産業医面談は意味ない?メリットや面談の積極的な活用につながるポイントを解説
労働安全衛生法において、長時間労働者や高ストレス者などを対象とする産業医面談が定められており、その他にも健康診断結果や病気や怪我による休・復職時、また従業員からの希望時などに産業医面談が設定されます。産業医面談は、従業員が健康的な状態で働けるようサポートする目的で行われます。しかしながら、「従業員から産業医面談には意味がないと拒否される」「産業医面談は本当に意味があるのだろうか」という悩みを持つ方は多いのではないでしょうか。
産業医面談は、事業主としては実施する必要があるのですが、従業員は必ずしも面談を受ける必要はなく、断ることができるため強制はできません。しかし、従業員が断ったからといって対応せず放置していると、事業場は安全配慮義務を果たしていないとされる可能性があり、注意が必要です。
この記事では、従業員が産業医面談を希望しない理由・拒否した場合の対応について解説します。また、産業医面談の積極的な活用につながるポイントも解説します。
目次
- 従業員が産業医面談を希望しない(意味ないと感じる)理由
- 産業医との面談がもたらすメリット
- 従業員が産業医面談を拒否した場合の対処法
- 産業医面談の積極的な活用につながる4つのポイント
- まとめ:産業医や産業医面談についての理解を深め、面談を意味あるものにしよう
1.従業員が産業医面談を希望しない(意味ないと感じる)理由
従業員が産業医面談を希望しない理由には、大きく以下の3つが考えられます。
- 産業医の存在や役割、産業医面談の目的を理解していない
- 産業医面談をして自身の状況が変化しない
- 長時間労働の負担やストレス、不調の自覚がない
以下、1つずつ解説します。
産業医の存在や役割、産業医面談の目的を理解していないから
産業医面談を希望しない理由として、従業員が産業医について知らないことが挙げられます。
産業医という存在や役割を知らなければ、「面談」と言われても何を話すのか、話の内容が会社や上司に伝わるのではないか、評価に関係するのではないか、などど不安になったり、忙しい中で面談に時間が取れない、仕事を抜けられない、などという理由から面談を意味なしと感じ、希望しないケースがあります。
産業医面談をしても自身の状況が変化しないから
過去の産業医面談の経験などから、直接的な治療ではなく体調が改善しなかった、職場環境が変化しなかった、というネガティブな印象を持っている場合もあります。産業医面談の場では、すぐに何かが変化することは少なく、面談後も変化に時間を要することもあるため、そのような印象につながることがあります。
長時間労働の負担やストレス、不調の自覚がないから
長時間労働を負担に感じていない従業員や、ストレスチェックの結果が高ストレスと出ているにもかかわらず、自覚を持っていないケース、また周囲は不調に気付いていても本人の自覚が無いケースなどもあります。疲れやストレス、不調の自覚がない場合、「産業医面談を受ける意味がない」と感じてしまうかもしれません。
ストレスチェックを行った時期が1〜2ヶ月前で、現在体調が回復していれば面談を受ける意義を感じづらくなるため、面談を断るケースも考えられます。
2.産業医との面談がもたらすメリット
産業医面談によって、従業員と事業場には次のようなメリットがあります。
- 従業員の健康管理に役立つ
- 従業員が安心できる
- 職場環境の改善につながる
産業医との面談を希望しない従業員は、どのような恩恵があるかを知ることで、面談の意義を感じてもらえるかもしれません。
従業員の健康管理に役立つ
産業医面談は、従業員の健康管理に役立ちます。
面談では、健康診断結果、長時間労働、ストレスチェック結果、持病のサポートなど、法令や必要に応じて実施し従業員の健康状態の確認をします。産業医が適切な判断や助言をし、そしてフォローアップをすることで従業員自身の健康の維持や病気・怪我の防止、不調や疲労に気付くことでの早期対応につながり、休職や退職というリスクを回避することにもつながります。
また、従業員の健康を保てれば、企業として生産性が向上するはずです。
従業員が安心できる
従業員の安心感につながるのも、産業医面談のメリットです。
産業医は、社内で身近に相談できる存在であり、会社の状況や業務、職場環境などの現状を踏まえて面談を実施するので、従業員の困りごとや相談内容を理解しやすく、従業員にとって相談しやすいと言えます。産業医には守秘義務があり、社内の他の人に面談内容を知られることなく安心して相談することができます。
産業医面談を通じて、従業員が悩み事や問題を相談しやすい環境を作ることで、人事担当者や事業主への信頼感を持ってもらえるでしょう。
職場環境の改善につながる
産業医面談は、職場環境の改善につながります。
産業医面談を通じて、職場環境や勤務状況の共通課題が見えてくることもあり、産業医は必要に応じて事業場に職場環境の改善について意見を伝えます。
産業医の意見をもとに職場を整えることによってよりよい職場づくりができ、従業員にとっての働きやすさや生産性の向上、離職率の低下などにもつながります。
3.従業員が産業医面談を拒否した場合の対処法
産業医面談は従業員に強制できませんが、事業場の安全配慮義務を果たすためには、できる限り実施できるように調整することが必要です。
産業医面談を設定する際は、産業医の役割や面談の目的を明確にした上で、日程や場所の設定なども含め、従業員が希望しやすい状況にすることで面談へつながりやすくなります。
それでも、従業員が産業医面談を拒否した場合は、拒否する理由を確認し従業員が心配に思っていることなどに合わせて、産業医面談を後押しできるような対応をするとよいでしょう。
ここでは、従業員が産業医面談を拒否した場合の3つの対処法を解説します。
産業医面談の具体的な流れを説明する
産業医や面談に関して疑問や不安がある従業員には、改めて産業医面談の具体的な流れを説明しましょう。産業医面談の目的、面談で話す内容や所要時間、産業医の役割・立場を説明し理解を促します。この際、産業医には守秘義務があり、面談内容が職場や上司へは伝わらないこと、安心して相談ができることも改めて伝えるとよいでしょう。
産業医面談を受けるメリットを伝える
産業医面談の目的や効果を伝え、前向きに捉えてもらうことが大切です。専門家と一緒に心身の状態や働き方の確認をするいい機会になりますし、それが適切な受診や治療という従業員個人の対応だけでなく、働きやすい職場づくりなど組織の対応にもつながります。また、社内で気軽に相談できる存在がいることは、従業員にとっての安心材料であるはずです。
社外の相談窓口を案内する
労働者がどうしても産業医面談を拒否したり、産業医がいなかったりする場合、社外の相談窓口を案内するのも1つの方法です。
常時使用する労働者が50人未満の小規模事業場では、産業医がいない場合があります。地域産業保健推進センターなどを活用し、社外の相談窓口の機能を整えておくと良いでしょう。
社内報や健康保険組合の広報誌などを活用し、繰り返し定期的に伝えることも効果的な方法の1つです。
労働者の不調は、共に過ごす時間の長い家族が気付くケースがありますので、相談窓口について、労働者本人だけでなく家族へも周知しておくとよいでしょう。
4.産業医面談の積極的な活用につながる4つのポイント
産業医面談が積極的に活用されるためには、以下の4つのポイントを押さえておくことが大切です。
- 産業医の存在や役割、産業医面談について従業員に周知する
- 従業員への配慮を徹底する
- 面談結果を受け適切な対応をする
- 自社に合う産業医とマッチングする
ひとつずつ解説します。
産業医の存在や役割、産業医面談について従業員に周知する
産業医や産業医面談について従業員に周知し、理解を深めることがとても重要です。産業医は職場や業務のことを理解したうえで、従業員を適切な治療へ繋げるサポートや働き方のアドバイスも含めた健康管理、労働環境についてのアドバイスをする専門家であり、一般的な病院の医師や主治医とは役割が異なります。そのような役割や面談の目的、面談を行っても従業員にとって不利益にならないことを理解してもらうことで、積極的な利用を促すことにつながります。
また、産業医の顔や専門科、人となりなどが分かれば、従業員にとっては産業医をより身近に感じることができ、面談のハードルも低くなります。社内研修で産業医が従業員に健康に関する講義をしたり、社内報やパンフレットなどで産業医やその役割を紹介すると良いでしょう。
従業員への配慮を徹底する
産業医面談において、従業員への配慮を徹底することを念頭に置いておきましょう。
面談内容については守秘義務が守られることを明確にし、様々な状況にある従業員が面談を安心して受けやすくなるような連絡方法や日程・場所の設定など、仕組みを作ることも重要です。
面談結果を受け適切な対応をする
産業医面談は実施して終わりではなく、面談後の対策・実行が重要です。
産業医は、従業員についての就業上の配慮や職場環境改善の意見を事業主に対して伝えることができ、事業主はその意見を元に必要な対応や対策をとっていくことが大切です。
対応に時間を要する場合などは従業員から変化が分かりにくいこともあるため、対策を講じている(講じる予定である)ことを従業員へ伝えることで捉え方も変わるでしょう。
自社に合う産業医とマッチングする
自社のニーズに合わせて訪問や対応が可能な産業医であれば、面談も設定しやすくなります。また、社風を理解しコミュニケーションがとりやすい産業医だと、より効果的な面談につながるでしょう。
産業医はいても、労働安全衛生活動をよりよくしたい、充実させたい場合、産業医選任サポートサービスを活用するのも1つの手段です。産業医選任サポートサービスとは、企業に産業医を紹介するサービスです。多くのサービスで、事業場の規模や希望する契約形態をヒアリングした上で産業医を紹介してもらえます。「産業医がいなくて困っている」「自社に合う産業医を選任したい」という方は利用を検討してみましょう。
5.まとめ:産業医や産業医面談についての理解を深め、面談を意味あるものにしよう
産業医面談が積極的に活用されるには、まずは従業員に産業医の役割や面談の目的を周知し、理解を深めておく必要があります。また、面談を行うだけでなく、面談後も労働者一人ひとりへのきめ細かな対応、職場環境の改善が求められます。
従業員が悩み事や問題を相談しやすい環境を作り、それに対する会社の対応を知ることで、事業主への信頼感にもつながるでしょう。
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