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​​エイジフレンドリーガイドラインから指針へ|何が変わった?新ルールと企業の対応ポイントを解説【保健師監修】


少子高齢化の進行により、日本の職場では高年齢労働者の割合が年々増加しています。それに伴い、たとえば転倒などのヒヤリハットが報告されるケースが増えていないでしょうか?加齢による身体機能の変化を踏まえた労働災害防止対策の重要性が高まっていると言えます。

こうした背景のもと、厚生労働省が策定したのが「エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)」です。

なお、これまで推奨されてきたエイジフレンドリーガイドラインは2026年3月31日をもって廃止され、新たに労働安全衛生法に基づく「高年齢者の労働災害防止のための指針」に移行しました(2026年4月1日適用)。最大の変化は、高年齢者への労災防止措置が事業者の「努力義務」として法律に明記された点です。 本記事では、旧ガイドラインの基本的な考え方を踏まえつつ、新指針で強化・追加されたポイントや、企業が実践すべき具体的な取り組みまでをわかりやすく解説します。

目次】

  1. エイジフレンドリーガイドラインとは
  2. ガイドラインが策定された背景
  3. 新指針が定める5つの措置と旧ガイドラインからの変更点
  4. エイジフレンドリーガイドラインに基づく企業の具体的な取り組み例
  5. 新指針を実施するために押さえるべき関連法令と産業保健の連携
  6. エイジフレンドリー補助金の活用
  7. 企業がエイジフレンドリーガイドライン・新指針に取り組むメリット
  8. エイジフレンドリーガイドラインに関してよくある質問(FAQ)
  9. まとめ:エイジフレンドリーガイドラインから新指針へ――高年齢者がいきいきと働ける職場づくりを進めよう
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1.エイジフレンドリーガイドラインとは

まずは「エイジフレンドリーガイドライン」の正式名称や定義をはじめ、策定の経緯、ガイドラインの全体像、基本的な位置づけについて解説します。

エイジフレンドリーガイドラインの正式名称と概要

エイジフレンドリーガイドラインの正式名称は「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」で、2020年3月に厚生労働省が公表したものです。

高年齢労働者が安全かつ健康に働ける職場環境の実現を目的とし、事業者と労働者の双方が取り組むべき事項が体系的にまとめられています。

法的な強制力を持つものではありませんでしたが、2020年の公表から約5年の間に周知が進み、企業が高年齢労働者の安全衛生対策を進めるうえでの指針として広く認知されるようになりました。

本ガイドラインは2026年3月31日をもって廃止され、「高年齢者の労働災害防止のための指針」に移行しています。以下では旧ガイドラインの内容を踏まえつつ、新指針での変更点もあわせて解説します。

参考:厚生労働省|エイジフレンドリーガイドライン

参考:厚生労働省|報道発表資料「「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)を公表します

エイジフレンドリーガイドラインから新指針への移行(2026年4月〜)

2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善や作業管理等の措置を講じることが事業者の努力義務として明記されました(第62条の2)。これを受け、2026年2月10日に厚生労働省が「高年齢者の労働災害防止のための指針」を公示し、同年4月1日から適用が開始されています。

従来のエイジフレンドリーガイドラインは、厚生労働省の通達として示された行政指導上のガイドラインにとどまっていました。一方、新たに示された「高年齢者の労働災害防止のための指針」は、労働安全衛生法第62条の2第2項に基づく法定の指針である点が、両者の最も大きな違いです。

なお、5つの柱(安全衛生管理体制の確立・職場環境の改善・健康や体力の把握・状況に応じた対応・安全衛生教育)という基本構造は旧ガイドラインを継承しており、取り組みの連続性は保たれています。

参考:厚生労働省|「高年齢者の労働災害防止のための指針」について(公示)

2.ガイドラインが策定された背景

ガイドラインが策定された背景には、労働者の高齢化と高年齢労働者の労働災害増加という二つの大きな要因があります。以下では、それぞれの要因について詳しく見ていきましょう。

高年齢労働者の増加と労働災害の現状

引用:厚生労働省労働基準局安全衛生部|第14次労働災害防止計画の概要

総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」によれば、60歳以上の就業者数は年々増加の一途をたどっています。同時に、労働災害における高年齢者の割合も上昇しており、転倒や墜落・転落といった事故が特に多い傾向にある状況です。

引用:厚生労働省労働基準局安全衛生部|第14次労働災害防止計画の概要

加齢に伴う筋力・バランス能力・視力・聴力などの低下が災害リスクを高めており、従来の安全対策だけでは十分に対応しきれない状況が生じているのです。

参考:総務省統計局|令和4年就業構造基本調査 高齢者の就業

参考:厚生労働省|「働く高年齢者」の 安全と健康を確保する

高年齢者雇用安定法との関連

2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業機会確保が努力義務として規定されました。

企業にとって高年齢者の雇用継続が一層求められるなかで、安全と健康を確保するための具体的な指針として、エイジフレンドリーガイドラインの重要性が高まり、現在は新指針として法的に位置づけられるに至っています。

参考:厚生労働省|高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~

保健師の視点から

厚生労働省は、高年齢労働者による事故事例として「製造業における転倒」「小売業における転倒」などを挙げています。具体的には、「清掃中の濡れた床で足を滑らせ、転倒。骨折し、休業見込み期間6か月」「商品の陳列作業中につまづいて転倒し骨折。休業見込み期間約2か月」といったケースです。これらの事例から、高年齢労働者の労災による休業は長期化しやすいとうかがえるため、災害の防止策を職場でしっかりと行う必要があります。

参考:厚生労働省|転倒災害防止の特設ページ 参考:職場のあんぜんサイト|災害事例(転倒)

「小売業における転倒災害防止」 小売業向けリーフレット (PDF)

また、災害の要因は職場(作業内容・作業環境)だけではないのが特徴です。高年齢労働者自身の健康面も要因となります。高年齢労働者は、加齢により視力・筋力・バランス感覚などの身体機能の低下が見られます。また、健康チェックなどで体力の状況などを客観的に把握した際に、自己評価と測定結果との間に乖離がある場合も見られます。

ガイドラインでは、こうした健康自認(自分自身を健康だと認識しているかどうか)と身体機能の乖離を自覚する機会を作るために健康チェックを行うことを推奨しています。また、服薬による立ちくらみ・ふらつき等の副作用も転倒要因となり得ます。こうした健康管理も労災予防の対策として重要だと言えるでしょう。

参考:厚生労働省労働基準局安全衛生部|第14次労働災害防止計画の概要

   厚生労働省|エイジフレンドリーガイドライン

3.新指針が定める5つの措置と旧ガイドラインからの変更点

新指針が示す取り組みは、旧ガイドラインと同様に「事業者が行うべき事項」と「労働者自身が取り組むべき事項」に分かれています。5つの柱の基本構造は継承されていますが、新指針ではいくつかの点が強化されました。ここでは、新指針の内容をもとに、旧ガイドラインからの主な変更点もあわせて解説します。

事業者が取り組むべき事項

事業者に求められる取り組みは多岐にわたり、ガイドラインでは主に以下の5つの柱が示されています。それぞれの柱について順に確認しましょう。

安全衛生管理体制の確立

事業者は、高年齢労働者の安全と健康確保を経営方針として明確に打ち出し、具体的な計画を策定・推進する体制を整えることが求められます。担当部署や担当者の配置、リスクアセスメントの実施体制の構築など、組織的に取り組む仕組みづくりが不可欠です。

新指針では、安全衛生委員会等での調査審議がより明確に求められています。委員会を設置していない事業場でも、労働者の意見を聴く機会を活用するなど、労使で話し合う場を設けることが重要視されています。また、高年齢者の身体機能低下に伴うリスクを洗い出す「リスクアセスメント」の実施が強く推奨されている点も新たなポイントです。

職場環境の改善(ハード面の対策)

加齢による身体機能の変化を踏まえ、照明の明るさの確保、段差の解消、手すりの設置、滑りにくい床材への変更など、職場のハード面を改善することが重要です。作業場所の温度管理や騒音対策も含め、高年齢者が安全に作業できる物理的環境を整備する必要があります。

新指針では、従来のハード面の対策に加え、暑熱な環境への対応(熱中症対策)が特に強化されています。高年齢者は暑さや水分不足を感じにくいため、涼しい休憩場所の整備や意識的な水分補給の指導が重要視されています。

高年齢労働者の健康や体力の状況の把握

定期健康診断に加え、体力テストやフィジカルチェックなどを活用して、個々の労働者の身体機能や健康状態を適切に把握することが求められます。その結果を踏まえて、作業内容や配置の見直しを行うことがガイドラインで推奨されています。

高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応

個々の労働者の体力や健康状態に応じて、作業ペースの調整、休憩時間の確保、作業時間の短縮、配置転換などの措置を講じることが求められます。画一的な対応ではなく、一人ひとりの状況に合わせた柔軟な対応が重要です。

新指針では、健康や体力の状況を踏まえて個々の労働者に適合する業務を「マッチング」させることが強調されました。労働時間の短縮や深夜業の減少、作業の転換などの就業上の措置が含まれます。また、疾病を抱える高年齢労働者については「治療と就業の両立支援指針」に基づく配慮も求められています。

安全衛生教育の実施

高年齢労働者本人に対する教育だけでなく、管理監督者や同僚に対しても、加齢に伴う心身の変化や留意点について教育を行うことが重要だと言えます。高年齢者特有のリスクへの理解を職場全体で共有することで、効果的な災害防止につなげられるでしょう。

新指針では、高年齢者への教育について「十分な時間をかけ、写真や映像を用いて特に丁寧な教育を行うこと」と具体的な方法にまで言及されています。特に、再雇用や再就職により経験のない業種や業務に従事する場合には、丁寧な教育訓練を行うことが求められます。

労働者自身が取り組むべき事項

ガイドラインは事業者だけでなく、労働者自身にも主体的な取り組みを求めています。具体的には、自らの身体機能の変化を理解し、日常的な体力づくりや健康管理に努めることが挙げられます。定期健康診断の受診はもちろん、転倒防止のための体操や運動習慣の維持、適切な食事・睡眠の確保など、自己管理の意識を高めることが重要だと位置づけられている点がポイントです。

参考:厚生労働省|エイジフレンドリーガイドライン

4.エイジフレンドリーガイドラインに基づく企業の具体的な取り組み例

ガイドラインの内容を実際の職場でどのように実践すればよいのか、具体的な取り組み例を紹介します。業種や職場環境によって優先すべき対策は異なりますが、ここでは、多くの企業で参考にできる代表的な施策を取り上げます。

リスクアセスメントの実施と作業内容の見直し

高年齢労働者が従事する作業について、転倒・墜落・腰痛などのリスクを洗い出し、危険度の高い作業については手順の変更や補助器具の導入を検討しましょう。重量物の取り扱い基準の緩和や、高所作業の頻度削減といった見直しが具体例として挙げられます。

職場環境の整備(照明・段差・温度管理など)

高年齢者の視力低下を考慮した照度の確保、つまずき防止のための段差解消や通路の整理整頓、暑熱環境における休憩スペースの設置など、日常的な職場環境を改善しましょう。比較的低コストで実施可能な対策も多く、即効性の高い取り組みとして推奨されています。

体力チェック・健康診断の活用と配置転換

健康診断結果や体力測定の結果をもとに、個人の状態に適した業務への配置を実施しましょう。身体的負荷の高い作業から負荷の低い作業への配置転換や、作業時間帯の調整なども含め、個別対応を丁寧に実施することが望ましいとされています。

参考:厚生労働省|エイジフレンドリーガイドライン

参考:日本経済新聞社|ACTION!健康経営 健康経営とは

安全教育・研修の実施

加齢による心身の変化と労働災害リスクの関連性について、高年齢労働者本人だけでなく職場全体で学ぶ機会を設けることも考えられます。転倒予防体操の実施、KYT(危険予知トレーニング)への高年齢者視点の導入、管理者向けのラインケア研修なども効果的な取り組みだと言えます。

保健師の視点から

職場巡視を行う際には、まずご自身が色のついた眼鏡などちょっと普段よりも見えづらい状況で歩いてみる、といったことを試してみましょう。肩や腰、膝などがいつもより上がらない、動かしにくい状態になったことを想定し、作業台や棚の位置を確認してみたり、作業服や靴、エプロンなど身に着けるものは動きやすいか、重たくないか、締め付けはないかといったことも考えたりしてみてください。

いつもの職場で、ご自身がいつもより不自由な状態で働くことを想像してみるだけでも世界は違って見えるのではないでしょうか。これは高齢労働者への配慮だけでなく、障害のある方や妊婦の立場でも同じ視点となります。

社内での安全衛生教育を行う際には単なる健康管理ではなく、たとえば体力測定などを社内行事やイベントとして実施すると、健康意識が高まって楽しく取り組めるでしょう。「運動と安全」「運動とメンタルヘルス」というようなコラボで実施するのも一案だと言えます。身体機能の低下によるリスクを労働者一人ひとりに自覚してもらい、体力維持や生活習慣の改善の必要性について理解を促すことがポイントです。ぜひ、きっかけづくりを行っていただければと思います。

5.新指針を実施するために押さえるべき関連法令と産業保健の連携

新指針の内容を理解したとしても、実際の現場で運用するには、それだけでは十分とは言えません。新指針は単独で完結するものではなく、労働安全衛生法をはじめとする複数の法律や関連指針と連動して機能する仕組みになっています。たとえば、体力チェックで取得した健康情報の取り扱いや、疾病を抱える労働者への配慮、運動指導・保健指導の実施根拠など、それぞれに対応する法的ルールが存在します。

また、これらの法令対応を人事部だけで完結させることは現実的ではありません。産業医や保健師といった産業保健スタッフの専門的知見を活かし、健康管理部門と人事労務管理部門が連携して取り組む体制づくりが不可欠です。

ここでは、新指針の運用に関わる主な関連法令・指針の概要と、人事部が産業医・保健師とどのように連携すべきかのプロセスを整理します。

関連する法律・指針との連動

新指針を現場で運用するためには、関連する法律や指針との連動が不可欠です。労働安全衛生法に基づく健康診断・安全衛生教育・管理体制の構築はもちろん、体力チェック等の健康情報を取得・利用する際は「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」を踏まえ、本人の同意取得や不利益取扱いの防止ルールを安全衛生委員会等で定めておく必要があります。

また、疾病を抱える高年齢労働者に対しては「治療と就業の両立支援指針」に基づく配慮が求められるほか、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針(THP指針)」等に基づく運動指導や保健指導も重要な位置づけとなっています。

人事部と産業医・保健師の連携プロセス

新指針の運用において、人事労務管理部門と産業保健スタッフ(産業医・保健師等)の連携が成功の鍵を握ります。

健康診断や体力チェックの結果を踏まえて労働時間や作業内容を見直す(配置転換等)必要がある場合、人事部が単独で判断するのではなく、産業医等の専門家の意見を聴取することが求められます。そのうえで、健康管理部門と人事労務管理部門が密に連携し、十分な話し合いを通じて高年齢者本人の了解を得たうえで、就業上の措置を実施することが指針上の適正なプロセスです。

保健師は、健診結果を高年齢者本人にわかりやすく説明し健康状況の自覚を促す役割や、体力チェックの企画、フレイル予防を意識した運動・保健指導の実施など、中核的な役割を担います。

6.エイジフレンドリー補助金の活用

新指針に沿った取り組みを進めるにあたって、費用面での支援制度も用意されています。ここでは、活用できる補助金制度について解説します。

エイジフレンドリー補助金の概要と対象

エイジフレンドリー補助金は、高年齢労働者の安全・健康確保のための設備改善や体力チェックなどに要する費用の一部を補助する制度です。中小企業事業者(常時使用する労働者数や資本金が一定以下の事業者)を対象としており、補助率や上限額は年度ごとに変わる場合があります。

具体的な対象経費には、転倒防止対策にかかる設備費、体力測定機器の導入費、安全衛生教育にかかる費用などが含まれます。

申請手続きと注意点

申請は厚生労働省の所管窓口を通じて行い、申請期間や必要書類は年度ごとに公表されます。また、事前に事業計画を策定し、ガイドラインに沿った取り組みであることを明確にする必要があります。

補助金の予算には限りがあるため、早めの情報収集と申請準備が重要です。最新の申請要件や補助内容については、厚生労働省の公式サイトや最寄りの労働局で確認することが推奨されます。

参考:厚生労働省|エイジフレンドリー補助金リーフレット

参考:厚生労働省労働基準局|令和7年度エイジフレンドリー補助金 Q&A

参考:一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会|令和7年度エイジフレンドリー補助金

7.企業がエイジフレンドリーガイドライン・新指針に取り組むメリット

新指針への取り組みは努力義務であり罰則を伴うものではないものの、企業にとって多くのメリットが期待できると考えられます。ここでは主な効果について整理します。

労働災害の減少と安全性の向上

高年齢者の身体特性を踏まえた職場改善を行うことで、転倒・転落をはじめとする労働災害の発生リスクを低減できます。結果として、労災保険料の抑制や生産性の維持・向上にもつながると期待できるでしょう。

従業員の定着率向上と人材確保

高年齢者が安心して働ける環境を整備することは、従業員の定着率向上に寄与すると考えられます。人手不足が深刻化するなかで、経験豊富な高年齢者の活躍を支える職場づくりは、企業の人材確保戦略としても有効でしょう。

企業イメージ・社会的評価の向上

高年齢者に配慮した職場環境の整備に積極的に取り組む姿勢は、企業の社会的責任(CSR)やダイバーシティ経営の観点からも評価されると想定されます。採用活動やステークホルダーとの関係構築においてもプラスの効果が見込まれるでしょう。

保健師の視点から:高年齢労働者への対策に取り組まない場合のリスク

職場でひとたび転倒事故が発生すると、長期間の休業者が出てしまうことがデータで示されています。休業期間が長期化すれば、周囲の業務負担が増えてしまい、疲弊から離職者が出る恐れもあるでしょう。一人のお休みが、他の働く方の負担を招き、新たな労災の温床となったり、病気休業の引き金になったりもしかねません。

また、休業者が復職を果たしたとしても、以前のように仕事のパフォーマンスを発揮できなければ生産性低下や人員不足といった「負のスパイラル」に陥るリスクがあると考えられます。

今いるベテラン労働者に長く、いきいきとご活躍いただくためには、安全な職場づくりと一人ひとりの健康づくりが欠かせません。

8.エイジフレンドリーガイドラインに関してよくある質問(FAQ)

エイジフレンドリーガイドラインについて企業の担当者から寄せられやすい疑問をQ&A形式で解説します。

Q. エイジフレンドリーガイドラインに法的拘束力はありますか?

旧エイジフレンドリーガイドラインは2026年3月31日をもって廃止されました。現在は、改正労働安全衛生法第62条の2に基づく「高年齢者の労働災害防止のための指針」が2026年4月1日から適用されています。新指針は法律に基づく努力義務であり、罰則はないものの、対策を怠った結果として労災が発生した場合には安全配慮義務違反を問われるリスクがあります。企業としては法令遵守の観点からも、新指針に沿った取り組みを進めることが望ましいと言えます。

Q. 対象となるのは何歳以上の労働者ですか?

ガイドラインが主に想定しているのは60歳以上の高年齢労働者ですが、加齢に伴う身体機能の変化には個人差が大きいと言えます。そのため、年齢だけで一律に区切るのではなく、個々の労働者の健康状態や体力に応じた対応が推奨されます。予防的な取り組みを進めることで、より効果的な労災防止につながるでしょう。

【保健師から】 良い健康習慣は短期間では身につきません。いろいろと試行錯誤をしながら、その方なりの健康維持の方法を見つけ、実施し続けることが必要であるため、早くからの取り組みが重要となるのです。また、体作りは衰えてしまってからでは始めるときにハードルが高いものですが、元気なうちから始め、徐々に体力に合わせて加減していくと習慣化がしやすくなります。

このコラムを読んだら、とりあえずスクワットかストレッチをしてみませんか?

Q. 中小企業でも取り組めますか?

ガイドラインは企業の規模を問わず、すべての事業者に対して取り組みを求めています。中小企業では大がかりな設備投資が難しい場合もありますが、段差の解消や照度の改善、安全衛生教育の実施など、低コストで始められる対策も多いと言えます。加えて、エイジフレンドリー補助金は中小企業事業者を対象とした制度であり、費用面の支援を受けながら対策を進めることも可能です。補助金は準備中とのことです。厚生労働省のHPにてご確認ください。

エイジフレンドリー補助金|厚生労働省

【保健師から】 ガイドラインには、職場のチェックリストも添付されています。まずは現状把握から実施してみませんか。チェックした結果を衛生委員会で話し合ってみることで、はじめの一歩とすることもできますよ。

Q. エイジフレンドリー補助金は大企業も対象になるのですか?

エイジフレンドリー補助金の対象は中小企業事業者に限定されています。常時使用する労働者数や資本金の額が中小企業の範囲内である事業者が申請可能であり、大企業は補助金の対象外です。ただし、大企業であってもガイドラインに沿った取り組み自体は同様に求められるため、自社の安全衛生管理の一環として対策を進めることが重要だと言えます。

Q. 産業医や保健師にはどのような役割が期待されていますか?

ガイドラインでは、健康診断結果や体力チェックの結果に基づく就業上の配慮について、産業医や専門医の意見を採り入れることが推奨されています。また保健師は、高年齢労働者一人ひとりの健康状態を把握したうえで、生活習慣改善のための保健指導や、運動プログラムの企画・実施、メンタルヘルスケアなどの面で中核的な役割を果たすことが期待されています。

健康面だけでなく、職場環境を産業医や保健師と共に見直してみることで、異なる意見を加えることができるでしょう。

これらの観点から、外部の産業保健サービスとの連携も含め、専門職を活用した体制づくりが効果的です。

参考:厚生労働省|エイジフレンドリーガイドライン

9.まとめ:エイジフレンドリーガイドラインから新指針へ――高年齢者がいきいきと働ける職場づくりを進めよう

2026年4月、エイジフレンドリーガイドラインは「高年齢者の労働災害防止のための指針」へと移行し、事業者の努力義務として法的に位置づけられました。

5つの柱の基本構造は引き継がれているため、旧ガイドラインに基づいてすでに取り組みを進めていた企業はその延長線上で対応を強化できます。まだ着手していない企業も、まずはできるところから着実に対策を進めていきましょう。

まずは自社の職場環境を見直し、産業医や保健師などの専門家と連携しながら、高年齢者がいきいきと働けるエイジフレンドリーな職場づくりを進めていきましょう。

産業医選任サポートのご案内はこちらをご覧ください。産業医選任サポートのご案内はこちらをご覧ください。

なお、より具体的な活用事例や対策の詳細を知りたい方は、以下の公的機関のサイトも参考になります。

参考:厚生労働省千葉労働局|エイジフレンドリーガイドライン~高年齢者の特性に配慮した職場環境を~ 参考:厚生労働省愛知労働局|~働く高齢者の特性に配慮したエイジフレンドリーな職場づくりを進めましょう~

ぜひご参照ください。

(文・監修/大内 麻友美)
さんぎょうい株式会社/ソリューション事業部 (看護師/保健師・キャリアコンサルタント・第一種衛生管理者・産業カウンセラー他)
看護師の後、働く人の健康管理に携わるため保健師として産業保健業務に従事する。
現職では、さまざまな規模の企業に対して、個別支援を中心としたかかわりから、広く集団に向けて健康情報の発信や、喫煙対策プログラム構築、保健師の導入支援など産業保健サービスに携わる。

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