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健康経営戦略マップとは?基本構成と2025年3月改訂版フォーマットを解説


「健康経営に取り組んでいるが、施策が点在していて全体像が見えない」
「施策はやっているが、経営層に成果を説明できない」
「何のためにやっているかが現場に伝わっていない」

そのような課題を抱える担当者に有効なのが、健康経営戦略マップです。

経済産業省が推奨するこのフレームワークは、経営課題と健康投資を結びつけ、PDCAを回すための設計図として機能します。

2025年3月には経済産業省が「健康経営ガイドブック」を約10年ぶりに改訂し、戦略マップのフォーマットも更新されました。新フォーマットと従来型には実務上の重要な違いがあり、自社の状況に合わせた使い分けが求められています。

本記事では、戦略マップの定義と構成要素の概要、そして新旧フォーマットの違いと選択の考え方を解説します。

目次

  1. 健康経営戦略マップとは何か
  2. 戦略マップがないと起こりやすい課題
  3. 戦略マップの概要|5つの構成要素
  4. まとめ:健康経営の「設計図」である戦略マップを専門家と共に描こう
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1.健康経営戦略マップとは何か

健康経営戦略マップとは、自社が抱える経営課題の解決に向けて、どのような健康投資を行い、どのような効果を期待するかという「ストーリー」を一枚の図に可視化するフレームワークです。

2025年3月に改訂された「健康経営ガイドブック」(健康経営優良法人認定事務局編)では、戦略マップを「健康経営の推進方針・目標とKGI、解決したい健康課題、施策、KPIの因果関係を一枚に整理したもの」だと位置づけています。

健康経営を「なんとなくやる」状態から「経営課題の解決に向けて設計する」状態へと引き上げるための、出発点となるドキュメントだと言えます。

参考:健康経営優良法人認定事務局|健康経営ガイドブック(2025年3月版)

健康経営全体における戦略マップの位置づけ

健康経営のPDCAサイクルにおいて、戦略マップは「P(計画)」フェーズの中核を担うものです。

施策の実施(D)・効果測定(C)・改善(A)のすべての判断基準が、戦略マップに記載された経営課題・KGI・KPIに依拠することとなります。

つまり、戦略マップを整備することで、施策同士のつながりや目的が明確になり、「何のために取り組んでいるのか」を社内で共有しながら、一貫性のある健康経営を進めやすくなるのです。

2.戦略マップがないと起こりやすい課題

①施策が「点」になり、全体像が見えにくい

ストレスチェック・健診・研修・禁煙対策などを個別に実施していても、それぞれが連動せず、どの施策がどの経営課題の解決に貢献しているかが不明確になってしまいます。担当者は「やることをこなす」だけになり、施策の優先順位も判断しにくくなるでしょう。

②経営課題とのつながりを説明しにくくなる

「今年度も健康施策を実施しました」という報告はできても、「この施策によって離職率が改善しました」という経営的な文脈での説明ができないでしょう。予算確保・体制整備を経営層に求める際の根拠が弱くなってしまいます。

③健康経営度調査での評価に影響しやすい

健康経営度調査(大規模法人部門)には、「健康経営で解決したい経営上の課題に対して、健康経営の実施により期待する効果や具体的な取り組み等のつながりを整理しているか」という設問が含まれています。

戦略マップの作成・活用は、こうした設問への対応に関わる重要な要素であり、認定取得を目指す企業にとって押さえておきたい取り組みの一つです。

特に、大規模法人部門の上位500法人に付与される「ホワイト500」を目指す場合には、戦略マップの整備状況がより丁寧に見られる傾向があります。KGI・KPIを明示し、施策とのつながりを整理できているかどうかが、上位認定を目指すうえで重要なポイントになりやすいです。

④「取り組んでいる」こと自体が目的化しやすい

目的と手段が整理されないまま施策を積み重ねていても、取り組みが形骸化しやすくなってしまいます。

従業員にも「また新しい施策が始まった」とネガティブに受け取られやすく、参加率や定着率の向上につながらないまま、負担やコストだけが増えてしまうこともあるでしょう。

3.戦略マップの概要|5つの構成要素

引用:健康経営優良法人認定事務局|健康経営ガイドブック(2025年3月版)24ページ

戦略マップは5つの要素から成り立っており、それぞれが因果関係で結びついています。

右端の推進方針・目標から逆算し、KGI・KPI・施策の順に左へ向かって落とし込むという方向性が重要です。

名称概要具体例
① 経営方針/健康経営の推進方針/健康経営の目標・KGI戦略マップの起点となる要素。
健康経営を通じて解決・改善を目指す経営課題と、その到達目標(KGI)を整理する。
「健康保持増進」 「働きがいの醸成」 「ワーク・エンゲイジメントの向上」など
② 解決したい健康課題経営課題の背景にある健康上の問題を明確にする要素。
何が自社の健康課題であるか、社内のデータを活用し、重点的に対応する課題を定める。
新フォーマットでは、この項目の明記が求められている。
「高ストレス者比率が高い」 「睡眠不足と感じる者の割合が高い」 「健診有所見率が高い」 など
③ 健康投資を行う施策(推進計画)健康課題の解決に向けて実施する具体的な施策。
健康課題に対応しているか確認する。 必要に応じて予算や実施体制もあわせて整理する。
「育児・介護の両立支援実施」 「管理職研修・セルフケア研修の実施」 「女性の健康課題研修の実施」 「ウォーキングイベント実施」など
④ 健康経営の施策の実施状況と効果を測定する(KPI・KGI)施策の取り組み状況を量的・質的に評価する指標(KPI)      
  --------------------------------
施策の結果として、従業員の意識・行動・健康状態がどう変化したかを示す指標 (KPI)
---------------------------------健康関連の最終的な目標指標(KGI)
「研修参加率」 「ストレスチェック受検率」 「保健指導実施率」 「イベント参加率・満足度」
-------------------------------------------
「運動習慣者率」 「睡眠満足度」 「高ストレス者比率」
--------------------------------------------「プレゼンティーイズム」 「アブセンティーイズム」 「ワーク・エンゲイジメント」 など

新旧フォーマットの違いと実務への影響

2025年3月の「健康経営ガイドブック」改訂に伴い、戦略マップのフォーマットも見直されました。

実務上は新旧フォーマットの違いを把握したうえで、自社の体制や開示方針、目指す認定区分に応じてどの形式で運用するかを検討することが重要です。

新旧フォーマットの比較

次表は、新旧フォーマットの比較をまとめたものです。

 従来型マップ新マップ (2025年3月版ガイドブックを踏まえた整理)
ベースとなる資料健康投資管理会計ガイドライン(2020年) など健康経営ガイドブック (2025年3月版)
主な構成要素・経営課題
・アウトカム指標
・行動変容指標
・プロセス指標
・健康投資施策
・推進方針、目標とKGI
・解決したい健康課題
・施策
・施策のKPI
・健康風土のKPI
健康課題の扱い明示は必須ではなく、運用方法に一定の幅がある解決したい健康課題を明記する構成が示されている
KGI・KPIの位置づけ必要に応じて設定・整理されることが多いKGI・KPIを明確にした設計がより重視されている
実務上の特徴比較的取り組みやすく、既存施策との接続もしやすい健康課題の整理や健康風土KPIの設定など、検討事項が増えやすい

参考:健康経営優良法人認定事務局|健康経営ガイドブック(2025年3月版)

新フォーマットの特徴

新フォーマットで特に注目されるのは、「解決したい健康課題」を明確に位置づける考え方が示された点です。

たとえば、高ストレス者比率や健診有所見率、生活習慣に関する課題など、自社が優先的に対応したい健康課題を整理し、それに対してどのような施策を講じ、どの指標で進捗や成果を確認するかを一連で示しやすくなっています。

また、新たに「健康風土のKPI」という観点が加わったことで、制度や施策の実施状況だけでなく、組織風土や従業員の受け止め方まで含めて見ていく視点が強まっていることがうかがえます。

なお、「高血圧有所見率が高い」「メンタル不調者が増加している」など、自社の健康課題を具体的に記載する必要があることに加え、これらの情報は対外的に公開されることが前提となるため、公開に抵抗を感じる企業が多い側面もあります。また、「健康風土KPI」という新しい概念について、測定の難易度・実務負荷が高いという課題も挙げられるでしょう。

新フォーマット運用時に想定される実務上の留意点

新フォーマットを運用する際には、いくつか検討しておきたい点があります。

次のようなポイントについて、企業によっては健康課題の示し方や、対外的な開示の範囲について慎重な判断が必要になる場合も考えられるでしょう。

  • 自社の健康課題をどの粒度で整理し、どこまで表現するか
  • 健康風土をどのような指標で把握するか
  • 既存の健康施策や指標体系とどう接続するか

そのため、新フォーマットは有用性がある一方で、運用には一定の準備と整理が求められると言えます。

従来型マップの実務上の位置づけ

従来型マップも、経営課題・指標・施策のつながりを整理し、KGI・KPIを明確にしたうえで運用すれば認定審査上は対応可能で、健康課題を非公開のまま経営課題・指標・施策の因果関係を整理する運用が否定されているわけではありません。

特に、まずは健康経営の全体像を整理したい企業や、既存施策をベースに段階的に高度化したい企業にとっては、従来型の考え方がなじみやすいケースも多いでしょう。

さんぎょうい株式会社としての対応方針

こうした点を踏まえ、さんぎょうい株式会社では、当面は従来型マップをベースにしながら、KGI・KPIの明確化を強化した形で継続的な運用を支援いたします。

新フォーマットについては、健康課題の整理や開示方針を含めて検討したい企業、大規模法人部門を見据えて整備を進めたい企業などに対し、個別に対応させていただきます。

健康経営戦略マップは、健康投資ストーリーを見える化するためのものです。

健康経営に関するPDCAを効果的・効率的に回し、また、策定した推進計画が推進方針や目標、KGIにつながるというロジック・仮説が成立するかを確認するために活用することが目的です。

企業ごとに推進方針や目標、KGIは異なるため、正解はないと言えます。

また、一度作成して終わりではなく、実践した結果を踏まえ、継続的に活用するという考え方が重要です。

4.まとめ:健康経営の「設計図」である戦略マップを専門家と共に描こう

健康経営戦略マップは、経営課題の解決に向けて健康投資を設計するための出発点です。

作成・更新のプロセスそのものが、担当者・経営層・産業保健スタッフの共通認識を育てる場にもなると言えます。

戦略マップを実効性のあるものにするためには、経営課題の整理・指標設定・施策との連動など、専門的な判断が随所で必要です。社内に産業医・保健師がいる場合でも、健康経営の全体設計を担うノウハウが十分でないケースは多いです。そのため、外部の専門家との連携が、マップの精度と実効性を高める最短ルートになると言えます。

さんぎょうい株式会社の健康経営サポート

さんぎょうい株式会社は2024年8月に健康経営コンサルティング自己宣言を行い、産業医・保健師・臨床心理士・管理栄養士・理学療法士など産業保健の専門職とコーディネーターが連携したワンストップの健康経営サポートを提供しています。

戦略マップの作成支援においては、健康関連データの分析・経営課題の整理・指標設定・施策立案まで、担当者に伴走しながら支援可能です。「何から始めればよいかわからない」という状態から、認定取得後の継続的なPDCA支援まで、自社の状況に合わせた支援体制を整えています。

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(文・監修/前田 明子)
さんぎょうい株式会社/ソリューション事業部 (看護師 第一種衛生管理者 健康経営エキスパートアドバイザー 産業保健法務主任(産業保健法学会認定) 更年期指導士(日本心身女性医学会認定) 両立支援コーディネーター 他)
大手企業人事部にて10年以上、健康管理・健康経営推進に携わり、現在は健康経営コンサルティング、保健指導、メンタルヘルス、女性の健康課題、仕事と治療の両立支援など幅広い分野で産業保健活動を展開中。

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