらうことが大切です。

この章のポイント

・家族だけで毎日確認するのは難しい。専門職の力も借りる

・「熱中症が心配です」で終わらせず、確認してほしいことを具体的に伝える

・家族が見られない時間を、専門職の目で補ってもらう

まとめ:家族で話し合うきっかけに

高齢の親を熱中症から守るために、家族が意識しておきたいポイントは、次の3つです。

  1. 水分を飲むタイミングを生活の中に組み込む
  2. 室温を感覚ではなく数字で確認する
  3. 熱中症が疑われるときの連絡先と動き方を決めておく

そして、暑い時期に親の様子が「いつもと違う」と感じたら、様子を見るだけで終わらせず、早めに状態を確認しましょう。必要なときは、医療機関や救急につなげることも大切です。

高齢の方は、自分では暑さや体調の変化に気づきにくいことがあります。家族も無理を抱え込まず、周囲の人や専門職と連携しながら、早め早めの熱中症対策を進めていきましょう。

(文・監修/神戸 貴子)
看護師、ケアマネージャー資格保有。
N.K.Cナーシングコアコーポレーション合同会社 代表
遠距離介護支援協会 代表
自ら子育てや介護を経験し、介護保険適用サービスでは介護をする側の人に対するサービスが行き届いていないことを実感。 自らが苦労した経験を生かしたいと、介護・育児をサポートする「わたしの看護婦さん®」のサービスを開始。 内閣府女性のチャレンジ賞、東京都知事賞、鳥取県活動表彰最高賞等、多数受賞。講演、コンサルティングも行う。

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