産業医の紹介サービスとは?企業が知っておくべきポイントと選び方

近年、企業の健康管理やメンタルヘルス対策がますます重要視される中で、産業医の役割が注目されています。
産業医は、従業員の健康を守り、職場環境の改善をサポートする専門家ですが、「どうやって適切な産業医を見つければいいのか」と悩む企業も少なくありません。
本記事では、産業医の選任義務や役割を解説しながら、企業の負担を軽減し、適切な産業医を見つける手助けとなる、産業医紹介サービスについて詳しく紹介します。
目次
- 産業医の選任が必要な企業
- 産業医紹介サービスとは
- 産業医紹介サービスを利用するメリット
- 産業医紹介サービスを利用するデメリット
- 産業医紹介サービスを選ぶ際の4つのポイント
- 産業医を紹介してもらうまでの流れ
- 産業医紹介サービスを活用して、企業の健康管理を強化しよう


産業医の選任が必要な企業
日本の労働安全衛生法では、従業員が50人以上いる事業場には、産業医の選任が義務付けられています。
【企業の規模別 産業医の選任義務】
- 50人以上の事業場:嘱託産業医(非常勤)の選任が必要
- 1,000人以上の事業場:専属産業医(常勤)の選任が必要。
※ただし、有害業務(例:有害放射線や有害物に関係する業務)に500人以上の労働者を従事させる事業場においては、専属の産業医の選任が必要
産業医は、職場の健康リスクを管理し、従業員が安全に働けるようサポートする重要な役割を担っています。
産業医に依頼できる業務内容
産業医に依頼できる業務内容は、常時50人以上の事業場における産業医の職務と同様となります。具体的な職務内容は、以下の通りです。
- 健康診断の実施とその結果に基づく措置
- 長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
- ストレスチェックとストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
- 作業環境の維持管理
- 作業管理
- 上記以外の労働者の健康管理
- 健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
- 衛生教育
- 労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置
産業医は、上記の職務に加え、月に1度以上の職場巡視、衛生委員会の参加などを行います。こうした活動を通じ、産業医は労働者の健康を管理します。
産業医を紹介してもらう方法
産業医を派遣してもらう方法は、主に以下の通りです。
- 健診を実施している医療機関に相談する
- 近隣の医師会に依頼する
- 紹介サービスを利用する
【健診を実施している医療機関に相談する】
自社が健康診断で利用している医療機関に相談し、産業医を派遣してもらう方法があります。この場合、自社で行った健康診断結果のチェックや、その後の健康管理などもスムーズに行える可能性があるでしょう。
【近隣の医師会に相談する】
自社の近隣の医師会に相談し、産業医として派遣してもらえそうな医療機関を紹介してもらうのも1つの方法です。医師を直接紹介してもらうわけではなく、案内された医療機関から産業医を派遣してもらえるかもしれません。
【産業医の紹介サービスを利用する】
紹介会社・サービスを利用し、産業医を派遣してもらうのも有効な手段です。紹介会社・サービスには産業医が多く登録しているため、自社のニーズに適した人材を紹介してもらえる可能性が高くなります。産業医の派遣だけでなく、選任後のサポートも受けられることが考えられ、メリットの1つだといえるでしょう。
産業医紹介サービスとは
産業医紹介サービスは、企業のニーズに応じた適切な産業医を紹介し、産業医の選任のサポートを行うサービスです。
自社で産業医を探す場合、以下のような課題が発生することがあります。
- 産業医をどこで探せばいいかわからない
- 経歴が企業の業種に適しているか判断できない
- 契約や手続きの方法が不明確
これらの課題を解決し、企業に最適な産業医をスムーズに選任できるのが「産業医紹介サービス」です。
産業医紹介サービスを利用するメリット
企業が産業医面談を実施する際、産業医紹介サービスを活用することで、企業は適切な産業医をスムーズに選任できるだけでなく、導入後のサポートも受けられます。
ここでは、具体的なメリットについて詳しく解説します。
企業の業種・規模に適した産業医を紹介してもらえる
企業の業種や規模によって、求められる産業医の経験やスキルは異なります。たとえば、製造業では労働災害や騒音対策、化学物質管理に精通した産業医が求められます。一方で、IT企業では長時間労働やメンタルヘルスケアに強い産業医が適しています。
産業医紹介サービスを利用すると、企業の業務内容や健康管理上の課題を踏まえて、最適な産業医をマッチングできます。自社で産業医を探す場合、どのようなスキルが必要なのかを判断するのは難しいですが、紹介サービスでは、これまでの実績や経験を考慮し、適切な候補を提案してくれます。
また、従業員の数に応じた産業医の選任が必要になりますが、大規模事業場向けの専属産業医や、中小企業向けの嘱託産業医など、企業の規模に適した形で紹介を受けることが可能です。
契約手続きがスムーズに進む
産業医の選任には、契約の締結や業務内容の取り決めなど、煩雑な手続きが必要です。特に、自社で産業医を探す場合は、契約書の作成や報酬の設定、業務範囲の明確化といった点で手間がかかります。
産業医紹介サービスを利用すると、これらの手続きを専門のコーディネーターがサポートし、スムーズに進めることができます。
具体的には、以下のような支援が受けられます。
- 契約の締結サポート:標準的な契約内容の提示や調整のアドバイス
- 業務内容の明確化:企業の要望に応じて、産業医の担当業務を整理
- 報酬体系の説明:企業の予算に応じた料金プランの提案
これにより、トラブルを未然に防ぎ、安心して契約を結ぶことができます。
産業医の選任後もサポートを受けられる
産業医の選任はゴールではなく、企業と産業医が連携しながら健康管理体制を整えていくことが重要です。しかし、実際には「産業医とのコミュニケーションがうまく取れない」「産業医の訪問回数や業務範囲について調整が必要」などの課題が発生することがあります。
産業医紹介サービスの多くは、契約後もフォローアップを行い、企業と産業医の円滑な連携をサポートします。
主なサポート内容には、以下のようなものがあります。
- 産業医との定期的なミーティングの設定
- 契約内容や業務範囲の見直し
- 産業医の変更・追加の相談対応
特に、事業拡大に伴い従業員数が増えた場合や、業種転換により新たな健康リスクが発生した場合には、産業医に依頼する業務内容の見直しが必要になることもあります。そうした際に、スムーズに対応できる点も大きなメリットです。
早期に適切な産業医を見つけられる
自社で産業医を探す場合、産業医とのコネクションがない企業にとっては、探し出すだけでも多くの時間と手間がかかります。
産業医は選任の必要が生じてから14日以内に選任届を出さなければなりません。しかし、求人サイトや医療機関を通じて個別に交渉する方法もありますが、産業医がすぐに見つかるとは限りません。
産業医紹介サービスを利用すると、あらかじめ登録されている産業医の中から、条件に合う産業医と迅速にマッチングできるため、短期間での選任が可能になります。
一般的な産業医紹介サービスを利用した場合の流れは以下の通りです。
- ヒアリング(企業の要望や現状を確認)
- 適した産業医のマッチング・候補者の提案
- 面談・契約手続き
- 産業医の業務開始
このように、数週間程度という短期間で産業医の選任が完了するケースもあり、迅速な導入が可能です。
産業医紹介サービスを利用するデメリット
産業医紹介サービスは、企業に適した産業医をスムーズに選任できる便利な手段ですが、利用に際してはデメリットも存在します。導入前にデメリットを把握し、適切な対応策を講じることで、より効果的に産業医を活用することができます。
コストが発生する
自社で直接産業医を探す場合と比較すると、紹介サービスを利用することで以下のような費用が発生する点がデメリットとして挙げられます。
- 紹介手数料
- 月額契約費用
- 追加業務の対応費用
特に中小企業にとっては、予算内で産業医を確保できるかどうかが課題となる場合があります。そのため、契約前に料金体系をしっかり確認し、自社にとって最適なプランを選択することが重要です。
【産業医派遣の報酬の相場】
公益社団法人日本橋医師会が公開しているデータによると、嘱託産業医の基本報酬月額の相場は、以下のようになっています。
労働者数 | 基本報酬月額 |
50人未満 | 75,000円〜 |
50~199人 | 100,000円〜 |
200~399人 | 150,000円〜 |
400~599人 | 200,000円〜 |
600~999人 | 250,000円〜 |
ただし、上記の金額はあくまで目安であり、利用するサービスや業務内容によって費用は異なるでしょう。
産業医との相性に問題が生じる可能性がある
産業医紹介サービスでは、企業の要望に基づいて適切な産業医をマッチングしますが、実際に働き始めてから「企業の文化に合わない」「従業員とのコミュニケーションが取りづらい」といった相性の問題が生じることがあります。
ただし、多くの紹介サービスでは、契約後のフォローとしてサポート体制を整えています。導入前に、サポート体制について確認しておくと安心です。
契約後の変更や解約に制約がある場合がある
契約内容によっては、産業医の変更や契約解除に制約がある場合があります。例えば、「半年間は変更不可」「途中解約には手数料がかかる」といった契約条件があると、満足できない場合でもすぐに見直すことが難しくなります。
産業医紹介サービスを選ぶ際の4つのポイント
この項目では、実際に、産業医サービスを選ぶ際のポイントを見ていきましょう。産業医紹介サービスを選ぶときには、以下の4点に留意する必要があります。
- 産業医の対応可能な業務を確認する
- 対応エリアを確認する
- 費用が負担にならないか確認する
- サポート体制を確認する
それぞれについて解説します。
1.産業医の対応可能な業務を確認する
登録している産業医の対応できる範囲はさまざまです。それぞれ、産業医が対応可能な業務を確認することが大切です。
例えば、女性社員の多い事業場であれば、労働者が気兼ねなく相談しやすいよう女性医師を選任したり、メンタル不調者が多い職場であれば、精神科領域を専門とする産業医を選任したりするのが望ましいでしょう。
自社の特性にマッチする紹介会社やサービスを選ぶことが大切です。
2.対応エリアを確認する
紹介会社によって、産業医の派遣に対応していないエリアがあるケースは少なくありません。事業所がある地域が対応エリアかどうか、事前に確認しておきましょう。
特に、へき地や離島などに事業所を構えている場合は、対応地域かどうかしっかり確認し、産業医紹介会社を選ぶことが大切です。
3.費用が負担にならないか確認する
産業医紹介会社やサービスは、プランによって費用が異なるケースが考えられます。自社に適したプランがあるか、また、費用は負担にならないか、事前に確認しておくと良いでしょう。
4.サポート体制を確認する
産業医を選任する際、必要な書類の作成や提出を代行してもらえるか、産業医選任後のサポートはどのようなところまで対応してくれるかなど、会社により異なります。
産業医を紹介してくれるだけでなく、選任後のフォローも充実している会社・サービスを選ぶようにしましょう。
産業医を紹介してもらうまでの流れ

産業医紹介サービスを利用することで、企業のニーズに合った適切な産業医をスムーズに選任できます。しかし、「具体的にどのような手順で進むのか?」という疑問を持つ企業も多いでしょう。
ここでは、産業医を紹介してもらうまでの一般的な流れについて、詳しく解説します。
初回相談
まず、産業医紹介サービスを提供する企業と初回相談を行います。ここでは、企業の業種や規模、抱えている健康管理上の課題についてヒアリングが行われます。
【主なヒアリング内容】
- 従業員の人数(50人以上かどうか)
- 業種・業態(製造業・IT・小売業など)
- 企業が抱える健康管理上の課題(長時間労働、メンタルヘルスの改善など)
- 希望する産業医の条件(経験職種、訪問頻度、対応可能業務など)
この段階で、企業が求める産業医のスキルや経験について詳しく共有することにより、より適切な産業医をマッチングしてもらいやすくなります。
また、契約形態や料金体系の説明も行われるため、サービスの内容や費用を事前にしっかり確認することが重要です。
産業医のマッチング
企業のニーズをもとに、紹介会社が適した産業医の候補をリストアップし、提案を行います。
【マッチングのポイント】
- 企業の業種や職場環境に合った産業医か
- 実務経験や業種ごとに必要な知識(有機溶剤など)を持っているか
- 産業医としての経験年数や実績は十分か
- 企業文化への理解や従業員と円滑にコミュニケーションが取れるか
この段階で、産業医の経歴や対応可能な業務などの詳細情報を確認できるため、企業側で慎重に候補を検討することが大切です。
面談・契約
候補となる産業医が決まったら、企業と産業医の面談を実施し、契約します。面談の目的は主に以下の3点です。
- 産業医の業務内容や期待する役割の確認
- 企業側の健康管理体制や具体的な課題の共有
- 産業医との相性やコミュニケーションの確認
実際に話をしてみることで産業医の人柄や考え方を知ることができ、企業との相性を見極めることが可能です。
面談後、企業と産業医双方の合意が得られたら、契約手続きを進めます。
【契約時の主な確認事項】
- 契約形態(直接雇用・業務委託契約)訪問頻度(毎月・隔月・四半期ごと など)
- 具体的な業務内容(健康診断結果の確認、職場巡視、ストレスチェック対応など)
- 費用・支払い条件
契約内容は企業と産業医双方の合意のもと決定されるため、不明点があれば事前に確認しておきましょう。
産業医による健康管理サポートの開始
契約が完了したら、産業医が正式に企業の健康管理を担当し、業務を開始します。
産業医が担う主な業務は、以下のとおりです。
- 職場巡視(労働環境のチェックと改善提案)
- 衛生委員会への参加
- 健康診断の事後措置・従業員への面談指導
- 長時間労働者への健康指導・産業医面談
- ストレスチェック対応
- 休職・復職の支援
産業医が効果的に職場の健康管理を行うためには、企業側も人事・労務担当者との連携を密にすることが重要です。定期的なミーティングを設け、健康管理の方針や課題を共有することで、より良い労働環境の実現につながります。
契約後の紹介会社によるサポート
産業医紹介サービスを提供する会社の中には、契約後も定期的にフォローを行うサービスを提供しているところがあります。
【契約後のサポート内容】
- 定期的なミーティング設定
- 企業の健康管理課題の見直しやアドバイス提供
- 産業医の変更・追加の相談対応
- 法律改正や労働衛生の最新情報の提供
産業医の業務が円滑に進んでいるかをチェックし、必要に応じて調整を行ってくれるため、産業医との契約後も安心できるのが特徴です。
特に、産業医が企業の文化に合わない場合や、業務内容の変更が必要になった場合など、産業医の変更がスムーズに行えるかどうかも重要なポイントです。契約前に、こうしたサポート体制が整っているか確認しておくと良いでしょう。
産業医紹介サービスを活用して、企業の健康管理を強化しよう
産業医紹介サービスを活用することで、以下のようなメリットがあります。
- 企業の業種・規模に合った産業医を見つけられる
- 契約手続きをスムーズに進められる
- 産業医選任後のフォローアップを受けられる
- 短期間で適切な産業医を選任できる
自社に最適な産業医をスムーズに選任したい企業は、産業医紹介サービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
産業医の選任は、従業員の健康を守り、企業の生産性向上にもつながる重要なプロセスです。自社に合った産業医をスムーズに選任できるよう、信頼できる紹介サービスを活用してみてはいかがでしょうか。

