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テレワーク時の「目の疲れ」気を付ける6つの「目の健康」について│眼科医解説


今回のコロナ禍でテレワークを初めて経験された方も多いと思います。 また経験者であってもこれほど長期間にわたりテレワークが続くとは予想していなかったのではないでしょうか。そんな中「以前より目が疲れやすくなった」「目の奥や首の後ろが痛い」など、目や目に関連した身体の不調を訴える方が多くなってるようです。 そこで、目に何が起きているのか、どのように対応すれば良いのか、を眼科医の立場からお話ししたいと思います。  

■目の健康を守る為に気を付ける「6つ」のポイント

【日々の業務】

  • ①パソコン作業の際には意識的に瞬きを多くするよう心がける

  • ②ディスプレイの位置は視線が下を向くように少し低めにする

  • ③マスクをする際はノーズフィッターを鼻に合わせて、鼻の周りに隙間ができないように調整する

【テレワーク時】

  • ④座面の高さを調節できる机や椅子を用意する

  • ⑤エアコンの風が直接顔にあたらないようにする

  • ⑥テレワークの際は部屋のカーテンやブラインドを利用して明るさを調節する

これらポイントについて、以下に解説いたします。

1)瞬き不足によるドライアイに注意しましょう

ソーシャルディスタンスの観点から、会議も今までの対面式からzoomなどを利用したオンライン会議に移行したため、必然的にパソコン画面を凝視する時間が長くなりました。パソコンやタブレット画面を見続けると瞬きの回数が減ることが知られています。 我々の目の表面は粘膜であり、特に角膜(黒目)の表面には常に涙の膜が形成され角膜を保湿・保護し、かつ平滑化してレンズのコーティング剤の様な役目を果たしています。瞬きはその涙の膜を交換・再生する重要な働きをしているのです。長時間のパソコン作業により瞬きが減ると、涙の膜が破綻し、角膜表面に乾燥による傷がついたり、コーティングの剥がれたレンズのように角膜の平滑さが損なわれてしまします。 瞬きが減ることで涙液分布の不均衡が起こり、いわゆるドライアイの状態になってしまうのです。ドライアイとは涙が枯れて乾いた状態だと思われる方が多いと思いますが、涙の分泌量が少なくならなくても涙の分布が不均衡なために生じるドライアイが最近多くなっており、パソコン作業による瞬きの減少はその主要な原因なのです。 角膜に傷がついてしまうと充血や流涙や痛み灼熱感が生じ目を開けているのが辛くなります。角膜の平滑さが損なわれると不整な乱視が生じてピントが合いにくくなり、それを補おうとピント合わせの筋肉が過剰に反応することで眼の疲れや後頭部痛が生じるきっかけになります。 角膜の傷は適切な点眼薬により治療することができますが、まずは予防が大切です。パソコン作業の際には意識的に瞬きを多くするよう心がけることが最も簡便かつ重要です。またディスプレイの位置は視線が下を向くように少し低めにするのも良いでしょう(視線が上に向くとまぶたの開きが大きくなりドライアイになりやすくなります)。 ちなみに、自宅やサテライトオフィスでは家族や他の利用者に配慮してマスクをしたまま仕事をすることもあるかと思います。マスクの上端(鼻の両脇)から息が漏れると、その気流が角膜にあたりドライアイ症状を悪化させるとの報告もあります。 必ずノーズフィッターを鼻に合わせて曲げ、鼻の周りに隙間ができないように調整してマスクを使うことも重要です。

2)自宅のパソコン周りの環境を見直しましょう

オフィスにおけるパソコン作業環境については厚生労働省によるガイドラインがあり、それに準じた労働衛生管理を行うよう指導されています。机と椅子の高さ関係であったり、部屋の明るさであったりが定められています。初めて制定されたのが昭和60年でこの頃はブラウン管ディスプレイのデスクトップパソコンを対象にしたものでした。 その後ノートパソコンの普及に伴い平成14年に改定があり、タブレットなど情報端末の多様化に合わせて令和元年にも改定がありました。詳しくはhttps://www.mhlw.go.jp/content/000539604.pdfをご参照ください。この中にはテレワークについても短いですが言及があり、オフィスと同等の作業環境になるよう助言することが望ましいと書かれています。 現実はどうでしょうか?リビングや台所のテーブルにノートパソコンを置いて作業していることが多いのではないかと思います。それだと長時間の作業では腰や肩に負担がかかります。座面の高さを調節できる机や椅子を用意したいものです。 また部屋の採光もオフィスとは異なるでしょう。窓からの太陽光は画面のギラつきや眩しさを生じ、眩しさは眼精疲労や頭痛の原因になりえます。適宜カーテンやブラインドを利用して明るさを調節しましょう。 エアコンの風は、ドライアイ悪化の要因にもなりますので直接顔に当たらないよう調整してみてください。 コロナ禍のテレワークがいつまで続くか今はまだ誰にもわかりません。ウィズコロナ時代に向けてもう一度自宅のパソコン作業環境を確認してみましょう。 一方企業側には、個々のテレワークがどのような環境で行われているかアンケートなどで積極的に調査を行い、目の健康に配慮した適切な指導を行う姿勢が求められていると思います。    
(文/眼科医 田口 朗(たぐち ほがら))
育生會山口医院 院長(眼科) 日本眼科学会専門医、専門は眼科手術と神経眼科。1990年東北大学医学部卒。 京都大学大学院・ハーバード大学眼科にて網膜疾患について研究後、高松および大阪赤十字病院眼科副部長、栃木医療センター眼科医長を経て2018年より現職。 育生會山口医院:http://www.yamaguchi-hp.com/
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