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2026年施行の改正労働安全衛生法|施行スケジュールと企業の対応ポイント


2025年5月14日に「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」(令和7年法律第33号)が公布されました。この改正法は2026年1月1日から段階的に施行が始まり、注目度の高い改正項目の多くは2026年4月1日に施行されました(本記事は2026年6月時点の情報に基づいて執筆しています)。今後も2026年7月・10月、2027年、2028年と段階的な施行が予定されており、施行日ごとに対応の優先順位を整理する必要があります。

今回の改正の核心は、安全衛生法が「守る対象」と「責任の取り方」を組み替えた点にあります。具体的には、保護対象を「労働者」から「作業従事者(個人事業者等を含む)」に拡大したこと、メンタルヘルス対策を50人未満の事業場にも義務化したこと、化学物質の自律的管理に実効性を持たせる(SDS罰則の新設等)という3つの転換を含んでいる点がポイントです。

本記事では、改正の5つの柱を「何が変わるか→現場でどこがつまずくか→最初に何をすべきか」という流れで整理し、人事労務担当者がすぐに対策に向けて動き出せるようにお伝えします。

なお、労働安全衛生法の基本的な概要やこれまでの主要な改正の歴史については、以下の記事で体系的にまとめているため、あわせて参照ください。

参考:厚生労働省|労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)

目次

  1. まずは30秒で自己診断【自社に関係する改正】を見分ける
  2. 施行スケジュールを「いつ・何が動くか」で先に押さえる
  3. 【改正の柱①】個人事業者等への安全衛生対策:責任の境界線が変わる
  4. 【改正の柱②】ストレスチェック全事業場義務化:制度より運用設計が要
  5. 【改正の柱③】化学物質管理の履行確保強化:「自律的管理」=説明責任
  6. 【改正の柱④】機械等による労働災害防止:設備の話を「教育・体制」に接続
  7. 【改正の柱⑤】高年齢労働者の労災防止(努力義務):配慮ではなく作業設計
  8. 治療と仕事の両立支援(努力義務):制度より動線設計
  9. 【改正対応チェックリスト】施行日別にやるべきことを整理
  10. 改正労働安全衛生法に関するよくある質問(FAQ)
  11. まとめ:改正対応は要約ではなく仕組み化で差がつく
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1.まずは30秒で自己診断【自社に関係する改正】を見分ける

今回の改正は5つの柱からなりますが、そのすべてが自社に同じ重みで関係するわけではないと言えます。次のチェックリストで、自社が優先すべき柱を特定しましょう。

自社の状況優先すべき改正の柱
個人事業者(フリーランス・一人親方等)が現場に入る柱①(個人事業者等への安全衛生対策)から着手
50人未満の拠点がある柱②(ストレスチェック全事業場義務化)の運用設計を優先
化学品がある(オフィスの洗浄剤・塗料等も含む)柱③(SDS台帳・測定体制の整備)
機械・資格・講習がある(フォークリフト等)柱④(台帳管理×委員会接続)
高年齢比率が高い(55歳以上が増えている)柱⑤(作業設計の見直し)

なお、柱②(ストレスチェック)と柱⑤(高年齢者)は全企業に関係する改正項目です。

自社の業種・業態に応じて柱①③④が自社にあてはまるかどうかを確認したうえで、全体のスケジュールを組み立てましょう。

2.施行スケジュールを「いつ・何が動くか」で先に押さえる

改正法は一度にすべてが施行されるわけではなく、項目によって施行日が異なります。以下に主な施行スケジュールを時系列で整理しました。

施行日主な改正項目
2025年5月14日 (公布日)注文者等への配慮規定(安衛法第3条第3項)の適用範囲明確化(建設工事以外の注文者にも適用)
2026年1月1日・特定自主検査・技能講習に関する不正防止策の強化 ・石綿事前調査の工作物への拡大 ・がん原性物質記録の提出義務
2026年4月1日・個人事業者等への保護拡大(元方事業者の措置義務対象拡大等) ・高年齢労働者の労災防止措置の努力義務化 ・営業秘密成分の代替化学品名等による通知制度(事前承認・代替名登録手続きが必要)の創設 ・治療と仕事の両立支援の努力義務化(関連法)
2026年7月1日新規化学物質の届出等に関する電子申請の義務化
2026年10月1日個人ばく露測定を作業環境測定として位置づけ、指定作業場における作業環境測定士等による実施を義務化(安衛法第65条の3新設)
2027年1月1日個人事業者等の業務上災害報告制度の施行
2027年4月1日・個人事業者等自身への義務付け(構造規格を備えない機械等の使用禁止、定期自主検査の実施、安全衛生教育の受講等) ・作業場所管理事業者への連絡調整措置の義務付け
公布後3年以内 (最長2028年5月頃)2028年(令和10年)4月1日: ストレスチェックの全事業場(50人未満を含む)への義務化 (厚生労働省にて施行日確定済み)
公布後5年以内 (最長2030年5月頃)SDS通知義務違反に対する罰則の施行

※上記は2025年5月公布時点の情報に基づきます。一部の政省令(個人事業者等の業務上災害報告制度に関する労働安全衛生規則改正等)は本記事執筆時点で公布前または公布直後のため、最新情報は厚生労働省の公表資料を必ず確認してください。

参考:厚生労働省|労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて

3.【改正の柱①】個人事業者等への安全衛生対策:責任の境界線が変わる

今回の改正の最大の特徴は、個人事業者(フリーランス・一人親方等)を労働安全衛生法の保護対象に位置づけた点です。建設業・製造業を中心に個人事業者を受け入れている企業は、最優先で確認すべき改正項目となります。

保護対象の拡大=元方・注文者の守備範囲が広がる

従来の労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守ることを大きな目的としており、雇用関係にない個人事業者は保護対象に含まれていませんでした。

しかし、フリーランスや業務委託で働く個人事業者など多様な働き方が広がるなかで、労働者と同じ現場で同様の危険にさらされながらも法的な保護を受けられない個人事業者の存在が問題視されるようになったのです。

特に2021年5月の石綿訴訟に関する最高裁判決では、安衛法第22条の規定について「労働者と同じ場所で働く労働者以外の者も保護する趣旨である」との判断が示されました。この判決をきっかけに、個人事業者への保護拡大に向けた法整備が本格化した経緯があります。

今回の改正の核心は、混在作業から生じる労働災害を防止するため、元方事業者・注文者の措置義務の対象が「労働者」から「個人事業者等を含む作業従事者」に拡大された点です。あわせて、個人事業者等自身にも一定の義務が課され、業務上災害の報告制度も新設されます。施行は段階的に行われるため、自社への影響を把握するうえで以下の4つの施行タイミングを押さえておきましょう。

施行日項目概要
2026年4月1日施行混在作業場所における元方事業者等への措置義務対象の拡大(特定)元方事業者が混在作業場所において、自社及び関係請負人等の労働者の災害防止のために講ずべき指導・連絡調整等の措置について、その対象が「労働者」から「個人事業者等を含む作業従事者」に拡大される(安衛法第30条等)。   あわせて、政令で定められた機械等または建築物を他の事業者に貸与する者が災害防止のために講ずべき措置についても、個人事業者等に貸与する場合に同様の措置を講ずることが義務付けられる。
2027年1月1日施行個人事業者等の業務上災害報告制度の創設個人事業者等の業務上災害が発生した場合に、その発生状況等を厚生労働省へ報告する制度が新設される   報告主体や報告事項などの詳細は、関係する省令・通達により今後示される予定である。
2027年4月1日施行個人事業者等自身への義務付け個人事業者等自身に対して、労働者と同一の場所で作業を行う場合に、(1)構造規格や安全装置を具備しない機械等の使用禁止、(2)特定の機械等に対する定期自主検査の実施、(3)危険・有害な業務に就く際の安全衛生教育の受講などが義務付けられる。
2027年4月1日施行作業場所管理事業者への連絡調整措置の義務付け作業場所管理事業者に対して、その管理する場所において、自社または請負人の作業従事者のいずれかが危険・有害な業務を行う場合に、災害防止の観点から作業間の連絡調整等の必要な措置を講じることが義務付けられる。

なお、安衛法第3条第3項の注文者等への配慮規定が建設工事以外の注文者にも適用されることは、公布日(2025年5月14日)に明確化されています。

この配慮規定は、民法・労働契約法上の「安全配慮義務」とは別の概念であり、注文時の施工方法・工期等への配慮を求める安衛法上の規定である点に注意が必要です。

参考:厚生労働省|個人事業者等の安全衛生対策について

現場で最初につまずく3つのズレ

法改正の内容を理解しても、実際の現場ではわかっているのに回らない状態が起きやすいと想定されます。個人事業者の保護拡大に関して、特につまずきやすいポイントを3つ挙げながら解説します。

つまずきやすいポイント概要
名簿が最新化されない元方事業者が管理する下請け名簿に個人事業者が入っていない、または入退場の管理が労働者と別ルートになっている。   結果として、安全衛生教育や保護具の支給対象から漏れる。
周知が「労働者」で止まる朝礼での安全指示、作業手順書の配布、KY(危険予知)活動への参加が雇用関係のある労働者にしか行われていない。   一人親方が同じ現場にいても、連絡網から外れている。
契約と運用がつながらない業務委託契約書に安全衛生条項を追加しても、現場でそれが運用されない。「契約書は管理部門、現場は現場」の分断が起きやすい

放置すると何が起きるのか|法令違反以前に現場が止まる

3つのズレを放置した場合、企業にはどのようなリスクが生じるのでしょうか。法令違反の前に、まず現場レベルで影響が出ると想定されます。

例えば、個人事業者が被災した場合、元方事業者に対して措置義務の不履行が問われることとなります。

加えて、事故時に生じる初動の遅れ(誰が搬送するのか、誰が報告するのか)、発注者への説明責任、是正勧告後の工事中断リスクなど、法令違反以前に、現場が止まるリスクが顕在化すると考えられるでしょう。

担当者が最初にやるべき3ステップ(1か月でここまで)

対応が必要なことはわかったものの、何から手をつけるべきか悩んでしまう企業もあるでしょう。そこで、まずは1か月以内に着手できる3つのステップを紹介します。

ステップ項目概要
1混在現場の棚卸し自社が元方となる現場を一覧化し、個人事業者の入場有無を確認する
2名簿・連絡網の再構築個人事業者を含めた入退場管理名簿と緊急連絡網を整備する
3周知対象の切替+証跡の確保朝礼・KY活動・安全衛生教育の対象に個人事業者を含め、参加記録を残す。あわせて、請負契約書・業務委託契約書に安全衛生条項を盛り込む

4.【改正の柱②】ストレスチェック全事業場義務化:制度より運用設計が要

企業規模を問わず影響が及ぶのが、ストレスチェックの全事業場への義務化です。特に50人未満の事業場を持つ企業にとっては、実施体制のゼロからの構築が求められる重要な改正項目となります。

結論:何が変わるのか|50人未満が義務化、施行日は政令で確定

ストレスチェック制度の最大の変更点は、対象事業場の範囲が大きく広がることです。

これまでは常時50人以上の労働者を使用する事業場に義務付けられていたストレスチェックが、50人未満の事業場にも拡大されることになります。対象となるのはストレスチェックの実施そのものに加え、高ストレス者への医師による面接指導の実施も含まれます。

改正法では、施行日について「公布後3年以内に政令で定める日」と定められていましたが、その後の労働政策審議会安全衛生分科会の議論を経て、厚生労働省は2028年(令和10年)4月1日施行とすることを公表しました。

つまり、残された準備期間は実質的に1年半程度であり、特に小規模事業場では実施体制の構築に時間を要するため、早期の準備着手が望ましいと言えます。

小規模事業場で詰まる3つのズレ

制度を導入しようとした小規模事業場が、実際にどこで行き詰まってしまうのでしょうか。よくある3つのパターンを見てみましょう。

項目概要
実施者(医師・保健師等)が確保できない50人未満の事業場には産業医の選任義務がなく、ストレスチェックの実施者となる医師・保健師等をどう確保するかが最初のハードルとなる
個人情報の取り扱いが怖くて止まる少人数の事業場では「誰が高ストレスかすぐわかってしまう」という懸念から、導入そのものに二の足を踏むケースが多い
高ストレス者への対応が回らないストレスチェックは実施して終わりではなく、高ストレス者が面接指導を申し出た場合の受け皿(医師の確保、就業上の措置の判断プロセス)まで設計しておく必要がある

担当者が最初にやるべき最短ルート

施行日が確定してからの対策では、準備が間に合わない可能性があります。そこで、今のうちに進められる最短ルートを示します。

ステップ項目概要
150人未満拠点の棚卸し自社で50人未満の事業場がいくつあるかを把握する
2外部委託モデルの選択実施者の確保方法を検討する(地域産業保健センター(地さんぽ)の活用、外部の産業保健サービス事業者との契約など)
3動線の図示と規程化「実施→集計→高ストレス者本人への通知→面接指導申出→医師面接→就業上の措置」の動線を1枚の図にし、個人情報の取り扱い方法を含めて社内規程として整備する

5.【改正の柱③】化学物質管理の履行確保強化:「自律的管理」=説明責任

化学物質を取り扱う事業者にとって影響の大きい改正が、化学物質管理の履行確保強化です。2022年に始まった自律的管理への転換を、罰則や測定精度の担保によってさらに実効性のあるものにする内容となっています。

何が変わる(結論):SDSと測定が「集めて終わり」では通らない

化学物質管理に関する今回の改正は、2022年に始まった「自律的管理」の実効性を高める位置づけです。主な変更点について確認しましょう。

施行日項目概要
2026年4月1日施行営業秘密成分の代替化学品名等による通知制度の創設SDSにおいて、営業秘密に該当する成分について代替化学品名での通知が認められるようになる
2026年7月1日施行新規化学物質の届出等に関する電子申請の義務化届出等の手続きについて、電子申請が原則義務化される
2026年10月1日施行個人ばく露測定の精度担保改正安衛法第65条の3が新設され、個人ばく露測定が「作業環境測定」の一類型として明確に位置づけられる。 これに伴い作業環境測定法施行令が改正され、第三管理区分作業場や金属アーク溶接等作業を継続的に行う屋内作業場など、政省令で定める作業場が「指定作業場」に追加される。 指定作業場における個人ばく露測定は、所定の講習(個人ばく露測定講習)を修了した作業環境測定士等による実施が義務化される。 なお、リスクアセスメントや濃度基準値の確認のための個人ばく露測定についても、当面は化学物質リスクアセスメント指針および技術上の指針により、資格者による実施が行政指導として求められる
施行日は公布後5年以内に政令で定める日、最長2030年5月頃SDS通知義務違反に対する罰則の新設SDS記載事項の変更時の再通知も義務化される

 

現場で起きがちな3つのズレ

化学物質管理は「対象外だと思っていた」という認識のズレが最も危険です。ありがちな落とし穴を3つ挙げます。

項目概要
「うちは関係ない」という思い込み一般的なオフィスワークのみの事業場であっても、洗浄剤や塗料など一定の化学物質を使用している場合はSDS管理やリスクアセスメントの対象となりうる
SDS更新・再通知が回らないSDSは取得して終わりではなく、記載事項が変更された場合の再通知義務が今回の改正で明確化された。 しかし、SDS台帳の更新トリガーが設計されていないと、古い情報のまま放置されるリスクがある
測定が改善につながらない個人ばく露測定を実施しても、結果をリスクアセスメントに反映し、作業環境や保護具の見直しにつなげる改善サイクルが回っていないケースがある

担当者が最初にやるべき台帳化

化学物質管理の第一歩は、自社で何を使っているかを正確に把握することです。以下の順に台帳化を進めることが推奨されます。

手順項目概要
1化学品の棚卸し自社で使用しているすべての化学品をリストアップし、SDS交付義務の対象か否かを確認する
2SDS台帳の整備(更新トリガーの設計)化学品ごとにSDSの取得日・更新日を管理し、メーカーからの変更通知を確実に受け取る仕組みをつくる
3測定体制の確認 (対象・外注要件・改善サイクル)第三管理区分作業場・金属アーク溶接等作業場 など、個人ばく露測定が義務化される対象作業を特定する。   社内で測定を実施する場合は、 作業環境測定士に対する個人ばく露測定講習デザイン等講習・サンプリング講習の受講計画を立てる。   外部委託する場合は、有資格者を擁する作業環境測定機関の選定を進める

6.【改正の柱④】機械等による労働災害防止:設備の話を「教育・体制」に接続

ボイラー・クレーン・フォークリフト等の特定機械に関連する検査・講習制度が見直されます。設備保全部門が中心となる領域ですが、資格管理や安全衛生委員会との接続は人事総務担当者の守備範囲でもあると言えます。

何が変わる(結論):検査・講習の信頼性、不正防止が強化

機械関連の改正は、検査・講習制度の信頼性を高めることが主眼となります。設備保全部門が中心となる領域ですが、人事総務担当者も全体像を把握しておきましょう。

項目概要
技能講習に関する不正防止策の強化(2026年1月1日施行)フォークリフト運転等の技能講習について、不正な修了証の交付が禁止される。違反時には修了証の回収命令や資格取得不可期間の延長等の措置が講じられる
特定機械等の検査における民間登録機関の活用拡大 (2026年4月1日施行)ボイラー・クレーン等の設計審査・製造時等検査で民間登録機関が実施できる範囲が拡大される。登録機関の不正への対処・欠格要件も強化
特定自主検査の基準遵守義務化フォークリフト等の特定自主検査について、登録検査業者が検査基準に従って検査を行うことが義務化される

現場で起きがちな3つのズレ

制度が変わっても、現場の管理体制が追いついていなければ意味がありません。ここでは、機械・資格管理でよく見られるズレを3つ挙げます。

項目概要
修了証管理が属人化している誰がどの資格を持っているかの管理が個人やベテラン任せになっており、有効期限切れや更新漏れに気づけない
点検記録が説明できない特定自主検査を実施しているが、記録のフォーマットがバラバラで、監督署の調査時に「何をどう点検したか」を第三者に説明できない
安全衛生委員会とつながらない設備の点検・資格管理が設備保全部門に閉じており、安全衛生委員会の議題に上がらない。法改正の動向が現場に伝わらず、教育・訓練計画にも反映されない

担当者が最初にやるべき「台帳×委員会接続」

機械・資格管理の改善は、台帳の整備と安全衛生委員会への接続がカギとなります。以下の3ステップで着手しましょう。

ステップ項目概要
1資格・修了証台帳の整備全従業員の保有資格と有効期限を一覧化し、更新時期を可視化する
2点検記録フォーマットの統一特定自主検査の記録を統一フォーマットに整え、検査日・検査者・結果・是正措置を記録する
3安全衛生委員会での定例化設備点検の状況、資格管理の進捗、改正法の対応状況を委員会の定例議題に組み込む

7.【改正の柱⑤】高年齢労働者の労災防止(努力義務):配慮ではなく作業設計

高年齢労働者の労働災害が増加するなか、事業者に対して労災防止措置を講じることが努力義務として法定化されました。55歳以上の労働者が増えている事業場においては、「配慮しています」では通用しない時代に入ったと言えます。

何が変わる(結論):努力義務でも「やっていない理由」が問われる

高年齢労働者の労災防止は、努力義務とはいえ「何もしていない」では通らない時代に入ることを意味します。

高年齢労働者の労働災害防止に必要な措置の実施が、事業者の努力義務として法的に位置づけられました(2026年4月1日施行)。具体的な対策の内容は、国が公表する指針に基づくこととされています。

なお、従来のエイジフレンドリーガイドラインは令和8年(2026年)3月31日をもって廃止され、令和8年4月1日から「高年齢者の労働災害防止のための指針」が適用されています。

参考:厚生労働省|高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)

現場で起きがちな3つのズレ

高年齢者対策は「配慮している」と言いつつも、実態が伴っていないケースが多く見られます。ここで、ありがちなズレを3つ確認してみましょう。

項目概要
一般論の点検で止まる「高齢者に配慮しています」と言いながら、具体的にどの作業のどのリスクに対して何をしたかが説明できない。リスクアセスメントが年齢要因を反映していない
配置・作業ペースが設計されない「ベテランだから大丈夫」という経験値への依存が、転倒や腰痛リスクの過小評価につながっている
他施策(暑熱対策等)と統合できない高年齢者の熱中症リスクは特に高いが、高年齢者対策と熱中症対策が別々に検討され、現場で統合されていない

担当者が最初にやるべき「ホットスポット潰し」

高年齢者対策は、すべての作業を一律に見直すのではなく、リスクが集中する箇所から手をつけるのが効率的です。

ステップ項目概要
1災害・ヒヤリハットの地図化過去の労災・ヒヤリハット事例を作業場所別・年齢別に整理し、高年齢者のリスクが集中する「ホットスポット」を特定する
2設備・動線・補助具・照度等の優先改善ホットスポットを中心に、段差の解消、手すりの設置、滑りにくい床材、照度の改善、重量物取扱いの軽減などを優先順位つきで実施する
3安全衛生委員会での定例化高年齢者対策の進捗を委員会の定例議題に組み込み、PDCAを回す。エイジフレンドリー補助金の活用も選択肢として検討する

8.治療と仕事の両立支援(努力義務):制度より動線設計

改正労働安全衛生法と同時期に公布された改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)により、治療と仕事の両立支援が事業者の努力義務となりました(2026年4月1日施行)。2026年2月10日には「治療と就業の両立支援指針」が公表されています。

最低限の動線として、以下の流れを設計しておくことが重要です。

相談窓口の設置 主治医からの意見収集(勤務情報提供書・両立支援カード等の活用) 産業医等の意見聴取 就業上の措置・両立支援プランの策定 情報管理(本人同意に基づく共有範囲の設定)

9.【改正対応チェックリスト】施行日別にやるべきことを整理

ここまで解説した改正内容を踏まえ、企業の人事労務担当者が自社の対応状況を確認するためのチェックリストを示します。

2026年1月施行分(対応済みか確認)

特定自主検査・技能講習に関する社内運用に不正の余地がないか点検した石綿事前調査について、工作物を含む新基準に対応した(該当する場合)がん原性物質に関する記録の保管状況を確認した(該当する場合)

2026年4月施行分

個人事業者を受け入れている場合、混在作業場所における安全衛生管理体制を見直した請負契約書・業務委託契約書に安全衛生条項を追加した高年齢労働者の労災防止に関するリスクアセスメントを実施し、対策を検討した化学物質のラベル表示・SDS交付について対象物質の追加に対応した営業秘密成分の代替通知制度の活用可否を検討した(該当する場合)治療と仕事の両立支援に関する社内体制構築を検討した

2026年7月〜10月施行分

新規化学物質の届出等について電子申請への移行準備を進めた(2026年7月)個人ばく露測定の有資格者の確保・育成を計画した(2026年10月)

10.改正労働安全衛生法に関するよくある質問(FAQ)

ここまでの解説を踏まえ、企業の人事労務担当者からよく寄せられる質問をまとめました。

Q.個人事業者を受け入れていない企業には、今回の改正は関係ないのですか?

A.ストレスチェックの全事業場義務化、高年齢労働者の労災防止措置の努力義務化、治療と仕事の両立支援の努力義務化などは、個人事業者の受け入れの有無にかかわらず、すべての事業者に影響する改正項目です。

Q. 50人未満の事業場でストレスチェックを実施後の高ストレス面談の費用負担軽減方法はありますか?

A.具体的な支援策の詳細は今後明らかになる見通しですが、国としても地域産業保健センター(地さんぽ)の体制拡充やマニュアルの作成などの支援を進めるとしています。すでに一部の自治体や業界団体が助成制度を設けている場合もあるため、情報を収集しておくことが推奨されます。

Q. 化学物質を取り扱わない企業は今回の化学物質関連の改正に対応不要でしょうか?

A.一般的なオフィスワークのみの事業場であっても、洗浄剤や塗料など一定の化学物質を使用している場合はSDS管理やリスクアセスメントの対象となり得ます。自社で取り扱う化学物質の有無を改めて確認することが望ましいと言えます。

Q. 改正への対応を外部に相談するにはどうすればよいですか?

A.産業医や保健師、安全衛生コンサルタント、社会保険労務士などの専門家に相談することが有効です。特に小規模事業場では、外部の産業保健サービスを活用することで、ストレスチェックの実施体制構築から法改正対応まで効率的に進められます。

11.まとめ:改正対応は要約ではなく仕組み化で差がつく

2025年5月に公布された改正労働安全衛生法は2026年1月から段階的に施行が始まり、注目度の高い改正項目の多くは2026年4月1日に施行を迎えました。

一方で、対応すべき改正は以下のように今後も続いていきます。

  • 個人ばく露測定の精度担保(2026年10月)
  • 個人事業者等の業務上災害報告制度(2027年1月)
  • 個人事業者等自身への義務付け(2027年4月)
  • ストレスチェックの全事業場義務化(2028年4月)
  • SDS通知義務違反への罰則(最長2030年5月頃)など

ここまで繰り返し説明してきた通り、法改正対応は厚労省資料の「要約」ではなく、名簿・連絡・周知の切替、個人情報管理の設計、SDS台帳の整備、資格台帳の統一、作業設計の見直しなど、運用の「仕組み化」ができるかどうかで差がつくと言えます。

改正項目ごとに施行日が異なるため、本記事でご紹介した自己診断で自社の優先順位を特定し、チェックリストで対応状況を定期的に点検しながら、計画的に進めていきましょう。

こうした法改正対応を自社だけで進めることに不安がある場合は、産業医や保健師などの専門家の知見を活用することが有効です。

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監修:さんぎょうい株式会社 メディア編集チーム
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