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虚血性心疾患と脳卒中~働く世代のための予防と対策~


心電図と手の写真

はじめに

現代社会における働く世代の健康は、多くの要因によって左右されます。特に日本人の死因の上位である心疾患と脳卒中は、働く世代にとって無視できない健康リスクです。これらの病気は、生活習慣やストレス、職場環境などと密接に関連しており、予防と早期の対策が重要です。今回のコラムでは、これらの病気の原因や予防とその対策について解説します。

目次

1.虚血性心疾患について

2.脳卒中について

3.虚血性心疾患と脳卒中のリスク要因について

4.予防策

5.職場での取組みについて

6.まとめ


1. 虚血性心疾患について

 虚血性心疾患は、心臓への血液供給が不足することによって引き起こされる疾患で狭心症や心筋梗塞などが代表的な疾患です。虚血性心疾患は通常、心臓の血管(冠動脈)の狭窄や、閉塞した時などに起こります。主な原因は動脈硬化で、動脈の壁にプラークが形成されることにより血流が妨げられます。

 狭心症の主な症状には、胸痛や胸部圧迫感、息切れなどがあり、それらの症状が繰り返し起こることがありますが、数分以内におさまる場合がほとんどです。
 心筋梗塞は、胸に激痛の発作が起こり、呼吸困難、激しい脈の乱れ、吐き気、冷や汗や顔面蒼白といった症状を伴うことがあります。痛みは20分から数時間にわたることもあります。激痛は胸だけでなく、胃のあたりや腕、肩などにも起こることがあり、突然死の危険があります。

 虚血性心疾患の診断は、心電図検査、超音波検査、CT検査、冠動脈造影検査などに基づいて行われます。治療には、薬物療法、PTCA(経皮的冠動脈形成術)やステント留置術、冠動脈バイパス手術、生活習慣の改善などがあります。

2. 脳卒中について

 脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞と脳の血管が破れる脳出血、くも膜下出血があります。いずれも高血圧が最大の原因です。
 高血圧が長く続くと動脈硬化が進行し、その結果脳の血管が詰まって脳梗塞を引き起こしやすくなります。高血圧の程度が強い場合、脳の血管が破れて脳出血を引き起こしたり、脳の血管の一部分に動脈瘤ができて破裂し、くも膜下出血を引き起こしたりする場合があります。

 脳卒中の症状には、急激な頭痛、片側の麻痺や感覚喪失、言語障害、視覚障害、平衡感覚の喪失などがあります。これらの症状は突然発生し、脳のどの部分が影響を受けているかによって異なります。

 診断には、CTスキャンやMRI、血液検査などが用いられます。
 治療は状態や重症度によって異なり、薬物療法、手術、リハビリテーションなどがあります。

3.心疾患と脳卒中のリスク要因

 働く世代は、長時間労働、ストレス、不規則な生活習慣などにより、これらの病気のリスクが高くなります。特に、デスクワークや高ストレスの職場では、運動不足や不健康な食生活が見られがちです。また、喫煙や睡眠不足、過度のアルコール摂取も健康に悪影響を及ぼします。高血圧や糖尿病、脂質異常など生活習慣病も大きなリスク要因と言えます。

4.予防策

(1)生活習慣の改善

〈バランスの取れた食事〉
 野菜、果物、全粒穀物の摂取を意識的に心がけ、脂質や糖質の取り過ぎに気を付けましょう。仕事の都合で外食が多くなりがちな方は、できるだけ栄養バランスの良いメニューの選択と適量の食事摂取を心がけましょう。

〈定期的な運動習慣〉
 週に数回、30分以上の有酸素運動を心がけましょう。ジムに通う時間がない場合でも、通勤時に歩く、階段を利用する、休憩時間に短い散歩をするなど、日常生活に運動を取り入れることができます。

〈禁煙〉
 喫煙はこれらの病気の大きなリスク要因です。禁煙は心臓病や脳卒中のリスクを大幅に減少させます。

〈体重管理〉
 肥満は生活習慣病の原因や心疾患・脳卒中悪化のリスク要因となります。定期的な体重測定し、必要に応じて食事や運動の調整し、体重管理を心がけましょう。

〈睡眠と休養〉
 十分な睡眠と休息を取ることが重要です。睡眠不足は心血管系の健康に悪影響を及ぼすため、7〜8時間の質の良い睡眠を目指しましょう。

〈リラクゼーション〉
 深呼吸やストレッチ、ヨガ、趣味などを通じてストレスを軽減しましょう。ストレスは高血圧や心疾患のリスクを高めるため、積極的にリラックスする時間を作ることが大切です。

〈時間管理〉
 仕事とプライベートのバランスを保ちましょう。過度の残業や休日出勤は避け、自分の時間を大切にすることが重要です。

(2)定期健康診断結果の活用
 健康診断の結果、高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病に関して、異常を指摘された方は、主治医や産業医の指示に従い、通院治療や食生活、運動習慣の改善を心がけましょう。

5.職場での取り組みについて

(1)健康診断事後措置の徹底
 職場の労務管理の担当者は、産業医より就労判定時に要受診の指示のあった従業員が、確実に受診できているか確認することが大切です。もし高血圧などで要治療の判定があり、未受診の従業員がいる場合は、必要に応じて勤務の調整などを行い、受診勧奨を行いましょう。健診事後措置は、産業医や産業看護職、産業保健スタッフと連携し、職場の状況に合わせて実践することが重要です。

(2)健康に関する研修やイベントの実施
 従業員に対する健康教育やウォーキングラリーや運動会などスポーツイベントを行うことで、ヘルスリテラシーの向上や健康増進に対する意識醸成をはかることも疾病予防に有効です。

6.おわりに

虚血性心疾患と脳卒中は、働く世代にとって無視できない健康リスクです。しかし、生活習慣の改善、ストレス管理、定期健康診断の活用によって、これらの病気のリスクを大幅に減らすことが可能です。健康は仕事の効率や生活の質に直結します。日々の小さな努力が、長期的な健康と幸福につながります。
 虚血性心疾患や脳卒中の予防は、単なる健康管理ではなく、より豊かな人生を送るためのステップとして大切です。
 最後に、何か心配な症状がある場合には、早めに医療機関を受診してください。健康診断結果や生活習慣改善の取組みについては、企業の産業医や産業看護職に相談することも可能です。ご自身の体を大切にして、健やかな毎日をお過ごしください。

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