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メンタルヘルス研修とは?企業の義務・4つのケアと効果的な進め方を臨床心理士が解説


厚生労働省の「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事や職業生活から強いストレス等を感じている労働者は68.3%にのぼることが明らかになっています。また、令和6年度の精神障害による労災請求件数は3,780件、支給決定件数は1,055件といずれも過去最多を更新し、支給決定件数は統計開始以来初めて1,000件を超えました。

このような背景から、労働者の心の健康を守るための取り組みが企業に求められている状況です。

具体的に有効な施策として「メンタルヘルス研修」が挙げられ、労働契約法第5条に基づく「安全配慮義務」の観点を踏まえて実施が不可欠となっています。

本記事では、企業によるメンタルヘルス研修の実施について、法的根拠を読み解くとともに、具体的な研修のテーマや社内への導入ステップなどについて解説します。自社にメンタルヘルス研修を導入する前のヒントとしていただければ幸いです。

参考:厚生労働省|令和6年労働安全衛生調査(実態調査)

参考:厚生労働省|令和6年度過労死等の労災補償状況

目次

  1. メンタルヘルス研修とは?定義と目的
  2. なぜ今メンタルヘルス研修が必要なのか?法的根拠と社会背景
  3. メンタルヘルス研修の基本|主要3テーマと運用側の研修
  4. メンタルヘルス研修の導入と運用方法
  5. 研修を効果的に実施するためのポイント
  6. メンタルヘルス研修を実施する際の注意点
  7. まとめ|メンタルヘルス研修は「義務」ではなく「投資」
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1.メンタルヘルス研修とは?定義と目的

メンタルヘルス研修とは、心の健康を保持・増進する大切さを労働者に理解してもらうために、社内において実施する研修のことです。

厚生労働省は企業に対し、労働者の心の健康保持増進のための措置を適切かつ有効に実施するための指針としてメンタルヘルスケアの原則的な実施方法を示しています。

研修の主な目的には、以下の3段階があります。

  1. メンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)
  2. 不調の早期発見・早期対応(二次予防)
  3. 職場復帰支援(三次予防)

参考:厚生労働省|職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜

参考:厚生労働省|職場のあんぜんサイト:メンタルヘルス対策

参考:厚生労働省|こころの耳 職場のメンタルヘルス研修ツール

2.なぜ今メンタルヘルス研修が必要なのか?法的根拠と社会背景

メンタルヘルス研修の実施は、それ自体が法律で直接義務付けられているわけではありません。

しかし、企業には労働契約法第5条に基づく安全配慮義務があり、この義務を果たすための具体的な実装手段として、研修の実施は不可欠です。管理職が部下のメンタルヘルス不調に適切に対応できなければ、事業者としての安全配慮義務を果たしているとは言い難いためです。つまり、研修は「法律で決まっているからやる」のではなく、「法的義務を実質的に果たすためにやる」ものだと言えます。

以下では、安全配慮義務の法的根拠、ストレスチェック制度との関連、そして精神障害の労災認定件数の推移という3つの観点から、研修に取り組むべき根拠について整理しながら見ていきましょう。

労働安全衛生法・労働契約法に基づく企業の義務

企業には、安全配慮義務があると労働契約法第5条で定められています。

労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)   使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

つまり、労働者が安全に働けるように日頃から配慮をする必要があります。

また、労働安全衛生法第69条(健康教育等)、第70条の2(健康保持増進のための指針)に基づき、事業者が労働者の心の健康の保持増進のための措置を講じる努力義務がある点にも理解が必要です。

労働安全衛生法   第69条(健康教育等)   事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない。 2 労働者は、前項の事業者が講ずる措置を利用して、その健康の保持増進に努めるものとする。   第70条の2(健康保持増進のための指針) 厚生労働大臣は、第六十九条第一項の事業者が講ずべき健康の保持増進のための措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。 2 厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導等を行うことができる。

これまでに日本国内の企業において、労働者が過労からメンタルのバランスを大きく崩し自死に至ったケースが存在します。その後、遺族と企業との間での裁判では「企業が安全配慮義務を怠っていた」ことを争点の一つとし、最終的には企業側が約1億6,800万円を支払うとの内容で和解に至りました。

この判例から、「企業には労働者の心の健康を守るための安全配慮義務がある」と解釈できるのです。

参考:厚生労働省|心の耳 うつ病による過労自殺について使用者の安全配慮義務違反を認めるリーディングケースとなった裁判事例(電通事件)

参考:e-Gov法令検索|労働契約法

参考:e-Gov法令検索|労働安全衛生法

ストレスチェック制度と研修のつながり―セルフケアの実践を支える

2015年12月施行のストレスチェック制度(労働安全衛生法第66条の10)は、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)を目的としたものです。従来は常時50人以上の事業場が実施義務の対象でしたが、2025年5月に改正労働安全衛生法が成立・公布され、50人未満の事業場を含む全事業場への義務拡大が決定しました。この施行時期は公布後3年以内(最長2028年5月)とされています。

ストレスチェック制度は「実施して終わり」ではなく、結果を踏まえた事後対応が求められます。とりわけ、検査結果を受け取った従業員が自身のストレス状態を正しく理解し、セルフケアに活かせるようにするためには、セルフケア研修との連動が重要です。また、高ストレス者への面接指導や職場環境改善といった事後対応を適切に行うためには、管理職がラインケア研修を通じて対応スキルを身につけておく必要もあるでしょう。

厚生労働省は2026年2月に小規模事業場向け実施マニュアルを公表しました。全事業場義務化に向けた準備として、ストレスチェック制度の導入と研修体制の整備を並行して進めておくことが望ましいと言えます。

参考:厚生労働省|ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等

参考:厚生労働省|労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案の概要

精神障害の労災認定件数の増加が示す課題

令和6年度における精神障害の労災請求件数は3,780件で、前年度比205件増となりました。また、支給決定件数は1,055件、前年度比172件増で統計開始以来初の1,000件超えであったことも明らかになっており、メンタルヘルス対策の遅れは企業経営上のリスクに直結すると言えます。

なお、支給決定件数の原因別では「パワーハラスメント」が224件で最多で、業種別では「医療・福祉」「製造業」が上位に挙がりました。

参考:厚生労働省|令和6年度過労死等の労災補償状況

3.メンタルヘルス研修の基本|主要3テーマと運用側の研修

メンタルヘルス研修のテーマは、厚生労働省の指針が示す「4つのケア」の考え方を土台としつつ、企業の実務ニーズに即して設計します。

厚生労働省の指針が示す「4つのケア」
セルフケアラインによるケア事業場内産業保健スタッフ等によるケア事業場外資源によるケア

現在、企業からのニーズが特に高い主要テーマは「セルフケア研修」「ラインケア研修」「ハラスメント研修」の3つです。

これらに加えて、研修を企画・推進する運用側(人事・総務・産業医・保健師等)を対象とした研修を組み合わせることで、メンタルヘルス対策の実効性が高まると期待できます。

参考:厚生労働省独立行政法人労働者健康安全機構|職場における心の健康づくり

参考:こころの耳|4つのケア:用語解説

セルフケア研修(全従業員対象)|自分のストレスに気づき、対処する力を身につける

セルフケアとは、労働者自身がストレスに気づき、予防・対処するスキルを身につけることです。4つのケアの中でも、すべての従業員が対象となる最も基本的な研修テーマだと言えます。

研修内容
ストレスのメカニズムの理解(ストレッサー→認知的評価→ストレス反応の流れ)自身のストレスサインの把握方法(不眠・食欲低下・イライラ・集中力低下・身体症状)認知行動療法的なセルフモニタリングの手法(思考の癖への気づき)リラクセーション法(呼吸法・漸進的筋弛緩法)  など

このような研修の教材として、厚生労働省のWebサイト「こころの耳」のeラーニング教材「15分でわかるセルフケア」およびPDF教材「セルフケアのためのヒント集」が利用可能です。

社内研修の導入パートに「こころの耳」のセルフチェックツールを組み込み、受講者が自身のストレス状態を「自分ごと」として把握してから学びに入る構成も効果的でしょう。

参考:こころの耳|職場のメンタルヘルス研修ツール

参考:こころの耳|eラーニングで学ぶ「15分でわかるセルフケア」

ラインケア研修(管理職・管理監督者対象)|部下の不調に気づき、適切に対応する

ラインケアとは、管理監督者が日常的に部下の変化に気づき、声かけ・相談対応・職場環境の改善を行うことです。管理職向け研修として、企業からのニーズが特に高いテーマだと言えます。

研修内容
「いつもと様子が違う」部下に気づくポイント傾聴の基本スキル不調者を産業医・専門機関につなぐフローハラスメントとの境界への理解

部下のメンタルヘルス不調に対して管理職が適切に対応できるかどうかは、企業の安全配慮義務の履行にも直結します。よって、全管理職が必ず受講すべき研修として位置づけることが望ましいと言えます。

参考:こころの耳|管理監督者向け研修マニュアル

ハラスメント研修(管理職・全従業員対象)―ハラスメント防止と健全な職場づくり

精神障害の労災認定において「パワーハラスメント」が原因別で最多(令和6年度:224件)を占めていることからもわかるように、ハラスメント対策はメンタルヘルス対策と表裏一体だと言えます。

2022年4月以降、労働施策総合推進法(第30条の2)に基づき、中小企業を含む全企業にパワーハラスメント防止措置が義務化されています。厚生労働省が定める指針では、防止措置の一つとして「研修の実施等による周知・啓発」が明記されており、ハラスメント研修はその中核的な取り組みに位置づけられます。

研修内容
パワーハラスメント・セクシュアルハラスメント・マタニティハラスメント等の定義と具体的事例の理解指導とハラスメントの境界線の整理ハラスメントを受けた場合・目撃した場合の対応フロー相談窓口の周知

上記に加え、管理職向けには「自身の言動の振り返り」を含めた内容にすることが効果的でしょう。

運用側の研修(人事・総務・産業医・保健師対象)―ケアを支える側のスキルを高める

前出のセルフケア・ラインケア・ハラスメント研修は、「ケアを受ける側・実践する側」を対象としたものです。一方、これらの研修を企画・推進し、組織全体のメンタルヘルス対策を運用する立場にある人事・総務担当者、産業医、保健師等も、専門的な知識とスキルのアップデートが必要です。

具体的な取り組み
「心の健康づくり計画」の策定・推進の方法ストレスチェックの集団分析結果の読み解き方と職場改善への活かし方休職者の職場復帰支援(リワーク)の進め方EAP(従業員支援プログラム)をはじめとする外部資源との連携体制の構築衛生委員会の運営方法   など

こうした運用側の研修は、社内で産業保健に精通したスタッフが揃っている企業では自社内で実施するケースも見られるものの、外部の研修機関やEAP機関が提供するプログラムを活用する企業も多いと言えます。

自社の業種・課題に合ったカリキュラムにカスタマイズできるかどうかが、外部機関を選定する際のポイントとなるでしょう。

4.メンタルヘルス研修の導入と運用方法

メンタルヘルス研修を「やるべきだ」と理解しても、実際には「何から手をつければよいかわからない」という声は多いものです。

ここでは、自社の課題把握から研修テーマの設計、実施形式の選択まで、導入・運用に必要な実務の流れについて解説します。

現状把握とニーズ分析|自社の課題を可視化する

ストレスチェックの集団分析結果、休職・離職データ、衛生委員会での議論をもとに、自社のメンタルヘルスの課題をまずは可視化してみましょう。

加えて、「心の健康づくり計画」の策定が厚生労働省の指針で求められているため、人事・総務部門が中心となって計画を明文化し、社内に周知することも推奨されます。

研修テーマと対象者の設計|3つの柱+運用側で設計する

メンタルヘルス研修を設計する際は、対象者ごとにテーマを分けることが重要です。基本の構成として、以下の3つの柱を据えましょう。

セルフケア研修(全従業員向け)ラインケア研修(管理職向け)ハラスメント研修(管理職・全従業員向け)

これらに加えて、人事・総務・産業医・保健師等を対象とした運用側の研修を組み合わせることで、メンタルヘルス対策の全体像に抜け漏れが生じにくくなると想定されます。

自社のストレスチェック集団分析結果や休職データから見えた課題に応じて、テーマの優先順位を決定しましょう。

たとえば、ハラスメントに関する相談件数が多い企業ではハラスメント研修を最優先とし、管理職のメンタルヘルスリテラシーに課題がある企業ではラインケア研修から着手するといった判断が有効です。

研修形式の選択|対面・オンライン・ハイブリッドの使い分け

次に、研修方式を選択しましょう。具体的には対面・オンライン・ハイブリッドが想定されます。

研修方式メリットデメリット
対面参加者が一堂に会することでワークショップ形式で実践スキルを高めやすい全員参加のハードルや、時間・場所の制約がある
オンライン離れた拠点にいるメンバーでも移動が不要で参加しやすいディスカッションやロールプレイなど、グループワークがやりにくい
eラーニング時間・場所の柔軟性が高い双方向性に欠ける
ハイブリッド受講者間のコミュニケーションを促進しつつ、参加者各自が対面・オンラインの可能な方式で柔軟に参加できるオンライン参加者が「ただ見ているだけ」といった消極的参加になりがち

なお、厚生労働省のWebサイト「こころの耳」では無料研修ツールが提供されており、メンタルヘルスケアについて短時間で学べるさまざまな動画もあります。このような教材も積極的に活用すると良いでしょう。

5.研修を効果的に実施するためのポイント

研修を導入しても、単発で終わったり形骸化したりしてしまっては効果は薄いでしょう。ここでは、研修の実効性を高めるために押さえておくべき3つのポイントについて紹介します。

継続的・計画的な実施|単発で終わらせない仕組みづくり

メンタルヘルス研修は単発のイベントではなく、年間計画に組み込んで継続的に実施することが重要です。厚生労働省の指針でも、4つのケアが「継続的かつ計画的に」行われるべきとされています。

年度初めに「心の健康づくり計画」を策定し、対象者別の研修スケジュールを衛生委員会で審議・決定する流れを作ると良いでしょう。新入社員研修・昇格時研修・全社員向けの定期的なフォローアップ研修など、企業トップによるコミットメントも継続的な実施の推進力となります。

メンタルヘルス研修を独立した単発のイベントとして企画するだけではなく、新入社員研修や昇格時研修、全社員向けの定期研修といった既存の研修体系の中にメンタルヘルスに関するコンテンツを組み込むことで、自然に継続的な実施が可能になるでしょう。

参考:厚生労働省|職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜

産業医・外部専門家との連携|研修の質を高める体制

研修の企画段階から産業医・保健師・臨床心理士等の専門家を巻き込むことで、研修内容の質と信頼性が向上します。

産業医には衛生委員会を通じた助言の役割があり、保健師はストレスチェック結果を踏まえた研修テーマの提案が可能です。

外部のEAP機関や研修会社を活用する場合には、自社の業種・課題に合ったカリキュラムをカスタマイズできるかが選定のポイントとなります。「テンプレート型」の画一的な研修ではなく、自社のストレスチェック結果や職場の実情を踏まえた内容にカスタマイズしてもらえるかどうかを選定時に確認しましょう。

なお、50人未満の事業場は地域産業保健センター(地さんぽ)が提供する産業医面談等の無料サービスを活用可能です。一方、50人以上の事業場は産業保健総合支援センター(さんぽセンター)のメンタルヘルスに関する相談・助言サービスが利用できます。

ただし、研修の提供については地域や機関によって対応状況に差があるため、研修の実施を検討する際は、管轄の地さんぽ・さんぽセンターに具体的なサービス内容を個別に確認するのがおすすめです。

参考:独立行政法人労働者健康安全機構|産業保健総合支援センター・地域産業保健センター

参考:こころの耳|職場のメンタルヘルス研修ツール

受講記録と効果測定|安全配慮義務の観点からも欠かせない実務

研修の受講記録(日時・対象者・内容・講師名)を体系的に管理することは、安全配慮義務の履行を客観的に示すエビデンスとなります。万が一、メンタルヘルス不調を巡る労務トラブルや訴訟が発生した際に、企業が適切な教育研修を実施してきた事実を証明できるかどうかは、法的リスクの軽減に直結するものです。

さらに、メンタルヘルス研修への取り組みを人事制度と連動させている企業も見られます。たとえば、管理職向けのラインケア研修やハラスメント研修の受講を昇格要件の一つに組み込むことで、管理職候補者に必須で求められる知識を身につけた上でマネジメントに臨む仕組みを構築するケースなどがその一例です。研修の受講を「やって終わり」にせず、人材育成の体系に組み込むことで、組織全体のメンタルヘルスリテラシーを底上げできるでしょう。

受講記録の管理方法としては、人事システムへの統合や、Excelでの簡易管理が現実的な選択肢だと考えられます。

効果測定については、短期指標と中長期指標を組み合わせて多角的に検証することが望ましいでしょう。短期指標としては、研修直後の理解度テストや受講者アンケート(受講動機・理解度・満足度・職場での活用意向)が挙げられます。また、中長期指標としては、ストレスチェック結果の経年変化、休職率の推移とその要因分析、管理職の声かけ頻度や1on1の実施状況の変化などを追跡すると良いでしょう。

測定結果を衛生委員会にフィードバックし、翌年度の研修内容を改善するサイクルを回すことが、「心の健康づくり計画」の実効性を高める鍵となるのです。

参考:厚生労働省|心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

6.メンタルヘルス研修を実施する際の注意点

メンタルヘルス研修は、扱うテーマの性質上、進め方を誤ると逆効果になるリスクもあります。

ここでは、プライバシーへの配慮、受講者の動機づけ、そして研修単体に頼らない総合的なアプローチという3つの観点から注意点を整理します。

個人情報とプライバシーへの配慮

研修中に個人のメンタルヘルス状態が開示されるリスクを防ぐため、グループワークの設計や発言ルールに配慮が必要です。

ストレスチェック結果の取り扱いは労働安全衛生法で厳格に定められており、本人の同意なく事業者が閲覧することは禁止されています(同法第66条の10第2項)。

「やらされ感」を生まない研修設計

形骸化した研修は、逆効果になり得ます。当事者意識を持たせるための設計の工夫として、以下の4つを紹介します。いずれも「座学で知識を詰め込む」だけの研修にしないための具体策です。

研修内容テーマ・教材目的
グループディスカッションテーマ例: 部下から「眠れない」と相談された場合の対応を考える    職場で実際に起こりうるケーススタディについて議論し、自分ごと化を図る
ロールプレイテーマ例:「傾聴」管理職役・部下役に分かれて受け答えの練習をする
セルフチェック実施教材例: 厚生労働省「こころの耳」の簡易ストレスチェック等を用いる研修冒頭で自分自身のストレス状態を把握した上で学びに入ることで、自分ごととして捉えられるようにする
経営トップによるメッセージ例: メンタルヘルス対策を経営課題として位置づけている旨の宣言組織としてのコミットメントを理解する

研修だけでは不十分|職場環境改善との両輪で取り組む

研修はメンタルヘルス対策の一部であり、長時間労働の是正、ハラスメント防止、業務量の適正化といった職場環境改善と組み合わせて初めて効果を発揮する点を理解することも重要です。

職場環境改善のポイントとして、米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が示す以下7点も参考になるでしょう。

過大あるいは過小な仕事量を避け、仕事量に合わせた作業ペースの調整ができること 労働者の社会生活に合わせて勤務形態の配慮がなされていること 仕事の役割や責任が明確であること 仕事の将来や昇進・昇級の機会が明確であること 職場でよい人間関係が保たれていること 仕事の意義が明確にされ、やる気を刺激し、労働者の技術を活用するようにデザインされること 職場での意思決定への参加の機会があること

これらも参考にしながら、日々の業務への取り組みを通して職場環境改善も意識していくことが大切です。

参考:厚生労働省|職場のあんぜんサイト:メンタルヘルス対策

参考:厚生労働省|こころの耳 職場のメンタルヘルス研修ツール

7.まとめ|メンタルヘルス研修は「義務」ではなく「投資」

本記事では、企業が実施するメンタルヘルス研修について、基本的な定義や、取り組む意義、法令との関連性、具体的に想定される内容や手法などについて解説しました。

企業のメンタルヘルス研修は、決して法令遵守のためだけではありません。従業員の生産性向上・離職防止・企業ブランド向上につながる「将来への投資」だという視点を持つことが重要です。

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監修:さんぎょうい株式会社 メディア編集チーム
当記事は、「さんぎょうい株式会社・メディア編集チーム」が監修しています。
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