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従業員の休職に産業医面談が重要な理由|復帰までのプロセスも解説


職場で休職者が出た際の対応として、産業医面談があります。しかし、休職者が出た場合の対応や、産業医面談の進め方がよくわからないという方は多いのではないでしょうか。

この記事では、従業員の休職において、産業医面談が必要な理由や、休職から復帰までのプロセス・産業医面談のタイミングを解説します。すでに産業医を設置している企業の担当者も、休職者の対応について改めて確認してみてください。

目次

  1. 休職制度は就業規則の中で定めておく
  2. 休職の種類
  3. 休職において産業医面談が必要な理由
  4. 休職から復職までの5つのプロセスと産業医面談のタイミング
  5. 産業医がいない場合の休職者への対処法
  6. まとめ:産業医面談の体制を構築して休職者の健康を守ろう
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1.休職制度は就業規則の中で定めておく

休職制度は、労務に従事させることが不能又は不適当な事由が生じた場合に、使用者 がその従業員に対し労働契約関係そのものは維持させながら、労務への従事を免除すること又は禁止する制度のことをいいます。 休職制度について労働基準法等で定義されてはいませんが、使用者は、休職に関する定めをする場合は労働契約の 締結に際し、従業員に「休職に関する事項」を明示しなければならないという決まりがあります。【労働基準法第 15 条第 1 項、同 法施行規則第5 条第1 項第11 号】。そのため、休職制度を構築する場合は、就業規則の中で定めておく必要があります。

従業員の休職でトラブルに発展しないよう、まずは自社の就業規則の確認・見直しが重要です。

2.休職の種類

休職の種類は、以下の6つが挙げられます。

休職の種類内容休職の期間 (例)
私傷病(療養)業務外の傷病の理由により労務が提供出来ない時1ヶ月〜1年6ヶ月
事故欠勤休職傷病以外の私的な事故を理由とする事故欠勤休職
出向休職会社の命令で関係会社に勤務させる時出向期間会社が必要と認めた期間
刑事休職刑事事件に関し、起訴または勾留された時犯罪容疑その他で出勤が不適当とされた時未決期間会社が必要と認めた期間
公職休職公職のため長期にわたって業務に支障がある場合公務についている期間会社が必要と認めた期間
特別休職特別な事情があり、会社が休職を認めた時会社が必要と認めた期間

近年、長時間労働や過重労働などを理由としたメンタルヘルス不調による休職が問題になっています。

厚生労働省の令和3年労働安全衛生調査によると、令和2年11月1日から令和3年10月31日までの期間に、メンタルヘルス不調のため連続1ヶ月以上休職または退職した従業員がいた事業所の割合は、10.1%との結果が出ています。

令和2年度(調査期間は令和元年11月1日~令和2年10月31日)の調査結果は9.2%であり、メンタルヘルス不調による休職・離職者は増加傾向にあります。従業員(従業員)が元気に活躍し続けててもらうためのサポートを企業が行うことは不可欠でしょう。

参照:厚生労働省 令和3年労働安全衛生調査

3.休職において産業医面談が必要な理由

休職において産業医面談が必要な理由として、以下3つが挙げられます。

  • 休職すべきか事業主に助言するため
  • 休職時の心身の状態を把握しておくため
  • 休職中の健康管理について指導するため

ここからは、休職の中でも最も多い、私傷病(療養)休職の場合の産業医面談に絞って解説していきます。

休職すべきか事業主に助言するため

従業員が休職を申し出た場合や、主治医からの診断書を持参した場合、産業医は面談を通じて休職が適正かどうか判断することが求められます

産業医は従業員の心身の状態を考慮して、休職すべきかどうかを考えます。場合によっては休職の判断だけではなく、他の従業員の不調者発生を防ぐためにも労働環境の改善等や労働制限を設けるといった事業者への助言を行ってもらうと良いでしょう。

産業医は必要に応じて休職中にも面談を行うこともありますが、基本的には主治医の診断の方針に基づき、休職延長や復職への準備開始のタイミングを判断します。誤った判断による休職命令や復職命令をした場合は、従業員と事業者のトラブルにつながるリスクがあり注意しなければなりません。

心身の状態を把握するため

産業医面談は、休職時や休職中の病状を把握するために行われます

休職前に産業医面談で状態や症状を把握しておくことで、復帰に向けた面談をする際、比較を行うことができるので有益です。また、休職中の病状を把握しておけば、早急な復職判断によるトラブル回避にもつながるでしょう。

従業員が安心して療養に入れることやスムーズに復職を促す上でも産業医面談は重要だと言えます。

休職中の健康管理について指導するため

休職中の過ごし方について、産業医面談で指導することも求められます

休職中の過ごし方は基本的に主治医から指導を受けることが多いものですが、合わせて産業医からも助言を求めると良いでしょう。

休職中の健康管理や生活の仕方・過ごし方などは、働く人の健康を支援する専門的な立場である産業医から指導してもらいましょう。

メンタルヘルスサポートのご案内はこちらをご覧ください。メンタルヘルスサポートのご案内はこちらをご覧ください。

4.休職から復職までの5つのプロセスと産業医面談のタイミング

厚生労働省の「心の健康問題により休業した従業員の職場復帰支援の手引き」によると、休職から職場復帰までのプロセスは以下の5つの流れとなります。

  1. 病気休職開始および休職中
  2. 主治医による職場復帰の判断
  3. 職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成
  4. 最終的な職場復帰の決定
  5. 職場復帰後のフォロー

休職中の従業員が円滑に職場復帰し、業務遂行できるようにするため、休職から復職までのプロセスを把握しておきましょう。

事業者は休職から復職までのプロセスにおいて、適切なタイミングで産業医の助言を受け、復職支援プログラムを策定・実施する必要があります。以下、それぞれのステップについて解説します。

参照:厚生労働省の「心の健康問題により休業した従業員の職場復帰支援の手引き

病気休職開始および休職中

まずは、従業員が休職するかを事業主が決定します。最終的な休職決定は事業場側で行いますが、産業医がいる場合は面談を行い、休職の必要性を助言してもらいましょう

休職の必要性を認めた場合、休職開始に伴う事務手続き、職場復帰支援の手順、休職の給与手続き、などの情報提供を行います。

休職中のサポート方法

休職中、回復の経過を把握するために、月に1回程度の産業医面談を行います。面談では回復の経過を把握し、休職延長・職場復帰判断や、休職中の健康管理を産業医からアドバイスします。

傷病によって休職している従業員は、事業場から長期間離れることで不安な気持ちになる場合があります。1ヶ月に1回人事担当者や上司から連絡をして休職中の状況を確認したり、定期的に社内報を送ったりするなどのフォローが大切です。

例えば、主治医の診断書の提出が1か月ごとに提出される場合には、「療養延長」の診断書が届いたあとに、「最近、どうですか?」とご状況をお伺いする連絡をとると、定期的な連絡が無理なく可能になります。

とはいえ、必要以上に連絡が多いとかえってストレスを溜めてしまいます。休職前に、会社からの連絡の頻度を伝えておくと良いでしょう。

主治医による職場復帰の判断

休職中の従業員から職場復帰の意思の申し出があった場合、事業者は従業員に対し、主治医による職場復帰診断書の提出を求めます

休職時と同様、主治医は日常生活における病状回復によって職場復帰を許可する場合ケースもあります。そのため、産業医の意見も取り入れて、最終的に事業主が復職の決定を判断することが求められます。

職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成

最終的な職場復帰の決定を行うのは、事業者です。職場復帰決定する前段階として、必要な情報を収集し産業医が職場復帰の判断が行いやすいよう情報提供します。情報収集の内容は以下の通りです。

  • 従業員の職場復帰への意思
  • 主治医からの職場復帰可能の診断書
  • 従業員の生活リズムや症状の状態
  • 休職期間どのように過ごしていたか、復帰に向けた準備状況等
  • 職場復帰する職場の環境(繁忙状況や上司の受け入れ準備等)
  • 家族の支援状況など

上記の情報を収集し、職場復帰の可否を判断すべく、産業医面談を行いましょう。

産業医面談は、復職の意思確認、休職中の生活、身体・精神状態、業務遂行能力、職場環境などを総合的に助言する機会です。産業医は、事業主に復職が可能かどうか、復帰後の業務配慮や勤務制限内容等を記述した意見書を提出します。なお、職場復帰の判断基準は、厳密に定めておくことが重要です。休職中の従業員は治ったつもりでも、十分に復帰準備が整っていないと、休職延長となり復帰できないケースがあります。

職場復帰が可能と判断されたら、事業場内の産業保健スタッフや人事担当者が中心となり、管理監督者、休職中の従業員と連携して進めると良いでしょう。

職場復帰支援プランは、以下の項目について検討して作成します。

  • 職場復帰日
  • 管理監督者による就業上の配慮
  • 配置転換など労務管理上の対応
  • 産業医などによる意見
  • フォローアップ
  • 試し出勤制度の利用など

職場復帰後のフォロー

職場復帰後は、事業場内の産業保健スタッフなどによるフォローアップ、職場復帰支援プランの評価・見直しを行います。復職後は月に1回程度の産業医面談を行い、病状の悪化はないか、再休職のリスクはないか、職場環境に問題はないかを産業医に意見を求めます。それを参考に人事担当者が就業上の配慮の程度や勤務制限の緩和や解除を判断します

職場復帰後の就業の適応状況に併せて、段階的に通常の労働負荷に戻したり、出張や時間外勤務の制限を緩和をしたり、従業員の状況に合わせた配慮が必要です。

5.産業医がいない場合の休職者への対処法

事業場に産業医がいない場合の対処法には、以下3つが挙げられます。

  • 主治医との相談を促す
  • 社外の相談窓口を活用する
  • 産業医選任サービスを活用する

50人未満の事業場では産業医の選任が義務付けられていません。しかし、産業医がいなくても企業は休職者に適切な対応をすることが求められます。

主治医との相談を促す

事業場に産業医がいない場合、まずは主治医と相談してもらうよう人事担当者から促してみると良いでしょう。

かかりつけ医であれば一から関係を築く必要がなく、精神的な負担も軽減できます。休職までの経過を把握しているため、病状への理解が得られやすいはずです。また、ストレスによるメンタルケアの方法や療養中の過ごし方など、具体的なアドバイスをもらえます。

ただし、産業医であれば、面談を通して労働環境や職場の状況に沿って従業員を支援できます。また、事業主にも意見書を提出できるため、より労働環境を保ちやすくなるでしょう。

社外の相談窓口を活用する

主治医との相談以外に、社外の相談窓口を活用する方法があります。地域の産業保健センターや労災病院勤労者メンタルヘルスセンターなどが活用できます。本人の同意を得たうえで人事担当者が産業医資格を持つ医師と面談を設定し、報告を受けるようにしましょう。

健康診断を実施している医療機関や、地域の医師会に相談するのも1つの方法です。一般の医師として診療している傍ら、産業医として活動している医師がいる場合があります。

産業医の紹介サービスを活用する

社外の相談窓口以外に、産業医の紹介サービスを活用する方法があります。

産業医の紹介サービスは、産業医の選任、産業保健活動の運営や事務業務などを行うサービスです。自社に合った産業医を選任できるため、従業員の健康を管理し安全推進できる上、復職のための面談や適切な支援も行えます。産業医の選任を進めたい方は利用を検討するのも1つの手段です。

6.まとめ:産業医面談の体制を構築して休職者の健康を守ろう

産業医面談は、従業員の休職中の健康管理や復職可否を助言するために行われます。面談によって、従業員の健康状態や病状の回復状況、業務遂行能力、職場環境を把握し、事業者へ適切な措置をとるよう意見書を提出します。

従業員が休職中にしっかり休養できるよう、産業医や産業保健スタッフと連携して、職場復帰支援を行うことが重要です。

産業医選任サポートサービスは、産業医の選任だけでなく、休職・復職に際して産業医面談体制の構築をサポートします。復職プログラム作成もサポートするため、業務効率化が図れるでしょう。また、コーディネーターによる産業医との連絡調整や各業者との連携サポートも行います。産業保健体制の整備・強化を目指す方は、気軽にお問い合わせください。

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