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ストレスチェック集団分析を、制度対応で終わらせないために ―「手が回らない」中小企業でも始められる、職場改善への活かし方―


目次

  1. 集団分析、「実施して終わり」になっていませんか?
  2. 「数値が低い部署=問題がある部署」ではない
  3. 「手が回らない」企業ほど、分析対象を絞る
  4. 集団分析は「メンタルヘルス不調の対策」だけではない
  5. 完璧な改善より、「一つ活かす」ことから
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1.集団分析、「実施して終わり」になっていませんか?

ストレスチェックに関して人事・総務のご担当者からお悩みをうかがうとき、特によくお聞きするのが、「集団分析のレポートは受け取ったものの、忙しくて手をつけられていない」「目を通す時間がとれない」というお声です。中小企業では、人事・総務の担当者が採用、労務管理、制度運用などは幅広い業務を担っていることもすくなくありません。その中で、ストレスチェックの実施や集団分析の活用への取り組みはなかなか難しいと感じられることもあるでしょう。

実は、ストレスチェックは集団分析の結果を職場環境改善に生かしてこそ、その大きな価値を発揮します。集団分析は、“問題のある部署を探すための資料”でも“管理職の成績表”でもありません。職場の負担を減らし、働きやすさを高めるためのヒントが詰まったデータです。

このコラムでは、中小企業でも取り組みやすい、ストレスチェックを制度対応で終わらせない活用方法をお伝えします。

2.「数値が低い部署=問題がある部署」ではない

ストレスチェックには、皆さんご存じの通り「従業員一人ひとりが自身のストレス状態に気づき、セルフケアにつなげる」という重要な目的があります。一方で、集団分析のデータというのは、組織全体の傾向を把握することに強みがあるのです。たとえば、人材定着や離職に関して課題を感じている場合、部署、性別、年代といった集団別に傾向を確認することは、どのような職場環境や働き方に課題があるのかを考える手掛かりとして非常に有益です。また、個人の健康情報には立ち入ることなく、集団単位でそれぞれの職場の特徴や課題を把握することができる点も、集団分析の大きな利点です。

集団分析を活用するときに一番大事なのは、「数字が低い(悪い)部署=問題がある部署」ではないという視点です。

たとえば、仕事量が多いという結果であったとしても、上司や同僚の支援があり、相談しやすい職場であれば、すぐに不調者が発生するとは限りません。反対に、残業時間からは見えない部署内の「役割の曖昧さ」や「自分のペースで仕事を進められないこと(仕事のコントロール)」がストレスの要因になることもあります。

「高ストレス者率が高い」「仕事量が多い」という数値だけでその部署に改善を求める対応には、注意が必要です。そもそも負荷がかかっているかもしれない部署に対して、さらなる負荷がかかる可能性があるためです。「ストレスチェックの結果が悪いと自分たちがさらに忙しくなるから、問題がない結果になるようにしよう」ということになりかねません。数字は結論ではなく、現場で何が起こっているのかを把握するための入り口です。数字からすぐに正解を出そうとせず、まず背景を理解することから始めましょう。

 3.「手が回らない」企業ほど、分析対象を絞る

初めて集団分析の活用に取り組むという場合は、すべての結果を読み込んだり、大がかりな施策を立てたりする必要はありません。まず次のような3つのステップで十分です。

ステップ1:「気になる1~2項目」に絞る

出てきた集団分析のレポートには多くの項目が並びます。すべてを読み込もうとすると、それだけで負担になってしまいます。まずは、「前回よりも悪化した項目」「会社全体として取り組みたい項目」「部署間の差が大きい項目」などから、気になる項目に絞って注目してみましょう

ステップ2:責任者(管理職など)と背景を確認する

ストレスチェックの結果はあくまでデータです。管理職や現場の責任者と結果を共有し、実際の状況とデータをすり合わせることで、より実情に合った対策を考えることができます。数字の背景には、たとえば人員配置の変化、繁忙期の長期化など、さまざまな事情があることがあります。データで決めつけず、状況を確認してみましょう。

ステップ3:3か月でできる小さな改善を一つ決める

大がかりな制度改革ではなく、小さな行動を継続することから始めましょう。部署の中で負担がかかっている層がいないか、情報共有がうまくいっているかといったステップ2でわかったことから、部署内で無理なく続けられる取り組めることを決めてみましょう。定例会で業務の偏りを確認する、上司と部下が短時間でも相談できる機会を設ける、といった取り組みです。取り組みの効果は、次回のストレスチェックや日常の現場の声で確認できます。こうした小さな循環が、職場環境改善の第一歩となります。

4.集団分析は「メンタルヘルス不調の対策」だけではない

休復職の対応や不調者への個別支援はもちろん重要です。ですが、不調者の発生や離職が繰り返されている場合、それは個人の問題だけではなく、業務設計やコミュニケーションの仕組みを見直す機会なのかもしれません。

集団分析はいわば“組織全体の健康診断”です。職場ごとの強みや課題を把握するヒントになり、人材定着のための手立てや管理職支援のツールにもなりえます。

5. 完璧な改善より、「一つ活かす」ことから

集団分析の活用では、最初から完璧な改善計画を作る必要はありません。

まずは、

・気になる項目を選ぶ

・現場と状況をすり合わせる

・小さな改善を一つ試す

この三つから始めてみましょう。

ストレスチェックは、いまや制度対応で終わらせるものではなく、安心して働き続ける職場を作るためのヒントです。集団分析を、組織の未来への投資のヒントとしてぜひ活用していきましょう。

当社では、集団分析を活用したコンサルテーション、集団分析の読み解き方、管理職向けフィードバック、職場環境改善施策の設計などの支援をさせていただいております。臨床心理士、保健師、看護師等が、企業規模や職場状況に応じて具体的な提案をいたします。ストレスチェックの集団分析の活用に課題を感じていらっしゃるご担当者様がいらっしゃいましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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文/戸田 はるか(臨床心理士・公認心理師)
さんぎょうい株式会社/メンタルヘルス・ソリューション事業室
大学院修了後、医療・教育・行政分野で心の専門職として従事。実務経験は10年以上。
現在は、従業員への心理面接を中心に、企業向けにメンタルヘルス支援を提供。
心理的支援に加え、ストレスマネジメントやセルフケアの観点から身体面のケアにも深い関心を持つ。
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