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​産業医の役割とは? 臨床医との違いと具体的な仕事内容4つを解説!


​​産業医の選任は法的義務として必要ですが、その役割や具体的な仕事内容が曖昧で、実際の活用方法に悩む人事担当者や企業も少なくありません。

本記事では、産業医が担う基本的な役割について解説するとともに、適切な活用によって得られる事業場のメリットについてわかりやすく解説します。

産業医は医学的な立場から、従業員の健康管理や労働環境の改善に向けた提言を行い、健康教育などの重要な役割を担っています。

​​企業が産業医と連携することで、従業員の健康問題や労働災害のリスクを適切に把握し、効果的な予防策を立てることができます。適切な産業医を選任し、従業員の健康増進と生産性向上にぜひ役立ててください。

  ※2025年2月時点での情報です。

目次

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産業医とは

​産業医とは、医学的な専門知識をもって従業員の健康管理や労働安全に関する相談・指導を行う医師のことです。従業員の健康状態を定期的に評価しながら、職場環境や労働条件が健康に影響を与えないよう労働者や会社側にアドバイスを行います。

​​従業員が50人以上の事業場では、事業者に産業医の選任が義務付けられています。一方、50人未満の事業場においても、医師等に産業医の役割を担ってもらうことが努力義務とされています。

なお、1,000人以上の大規模事業場の場合は、専属産業医(従業員のように企業に常駐する産業医)を選任する必要があります。

産業医の特徴として、一般的な医師とは異なり、診断や薬の処方は行いません。産業医の職務は労働安全衛生規則第14条第1項に基づき、法的に9つの業務に分類されています。

産業医の職務(安衛則第14条第1項)

1.健康診断の実施とその結果に基づく措置
2.長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
3.ストレスチェックとストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
4.作業環境の維持管理
5.作業管理
6.上記以外の労働者の健康管理
7.健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
8.衛生教育
9.労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置

出典:「中小企業事業者の為に産業医ができること」独立行政法人労働者健康安全機構

産業医は、一般の医師免許資格に加え、企業の事業場で産業医として選任されるための資格を保有する必要があります。

産業医になるには、医師免許を持ち、厚生労働省が定める「産業医学の専門研修」を修了する必要があります。具体的には、「日本医師会認定産業医」資格の取得や、労働衛生コンサルタント試験の合格が求められます。また、労働衛生分野の専門医も産業医として活動できます。

このように産業医は、専門的な医学知識を活かして従業員の健康を守り、適正な労働環境を整えるうえで重要な役割を果たします。産業医の確保は、法令を遵守するためだけでなく、経営施策の一環としても欠かせないといえるでしょう。

臨床医との違い

臨床医は、病院やクリニックに勤務し、患者の診察や治療を通じて病気の治療に直接携わる医療専門職です。主な役割は、病気の診断や治療、そして健康回復に向けた医療サービスの提供です。

一方、産業医は従業員の健康を維持することを目的としており、診察や治療は行いません。企業内で活動し、事業主と業務契約を結びます。

作業環境や職場の安全性、衛生状況などをチェックし、必要に応じて改善すべき点などの報告もします。長時間労働者や高ストレス者に対する面接指導なども業務範囲です。

【産業医の役割1】健康診断をはじめとした対応

​​産業医の役割は厚生労働省によって定められており、その中でも健康診断に関する対応は重要な業務のひとつです。

健康診断とその結果に基づく措置

健康診断は単なる実施が目的ではなく、従業員が就労可能な健康状態かをチェックするために行われます。産業医は、健診結果をもとに従業員の働き方に問題がないかを判断し、必要に応じて意見を事業者に提供します。

健康上の問題が見つかった場合には、従業員に治療を勧めるとともに、産業医のアドバイスを基に企業が働き方の変更や改善を検討します。産業医が早期に介入することで、従業員の健康悪化や長期離職を予防することが可能です。

また、医療機関への受診をためらう従業員に対しては、産業医が専門的な知識を活かして受診を促す対応も行います。

健康情報の適切な管理

健康情報は個人のプライバシーに深く関わるデリケートな情報です。そのため、取り扱いにはプライバシー保護を最優先し、慎重に対応することが求められます。

一方で、従業員の健康を守るには、職場に対して必要最低限の情報開示が欠かせません。例えば、病状が職場で悪化しないよう適切な配慮や職場改善を行う必要がある場合、産業医がその相談役を担います。

まずは、従業員本人から健康情報の開示について同意を得ることが大切です。その上で、産業医が医療情報を加工し、プライバシーを保護しつつ健康状態をわかりやすく職場に伝えます。この際、情報の共有先は人事担当者や上司など、必要最小限の範囲に限定します。

こうした適切な情報管理によって、従業員のプライバシーを守りながら、職場全体が適切な対応をとれる環境を整えることが可能になります。

産業医による健康情報の取り扱いを通じて、一人ひとりに配慮した安全で働きやすい職場環境の実現が期待できます。

【産業医の役割2】けがや病気をした従業員のサポート

産業医の役割として、けがや病気をした従業員のサポートにも重要な役割を担っています。

治療と仕事の両立支援

一昔前であれば「病気=自宅療養か入院治療」という考え方が一般的でしたが、いまでは治療を続けながら働く人が増えています。産業医はそのような従業員と面談し、必要に応じて主治医との情報連携を図り、就業の可否や職場での配慮が必要かどうかを判断します。

従業員が「周囲に迷惑をかけてはいけない」と無理を重ねてしまい、結果的に病状が悪化するケースも少なくありません。そうした状況では、産業医が医学的な立場からアドバイスを行うことで、無理のない働き方と適切な治療の両立が可能となります。

休職中のサポートや復職支援

健康上の理由で休職や傷病休暇を取得している従業員に対して、治療の経過や体調を聞き取りながら、復職時期を検討するのも産業医の大切な役割です。必要に応じて職場環境の調整や業務内容の変更を提案し、スムーズな復職を支援します。

さらに、復職後も従業員が安心して働ける環境づくりを行い、本人や上司と協力しながら無理のない勤務体制を整えることが求められます。

【産業医の役割3】従業員の健康トラブルの予防

産業医は、健康トラブルを未然に防ぐための取り組みを行うことも重要な役割として求められています。現代の職場では、業務上の悩みや人間関係、パワハラなどが原因でメンタルヘルス不調を抱えるケースが増えています。

ストレスチェック制度でのメンタルヘルス対策

ストレスチェック制度では、産業医の役割が特に重要です。ストレスが高いと判断された従業員が希望した場合、医師による面接指導を行います。

医師であれば面接指導は可能ですが、心療内科やかかりつけ医では患者が置かれた会社の状況を十分に理解できていないのに対し、産業医であれば職場環境を熟知しているため、個々の状況に合わせた具体的なアドバイスを提供できます。

その結果、ストレスチェック制度を通じて職場全体のメンタルヘルス対策が効果的に機能するようになります。

長時間労働者との面談

長時間労働は、脳や心臓疾患、精神疾患といった深刻な健康問題につながり、労災認定の要件にもなりえます。このため、一定の基準を満たす長時間労働者には、医師による面接指導が義務付けられています。この面接指導を産業医が行えば、従業員個々人の職場環境に応じた適切なアドバイスやフォローが可能です。

産業医は従業員一人ひとりの健康状態や職場環境を踏まえたうえで、無理のない働き方を提案します。同時に企業側にも健康リスクへの正しい理解を促し、長時間労働の予防策を具体化するよう働きかけます。

健康教育・労働衛生教育

最近では、職場でのメンタルヘルス教育が注目されています。以前は有害物質や生活習慣病予防といったテーマが中心でしたが、現在はメンタルヘルスの重要性が増しています。

具体的には、次のようなテーマで教育が実施されています。

  • ストレスの正しい理解と予防法
  • 上司によるメンタルヘルスケアの方法
  • セルフケア・ラインケアの重要性
  • うつ病や適応障害などの早期発見・対処法 など

産業医は、職場の啓発活動をリードし、健康教育・労働衛生教育を通じてメンタルヘルスの改善を図っています。このように、産業医は従業員の健康を守るだけでなく、働きやすい職場環境を作るための中心的な存在として活躍しています。

【産業医の役割4】社内とのコミュニケーションと助言

産業医は一般社員が気軽に相談できる存在であると同時に、人事や総務など管理部門へのアドバイザーとしての役割を担っています。普段から社内でコミュニケーションを図り、客観的な視点から適切な助言を行うことが求められます。

職場巡視

産業医が職場を巡視する目的は安全衛生の観点で、次のとおり主に2つ挙げられます。

  1. 健康な従業員が職場で労働災害を防ぎ、ケガや体調を崩さないよう予防すること
  2. 病気や障がいのある従業員が、会社で働く中で症状が悪化しないよう配慮すること

健康な従業員に対しては、適切な労働環境が維持されているかを確認し、必要に応じて職場環境の改善を提案します。一方で、病気や障がいをもつ従業員には、それぞれの健康状態を踏まえて作業内容や労働時間などについてアドバイスを行います。

産業医は、医学的な視点から従業員と職場の双方を診ることで、すべての従業員の健康維持と向上に貢献しています。

衛生委員会への参加やアドバイス

産業医は、衛生委員会(安全衛生委員会)のメンバーとして活動し、職場環境や働き方、従業員の健康管理体制について議論します。この場で、産業医には医学的知見に基づいた助言が求められます。

例えば、以下のような内容についてのアドバイスが期待されます。

  • 健康診断結果の分析と、保健指導の改善提案
  • 作業環境の評価と職場環境改善の提案
  • 労働時間や勤務体制に関する助言
  • メンタルヘルス対策など健康課題への対応策

産業医が委員会に出席することで、現場の状況を把握しやすくなるだけでなく、職場と産業医とのコミュニケーションも深まります。こうした取り組みによって、従業員の健康を守り、適切な労働環境を整えることが可能になります。

産業医の役割に対して企業が取り組むべきこと

企業は、産業医の役割を従業員にしっかり伝えることが大切です。産業医は従業員の健康を守るパートナーであり、気軽に相談できる存在でもあります。その役割を理解してもらうことで、産業医の活用がより効果的になります。

産業医の活動は幅広く、従業員の健康管理にとどまりません。職場全体のヘルスケアを向上させるためのサポートや、健康リスクを予防するアドバイス、職場環境や働き方に関する課題の発見と改善提案など、多岐にわたる役割を担っています。労働安全衛生規則には「産業医の権限の付与」が、労働安全衛生法には「産業に対する情報の提供」について明記されており、これらに基づいて産業医は職場環境の改善に貢献しています。

このように、産業医は従業員の健康を支えるだけでなく、働きやすい環境を整えるための欠かせない存在です。企業が産業医の力を最大限に活用するためには、自社の健康ニーズに合った産業医を見つけることが重要です。

産業医探しでお困りの企業は

企業が産業医を探す際、従来の方法では以下のような課題が発生することがあります。

  • かかりつけ医は、産業医業務に十分な時間を割けない場合がある
  • 健康診断機関の産業医は健康診断業務が中心で、企業のニーズに即した対応が難しい

こうした課題を解決するため、弊社の産業医紹介サービスをご検討ください。弊社は、700社以上の企業との契約実績と、900名以上の登録産業医ネットワークを活かし、企業のニーズに合った産業医を紹介しています。またその後のコミュニケーションも経験豊富なコーディネーターが企業と産業医の双方に丁寧なヒアリングを行い、サポートしていきます。

さらに、衛生委員会の設立や運営支援、保健師や臨床心理士、また社会保険労務士や弁護士との連携を通じて、企業の産業保健だけでなく、労務問題なども総合的にバックアップします。

産業医探しでお困りの企業は、ぜひ弊社のサービスをご利用ください。

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