はたらく、の今と未来を見る。さんぎょうい株式会社

​​産業医の資格とは?必要な要件・取得するための方法や手続きを解説


白衣を着た医師の男女

​​産業医になるためには、医師免許に加えて特定の資格要件を満たす必要があります。産業医は従業員の健康管理と職場環境の改善に重要な役割を担っており、資格取得や更新には法律で定められた厳格な要件があります。

​​本記事では、産業医資格の取得に必要な要件や更新方法について詳しく解説していきます。

  ※2025年2月時点での情報です。

目次

企業や団体のみなさま、こちらからお問い合わせください。企業や団体のみなさま、こちらからお問い合わせください。

産業医とは

​産業医とは、労働者が健康で快適に働けるよう、企業に対して医学的な見地から専門的な指導・助言を行う医師のことです。一般的な診療所での医療行為とは異なり、労働者の健康管理や作業環境の改善に焦点を当てた活動を行います。

​​企業には労働契約法第5条に基づく「安全配慮義務」があり、産業医はその義務を果たすための重要なパートナーとなります。産業医として活動することで、企業の安全で健康的な職場環境づくりに貢献することができます。

産業医の職務

​​産業医として活動する際の職務範囲は広く、社会情勢や技術革新により求められる役割も変化していきます。​ 

産業医の主な業務は、以下の5つに分類されます。

  • 総括管理
  • 健康管理
  • 作業管理
  • 作業環境管理
  • 労働衛生教育

​​産業医はこれらの分野において、労働環境の改善やメンタルヘルスケアに取り組むことになります。業務を効果的に遂行するためには、産業保健スタッフや事業者との協力関係を築くことも重要です。

産業医の要件とは

産業医として活動するためには、医師免許に加えて労働者の健康管理に必要な特定の要件を満たす必要があります。労働安全衛生法第13条第2項に基づく産業医の資格要件は以下の通りです。

  1. 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修を、厚生労働大臣が指定する法人が実施したものを修了した者
  2. 産業医養成のための正規課程を設置する産業医科大学その他の大学で、その課程を修了し、実習を履修した者
  3. 労働衛生コンサルタント試験の保健衛生区分に合格した者
  4. 大学で労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、講師として勤務している者、もしくは過去にその職にあった者
  5. その他、厚生労働大臣が定める者

産業医の役割は健康診断の実施にとどまらず、職場環境の改善やメンタルヘルスのサポートまで多岐にわたります。特に近年は、メンタルヘルス対策や過重労働問題への対応など、高度な専門知識が求められる場面が増えています。

出典:労働安全衛生法第13条第2項

出典:労働安全衛生規則第14条第2項

産業医の資格を取得する3つの方法

産業医になるためには、医師免許に加えて労働衛生に関する専門知識が求められます。医師免許を持っていても、産業医としての役割を果たすには、労働者の健康管理や安全配慮に必要な研修を受ける必要があるのです。産業医の資格を取得するための主な方法には、以下の3つがあります。

  1. 日本医師会の産業医学基礎研修を受講する
  2. 産業医科大学の産業医学基本講座を修了する
  3. 労働衛生コンサルタントの資格を取得する

いずれの方法も、労働者の健康管理や安全配慮に必要な専門知識を習得することが求められます。

医師会の産業医学基礎研修を受講する

最も一般的な取得方法は、日本医師会が提供する産業医学基礎研修を修了することです。この研修では50単位以上の取得が必要で、この研修を修了した医師には、日本医師会認定産業医の称号が与えられ、5年ごとに生涯研修を修了することで資格の更新が可能です。

研修は、「前期研修」「実地研修」「後期研修」の3段階で構成されています。

1.前期研修(14単位以上)

入門的な内容で、以下の8項目それぞれの単位取得が必要です。

  • ​総論(2単位)
  • 健康管理(2単位)
  • メンタルヘルス対策(1単位)
  • 健康保持増進(1単位)
  • 作業環境管理(2単位)
  • 作業管理(2単位)
  • 有害業務管理(2単位)
  • 産業医活動の実際(2単位)

2.実地研修(10単位以上)

実務的な研修で、職場巡視や作業環境測定などの実地経験を通じて、産業医としてのスキルを磨きます。

​​3.後期研修(26単位以上)

地域の特性を考慮した実務的かつ総括的な内容で、産業医としての専門知識を深めます。

研修修了後、産業医資格を申請することが可能で、企業内での健康管理や安全配慮義務のサポートにおいて重要な役割を果たすことができます。

産業医研修会の日程は、日本医師会雑誌や日医ニュースに掲載されています。また、東京都内の研修会日程は、偶数月の1日に更新される「東京都医師会ホームページ」で確認できます。

出典:日本医師会|日本医師会認定産業医 制度の説明

産業医科大学の産業医学基礎講座を修了する

​​産業医科大学では「産業医学基礎講座」を提供しており、講義やグループ別実習、個別指導を通じて産業医としての基礎から実務までを学ぶことができます。

北九州市で開催される2カ月コースや、東京で開催される5カ月コースなど、複数のプログラムが用意されています。また、必要な単位を6日間ほどで取得できる集中講座もあり、夏場に産業医科大学で、11月と2月に東京で開催されます。

この集中講座は抽選で受講者が選ばれるため、全ての希望者が受講できるわけではありません。詳細な日程や申し込み情報については、産業医科大学のホームページで確認してください。

 労働衛生コンサルタント試験(保健衛生区分)に合格する

​​労働衛生コンサルタント試験(保健衛生区分)に合格することでも、産業医の資格要件を満たすことができます。

この方法は、労働安全衛生規則第14条第2項に規定されている要件の一つです。労働衛生コンサルタントとは、事業場の衛生状況を診断し、その向上を図る国家資格保持者であり、産業医としての役割も果たすことができます。

労働衛生コンサルタント試験には「保健衛生」と「労働衛生工学」の2つの区分があり、産業医に必要なのは保健衛生区分の合格です。医師免許を所有している場合、筆記試験の一部が免除され、「労働衛生一般」と「健康管理」の科目は免除となります。また、医師会や産業医科大学の産業医学講習を修了している場合、科目が免除される場合もあります。

試験科目は以下の通りです。

  • 労働衛生一般(択一式)
  • 労働衛生関係法令(択一式)
  • 健康管理、労働衛生工学(記述式)

労働衛生コンサルタント資格を取得することで、産業医として企業内での健康管理に関わることが可能です。

出典:公益財団法人安全衛生技術試験協会|労働衛生コンサルタント

産業医の資格申請手続き

産業医資格を取得するためには、基礎研修や集中講座で50単位以上を修了した後に、登録手続きを行う必要があります。登録は、基礎研修最終受講日または集中講座修了認定日から5年以内に1回限り申請可能で、できる限り速やかに手続きを進めることが推奨されます。

申請の際には、以下の書類を用意し、審査・登録料1万円を添えて、所属する都道府県医師会へ提出します。

  • 認定産業医新規申請書(都道府県医師会に用意)
  • 医師免許証のコピー(医師会員は不要)
  • 産業医学研修手帳または修了認定書のコピー

提出後、都道府県医師会長が申請内容を審査し、日本医師会長に推薦します。その後、日本医師会長が最終的な審査を行い、認定証が交付されます。登録の有効期間は5年間で、5年ごとに更新が必要です。

登録された医師は、住所など登録内容に変更が生じた場合、速やかに移動先の都道府県医師会を通じて、日本医師会へ届け出る必要があります。更新時期が近づくと案内通知が郵送されますが、登録情報の変更が行われていない場合、通知が届かない可能性があるため注意が必要です。

また、都道府県間で勤務先が変わった場合も、速やかに変更手続きを行うことが求められます。

産業医は5年ごとの更新が必要

産業医としての資格は、取得後5年ごとに更新が義務付けられています。更新を怠った場合、産業医としての活動が継続できなくなるため注意が必要です。

認定産業医制度が社会的に活用され続けるためには、常にその資質を維持・向上させることが求められており、生涯研修の受講が更新の条件となります。産業医学に関する知識のアップデートを通じて、産業医は最新の労働衛生法規や実務に対応することが可能です。

生涯研修会の開催

日本医師会や各都道府県医師会、郡市区医師会、教育機関などで生涯研修会が定期的に開催されます。これにより、認定産業医は20単位以上を取得し、更新に必要な研修を受けることが可能です。

なお、日本医師会の産業医学講習会を修了すると、労働衛生コンサルタントの筆記試験が一部免除されます。

生涯研修の内容

更新には、以下の内容で20単位以上の研修が必要です。

  • 更新研修(1単位以上):労働衛生法規や関係通達の改正点など
  • 実地研修(1単位以上):職場巡視や作業環境測定の実務的な研修
  • 専門研修(1単位以上):地域特性を考慮した実務的・専門的な研修

研修は日本医師会や各都道府県医師会、都市区医師会、教育機関などで定期的に開催されています。

資格更新手続き

資格の更新には、生涯研修の20単位以上を修得し、5年ごとの更新手続きを行う必要があります。更新申請の際には、必要書類を日本医師会に提出し、審査を経て更新されます。申請手続きに関する詳細は、地区医師会や日本医師会のウェブサイトで確認できるので、そちらを参考にしてください。

産業医としてのキャリアを目指し、企業の健康経営を実現しよう

産業医として活動することは、従来の診療業務とは異なる新しいフィールドでの医療専門職としての活躍の機会となります。職場における健康管理やメンタルヘルスの支援など、予防医学の視点から働く人々の健康を守る重要な役割を担うことができます。

資格要件を正しく理解し、計画的に研修を受講することで、企業内産業医としてのキャリアはもちろん、労働衛生コンサルタントや公衆衛生分野での専門職としてのキャリア形成も可能です。また産業医としての経験は、公衆衛生や予防医学の実践的な知識を深める貴重な機会となるでしょう。

弊社では産業医としてご就業いただける先生方をさがしております。専門コーディネーターがフルサポートいたしますので、ご興味がおありの方はぜひお問い合わせください。

産業医の皆様はこちら

産業医選任サポートのご案内はこちらをご覧ください。産業医選任サポートのご案内はこちらをご覧ください。

  産業医に関するお問い合わせはこちら 産業医に関するお問い合わせはこちら