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女性の健康リテラシー向上のポイント


 現在、多くの企業が「健康経営」に取り組んでいます。企業が経営戦略として従業員の健康管理に注力することで、従業員の生産性や活力が向上し、組織がより活性化し、業績と企業価値が高まります。従業員の健康支援は将来への投資として考えられており、なかでも最近多くの企業で注目されているのが女性の健康です。

今回は、特に重要な取り組みである女性の健康リテラシー※1向上のポイントについて人事目線でご紹介します。

目次

  1. なぜ女性の健康リテラシー向上が重要なのか
  2. 女性の健康は何から学ぶと良いか
  3. 女性の健康リテラシーを向上させる方法
  4. まとめ

1.なぜ女性の健康リテラシー向上が重要なのか

 日本では、学校で性差に基づく教育がほとんど行われてこなかったため、一般的に女性であっても女性特有の健康知識を十分に持っていません。女性の健康課題の多くはキャリア形成期と重なっています。健康課題とその対処方法を学ぶことは、仕事や生活のパフォーマンスを向上させ、キャリア形成にも良い影響を与えます。

 さらに、男性も学ぶことが推奨されます。なぜなら、男性が女性の健康について理解することで、職場の心理的安全性が向上し、相互理解と従業員エンゲージメントが増大するからです。例えば、生理や更年期などの女性ホルモンに関連して起きる現象は外から見て分かりにくいものです。そのため、経験しようがない男性※2にとっては理解が難しく、気づきにくいという背景があります。しかし、学ぶことで思いを巡らせることは可能です。わかるまではいかなくても、想像ができるということが大切な一歩となります。

以上のことから、女性の健康リテラシー向上は、次のような効果をもたらします。

 ①女性自身の仕事と生活のパフォーマンスの向上

 ②健康課題がライフキャリアの形成を阻害するリスクが低下

 ③職場の心理的安全性の向上、相互理解とエンゲージメントの増大

 ④人材の定着と採用への好影響※3

2.女性の健康リテラシーを学ぶうえでまず押さえるべき点はどこか

 女性特有の健康課題にはいわゆる生理や更年期のような生理現象も含まれます。これらの生理現象による不調は病気ではないから我慢しなければならないものという捉え方をされる場合があります。ですが、その不調には放置しておくと重い病気になったり不妊の原因になったりするリスクが潜んでいるかも知れません。個々の病気について詳細に学ばなくても、女性の健康課題について包括的に理解するだけも、これらのリスクをかなり減らすことができます。

女性ホルモンの影響を理解する

 女性は生涯にわたってホルモン量の変動の影響を強く受けます。女性ホルモンの量が短期的にも長期的にも変動することで身体と精神に様々な変化をもたらします。この変化は、女性の誰もが経験しますが、変化による影響には個人差が大きくあります。そして、年齢によっても健康課題は異なります。

 更に、不規則な生活や強いストレスなどがホルモンのバランスを崩して健康課題につながる場合があります。これらの健康課題は放置していると深刻な病気や不妊などにつながります。

 このような女性ホルモンによる身体への影響を、年齢層別に理解することが女性の健康リテラシー教育のはじめの一歩です。

対処方法を知る

女性特有の健康課題によるパフォーマンスの低下は適切に対処することで予防したり軽減したりすることができます。対処方法には、食、睡眠、運動などで改善できること、最近注目されている各種フェムテックの利用 、定期的な健診、かかりつけ医をもつことなど、たくさんあります。これらについても学べると良いでしょう。

 このような一般的な健康リテラシーを持った上で、様々なライフイベント(妊娠・出産・育児、女性特有の病気、家族の介護など)と仕事の両立を上手に図るための知識を学ぶことも、広義の意味での女性の健康リテラシーと言えます。

3.女性の健康リテラシー向上の方法

 女性の健康リテラシー向上には、次のような方法があります。

産業医や保健師などによる講義

 産業医や保健師などがいる事業場では、それらの産業保健スタッフに講義をしてもらう方法があります。

メリット:

  • 健康に関する専門性の高い講義を受けられる。
  • 計画から実施まで施策が進めやすい。
  • コストがあまりかからない。※4

デメリット:

  • 自社の産業保健スタッフが女性の健康について専門外である場合がある。
  • 産業医などの産業保健スタッフがいない事業場では実施が難しい。※5

健康動画の利用

 最近は様々な女性の健康動画を見つけることができます。自社の実情や目的に適うものを選ぶと良いでしょう。

メリット:

  • 多数の社員に対して比較的容易に、そして効率的に健康知識を提供できる。
  • 従業員が自分の働き方にあわせて視聴できる
  • 企業が提供する動画の多くは動画配信専用プラットフォームを利用して視聴履歴を取ることで学びの状況を確認できる。

デメリット:

  • 効果が受講者の視聴態度の影響を受ける。
  • 質疑応答ができない。
  • 一部のYouTubeなどで視聴できるものは視聴履歴が取れないので施策の評価が難しい。
  • ほとんどが女性視聴を前提に制作されているので、男性が興味を持って学べるものが少ない。

企業や団体が提供する研修

 ここ数年のうちに多くの企業や団体が女性の健康に関する研修を提供するようになりました。それぞれに特色がありますので、自社の実情と目的に適うものを選ぶことができます。

メリット:

  • 研修効果をあげるために企業独自の工夫がされている。
  • 自社の実情に合わせて設計したり改編したりできるものもある。
  • グループワークを取り入れた研修では、受講者の自分事化が促進されてより高い研修効果が期待できる。
  • 男性が女性の健康について学び、健康課題がある女性に対する適切な対処方法やコミュニケーションの取り方を学べるものもある。
  • 実施後アンケートや効果測定調査で効果を可視化してPDCAサイクルを回す中長期的な施策とすることができる。

デメリット:

  • 受講対象者の人数が多いと、複数回の開催になる場合がある。
  • 掛かる費用に幅がある。

4.まとめ

 女性の健康リテラシー向上は、女性のパフォーマンス向上に留まらず、社員全体の理解を通じた組織風土の改善、組織の活性化を生み出します。つまり、女性だけでなく、男性を含むすべての社員にとって働きやすい職場環境を形成することができます。自社の状況に合わせた実施方法を選択し、まずはスモールステップからでも取り組んでみてください。

※1 健康(ヘルス)リテラシーとは、健康に関連する情報を探して入手し、理解して、意思決定に活用し、適切な健康行動につなげる能力のこと。 (日本ヘルスリテラシー学会WEB)

※2 男性も男性ホルモンの減少によって更年期障害になる方がいます。ですが、女性ほど男性の誰もが経験するものではありません。

※3 ホームページなどで女性の健康リテラシーへの取り組みを掲載することで社員が働きやすい会社であることをアピールできます。

※4 契約内容次第で別途講習料を負担しなければならない場合があります。

※5 産業保健スタッフがいない場合は、産業保健総合支援センター(さんぽセンター)や産業保健の専門事業者に相談してください。

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(文/阿曽 泰三)
さんぎょうい株式会社/ソリューション事業部 mezame事業室 室長(健康経営エキスパートアドバイザー、女性の健康経営推進員 他)
国内外で多くの女性同僚や部下のキャリア形成に携わり、女性特有の健康、ライフイベント、キャリアに深い関心を寄せる。
また、二人の娘の親としても、女性の健康とライフキャリアに向き合っている。
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