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アサーションとは?今注目のコミュニケーション-方法・例とメリットを解説-


コミュニケーションの場面で、何を言われるのか不安になったり、相手への伝え方に困ったりすることはありませんか?
職場、家庭、友人関係など、どんな人間関係でも「自分の気持ちをどう表現したらいいかわからない」「うまく伝えられない」ことがストレスの原因になることがあります。
さらに近年では、「言葉選びや伝え方によってハラスメントと受け取られないか」といった不安や葛藤も、職場のコミュニケーションにおける大きな課題となっています。
ストレスや対人関係の不安があることによって、必要以上にかかわりを避けたり、相手に攻撃的になってしまうこともあるでしょう。
本コラムでは、事例をもとにアサーティブな感情表現と円滑なコミュニケーションのための方法をご紹介します。

目次

  1. アサーションが注目される背景
  2. アサーションとは
  3. 4つのコミュニケーションタイプ
  4. カウンセリングがもたらす好影響
  5. アサーティブな伝え方の基本ポイント
  6. 理想のコミュニケーションを目指して
  7. Q&A
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1.アサーションが注目される背景

Aさんの場合

「断ろうと思うんだけど、どう言えばいいのか考えているうちにタイミングを逃してしまうんです」

社内のカウンセリングでそう語るAさんは30代女性。転職して3年目の職場で、周囲から信頼されるポジションになっていました。しかし、どれだけ業務が立て込んでいても、頼まれた仕事を断ることができず、残業が続く日々。ワークライフバランスが崩れ、疲労感などのストレスのサインも現れていました。

話を聞く中で、「断ると迷惑をかけるのではないか」「相手に迷惑をかけるなら、自分が我慢すれば済むことでは」といった思いがあることが見えてきました。

職場の「対人関係」がストレス要因に

厚生労働省による調査によると、「(職場で)強いストレスを感じる事柄がありますか」という質問にイエスと回答した人は68.3%にのぼりました(令和6年労働安全調査)。その中で、ストレスの内容として「対人関係」は第4位に入っています。
この調査が始まった平成25年から「対人関係」の項目は常に上位4位以内に入っています。仕事の量や責任の重さといった項目と並び、職場の対人関係、ひいてはコミュニケーションが労働環境のストレス要因となっていることがわかります。

多様性への配慮とコミュニケーションの遠慮

1990年代から2000年代にかけ、情報通信技術は急速に発展しました。業務のスピード向上や幅広い情報収集が可能となり、そのことは働き方の多様性やライフスタイルにも大きな影響を与えました。多様な働き方や価値観が広がり、それに伴って、個々人の人権的尊重の考えの広がりも社会全体で大きなテーマとなっています。

そうした背景の中で、自分の意見を言うことに遠慮が生まれたり、伝え方に配慮するあまり自分の意見を飲み込んでしまったりという方は少なくないのではないでしょうか。

2.アサーションとは

アサーションはコミュニケーションスキルの一つ

アサーション(assertion)とは、1950年代のアメリカで生まれたコミュニケーションスキルのことです。自己表現に不安を感じる人や、対人関係で遠慮しがちな人に向けて開発されました。

アサーションの考え方では、コミュニケーションのスタイルをいくつかのタイプに分けます。その中で、理想的で適切な自己主張とされるタイプを、アサーティブ(assertive)と呼びます。

アサーティブなコミュニケーションとは

アサーティブという言葉は、日本語では「自己主張」と訳されます。ここでいう主張は、相手を押しのけたり自分の主張を押し通したりするものではありません。自分の気持ちを率直に伝えつつ、相手の意見や立場にも理解を示して配慮する――それがアサーティブなコミュニケーションです。

自分と相手の気持ちと権利を尊重する

個人はそれぞれどんな感情でも持つ自由があり、それを表現する権利があります。また、こうした自由はお互い脅かされるものではなく、権利を侵入し合うものでもありません。アサーションの基盤にあるのは、このような相互の尊重を踏まえたうえでの「自分を大切にする」という考え方です。

自分が感じた気持ちを我慢することなく、攻撃に利用することなく、お互いに理解し合うために相手に伝えることは、誠実な関わり方の一つです。アサーティブな姿勢により、対人関係のストレスが少ない、よりよい人間関係を築くことができるのです。

アサーションを活用できる場面

アサーションの考え方やそれをもとにしたコミュニケーションスキルは、幅広い関係性で応用することができます。家族・友人といったプライベートの関係性でも、上司・部下といった仕事の関係性においても、円滑なコミュニケーションのヒントにつなげることができます。

特に交渉や相談といった意見を交換する場面では、大きな力を発揮できるスキルです。

 3.4つのコミュニケーションタイプ

土沼雅子氏の著書「アサーション・トレーニング 自分らしい感情表現」では、以下の4つのタイプが挙げられています。

図1 4つのコミュニケーションタイプ(土沼「アサーション・トレーニング 自分らしい感情表現」より引用)

1)ノンアサーティブ(非主張的)

自分の気持ちを抑え、相手に合わせるスタイル

・誘いを断りたいのに断れない

・勧められると、納得していなくても言われたとおりにしてしまう

2)アグレッシブ(攻撃的)

自分の意見を押し通し、相手の気持ちを考慮しないスタイル

・「そんなの無理」と強く否定する

・「あなたが悪い」と相手を責める論調になる

3)ノンアサーティブ‐アグレッシブ(非主張的-攻撃的)

表面上は受け入れているように見えて、内心では不満を抱えているスタイル

・頼まれたことに不満を持ちながら引き受ける

・自分の希望を言わず、相手に決定をゆだねる

4)アサーティブ(自己主張)

自分の気持ちを率直に伝え、相手の意見も尊重するスタイル

・人に頼みたいとき…「初めての業務で不安です。何度かレクチャーしてもらえたら安心です」

・人が傷つく話題で…「わたしは違う意見だな。別の話にしませんか」

4つのタイプは、完全に固まっているものではありません。複数にまたがっていたり、行ったり来たりすることがあります。環境や相手によって変化することもあります。

4.アサーションによる実践的な効果

Aさんの変化

カウンセリングを通し、Aさんはアサーションについて学び、人との会話や仕事の場面を通して自分自身のコミュニケーションを振り返りました。Aさんはカウンセリングの中で「アサーティブに伝えられる自分になりたい」と、自分自身の感じ方や考え方に向き合い、コミュニケーションの場面を振り返っていきました。

変化をもたらす自己意識

アサーティブに伝えるためにAさんが意識したのは、「自分がどう感じているか」「自分の気持ちと言葉に責任を持つ」などでした。

Aさんのコミュニケーションの背景には「自分さえ我慢すればいい」という考えがありました。このとき、相手の気持ちや状況を自分の言葉で確認しないままに、ただ「伝えない」ということを選択することは、相手の気持ちを自分の想像で決めつけてしまうなどの一方的なコミュニケーションでもあります。Aさんが意識したことはどれも、自分の意思を尊重すること、相手の意思を尊重することにつながることでした。

アサーションの手法による解決

ある時、上司からの業務依頼に対して、Aさんは「いくつかの仕事を担当していて、いま手一杯です。気持ち的にもあまり余裕がありません」「ただ、私が受けることで全体の業務の調整にも余裕ができますよね。来週以降の取り組みで間に合いますか?そうしてもらえたら助かります」と伝え、上司と一緒に無理のないスケジュール調整ができました。

その様子を見ていた後輩からは「Aさんの伝え方を見習いたい」との声も。

Aさん自身も「言ってみたら思ったよりも難しくなかった。すっきりしました」とカウンセリングで話されました。

5. アサーティブな伝え方の基本ポイント

明日からできるアサーティブな伝え方①

アサーティブに伝えるためのトレーニングの一つとして、DESC法という伝え方があります。

DESC法は、アメリカの心理学者であるゴードン・バウアーらによって提唱されました。4つのステップに従って順に伝えることで、自分の伝えたいことを相手にフラットに伝えることがかないます。

論理的に伝えることがいい効果となる場面では、こちらの伝え方を試してみましょう。

図2 DESC法の4つのステップ

明日からできるアサーティブな伝え方②

よりシンプルに、次の3つのポイントを意識して伝える方法もあります。(土沼,2012)

ü 自分の要望を具体的にする

ü 主語を「わたしは」にする

ü 率直に、正直に伝える

たとえば「変わってほしい」「ちゃんとしてほしい」という言葉は、相手にとってはあいまいで伝わりづらいものです。上司の立場であっても、部下の立場であっても、具体的に、何をどうしてほしいのかを明確にして言葉にすることが大切です。

良いコミュニケーション方法の構築

アサーションの考えのもと、自分自身のタイプを率直に見ることを繰り返していくと、次のような効果があらわれてきます。

l 自分がどう感じているのか明確になる

(「腹が立っている」「わかってもらえなくて悲しい」「孤独だ」など)

l 相手に何を求めているのか整理できる

l 感情と行動を分けて言語化する癖がつく

l 自分の気持ちを本当の意味で大切にできる

l 自信がつく

これらは自尊感情や自尊心にも影響し、建設的なコミュニケーションをうみだすことにつながっていきます。

アサーティブに伝えたいときの注意点

ノウハウや紋切り型のフレーズを持っていても、実践ではなかなか使いづらいこともあるかもしれません。本当の意味でスキルを身に着けるためには、自分のスタイルを正確に認識することがはじめの大きな一歩です。

例えば、自分ではノンアサーティブタイプだと思っていても、周囲からはアグレッシブタイプに見えていることもあるかもしれません。今の自分を客観的にありのままに受け止めることが変化の前には不可欠です。

なお、強い怒りをぶつけられる場面や身の危険を感じるような状況では、無理に伝えようとしなくても構いません。「伝えないことを選ぶ」ことも、アサーティブな判断のひとつです。

6. 理想のコミュニケーションを目指して

協調性と自己主張

「忖度する」「空気を読む」——日本人のコミュニケーションには、協調性を重んじる文化があります。もちろんそれも大切な価値観ですが、そこに「自分の気持ちを大切にする」「相手にも配慮する」「率直に伝え合う」という視点が加わることで、関係性はより健やかなものになります。

なお、本コラムのエピソードは、複数の事例をもとに再構成したものであり、特定の個人を示すものではありません。Aさんの場合は、自分の気持ちを人に伝えるためのスキルと自信を身に着けることが重要なポイントだったため、アサーションのトレーニングが効果的でした。弊社では国家資格を持ったカウンセラーがその都度一緒に必要な対応を検討します。

人間関係の質が、職場の生産性や定着率に直結する今、アサーティブなコミュニケーションは重要なスキルです。ぜひ新入社員の研修や人材育成、職場環境づくりに活用していきましょう。

7. Q&A

Q1.アサーションとはなんですか?

A1.アサーションとは、1990年代のアメリカで生まれたコミュニケーションスキルです。アサーティブな伝え方によって、自分も相手も尊重した人間関係を作ることにつながります。

Q2.アサーションとアサーティブの違いはなんですか?

A2.アサーションとはこのコミュニケーションスキルを指す考え方の総称です。アサーションの考え方によってコミュニケーションのタイプ分けがされており、そのうちの一つがアサーティブ(自己主張)です。

Q3.アサーションの考え方によるタイプ分けとは何ですか?

A3.コミュニケーションのスタイルとして、ノンアサーティブ、アグレッシブ、ノンアサーティブアグレッシブ、アサーティブの4つが挙げられます(土沼(2012)より)

Q4.職場のコミュニケーションにも使えますか?

A4.もちろん使えます。職場では特に、相手に気を使う場面や「依頼する」「依頼を断る」などの場面で活用できます。適切な主張をすることで、ストレスの少ない、心地よいコミュニケーションを構築できます。

Q5.アサーティブに伝えるためにはどうしたらいいですか?

A5.基本となるポイントは「自分の要望を具体的にする」「主語を『わたしは』にする」「率直に、正直に伝える」の三つです。自分のコミュニケーションタイプを知り、新たなコミュニケーションを身に着けるには、専門家による研修やアサーショントレーニングがおすすめです。

参考文献:

土沼雅子「アサーション・トレーニング 自分らしい感情表現 ‐ラクに気持ちを伝えるために‐」金子書房,2012

平木典子「改訂版 アサーション・トレーニング -さわやかな〈自己表現〉のために」日本・精神技術研究所,2009

松下直子「困った部下のタイプ別育成術 できる上司のアプローチ50」労務行政,2016

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文/戸田 はるか(臨床心理士・公認心理師)
さんぎょうい株式会社/メンタルヘルス・ソリューション事業室
大学院修了後、医療・教育・行政分野で心の専門職として従事。実務経験は10年以上。
現在は、従業員への心理面接を中心に、企業向けにメンタルヘルス支援を提供。
心理的支援に加え、ストレスマネジメントやセルフケアの観点から身体面のケアにも深い関心を持つ。
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