お知らせ

五月病とは?症状の原因・なりやすい人への企業の対策方法|臨床心理士

  • 更新日:2022年04月21日

  • 公開日:2022年04月21日

  • ブログ

5月病とは? 症状の原因となりやすい従業員への企業の対策方法について ~精神科心理士 解説~ (1).png

変化が多いこの時期、いわゆる5月病でメンタルヘルス不調に至る場合があります。
貴重な人材を守るためにも、5月病とその背景を知り、有効な対策が必要です。
従業員が新しい環境にうまく適応できるよう

目次

  1. 5月病とその背景
  2. 5月病の治療
  3. 企業が行うべき適応支援とは
  4. さいごに

1.5月病とその背景

「5月病」とは?

5月病とは、新入社員や異動した社員など、大きな環境の変化を迎えた人(いわゆるニューカマー)が、ゴールデンウィーク明けくらいの時期に気分の落ち込みや意欲の低下などにより仕事に影響が出るような状態を言います。
他にも、気分の不安定さ、不眠、食欲不振(増大)、疲れやすさなどがあります。正式な医学用語ではありません。

程度も様々で、仕事への大きな支障がない状態から、仕事が手につかない、出勤できないなどの深刻な状態までみられます。

程度によっては治療が必要ですが、治療を受けずにいたりやる気がないと本人を責めたりすると、症状が重くなったり、うつ病などのより深刻な精神疾患を発症することがあります。

「5月病」の原因や背景・なりやすい人とは?

「5月病」の原因や背景・なりやすい人とは?

5月病のひとつのきっかけはゴールデンウィークにあります。

新入社員などのニューカマーが初めての環境で過度に緊張しながら必死に職場に慣れようとしたり仕事で成果を出そうとしたり頑張り続けることにより、大型連休が張りつめた緊張の糸を切るきっかけになることがあります。
そうなると、それまで緊張の作用でフタをしていた症状が一気に表に出ることになります

しかし、ゴールデンウィークはあくまできっかけのひとつに過ぎません。緊張状態で頑張り続けることは、通常1ヶ月くらいが限度と言われています。そのため、ゴールデンウィークがなかったとしても年度の頭から無理を続けると5月半ばくらいには力尽きる可能性が大きいということになります。

慣れない環境に身を置くと、人はその環境に適応しようとします。

その過程では、普段よりもアンテナを大きく広げ、物事に集中し、膨大な新しい情報を脳内で処理している状態であり、周囲の刺激に過敏で、自然と首や肩、背中や腰に力が入った状態になります。
これを緊張状態と呼びます。普段よりも疲労しやすいうえ、継続すると疲労は回復しづらく蓄積します。これは、そのような新しい環境において誰にでも多かれ少なかれ起こる現象です。

「5月病」の本質は?

いつもの自分を取り戻すまで、つまり適応できるまで、概ね3~6カ月を要します。

適応の早さやつまずくかどうかは、本人側の要因と環境側の要因があります。本人側としては楽観的、悲観的などの物事の捉え方、これまでの経験や価値観、柔軟さ、コミュニケーションの上手さ、気分転換やリラックスなどのセルフケアを行えているかどうかなどが影響します。
環境側の要因として、その部署の忙しさや雰囲気、フォローする文化や体制の有無などがあります。

ここまで見てきた通り、いわゆる5月病には、次の3つの段階があります。

  • ①新たな環境に身を置くことで大きな変化や急激な負荷の増大を経験している
  • ②疲労を抑え込み、無理をして頑張り続けている
  • ③ゴールデンウィークという大型連休で気が弛み、抑えていた疲労が症状として表に出る

ここから、5月病に至る仕組みとして、働き方の問題があることが窺えます。無理をしていることに本人としても無自覚な場合があり、本人の力ではどうしようもない状況もあります。

5月病の場合は、単に適応につまずいた結果症状が出たというわけではなく、その本質は適応困難な状況において「過度な頑張りの継続」と「大型連休をきっかけとした症状の噴出」にあると言えます。

2.5月病の治療

5月病とその背景

「5月病」の具体的な症状は?

 5月病のように、新しい環境や過度な負荷など適応困難な状況が明確にあり、それに反応する形で症状が出るような状態は、適応障害と診断される場合があります。

もちろん、医師が診断をする際には様々な観点から慎重に検討するため、明らかに5月病と思われても、必ずしも適応障害と診断されるとは限りません。

その背景にベースとなる別の疾患があったり、それをきっかけに他の精神疾患が発症したりしていることも十分考えられます。ここでは、一つの典型的なパターンとして、適応障害を取り上げます。

職場において適応障害という診断名は比較的耳にすると思いますが、改めてこの疾患についておさらいしましょう。まず、適応障害を診断、治療する診療科は精神科・心療内科です。主に精神科医が主治医となります。

具体的な症状としてよくみられるのは、

5月病の自覚症状

  • 抑うつ気分
  • 意欲の低下
  • 注意力・判断力の低下
  • 不安、焦り、イライラ
  • 過度な緊張
  • 不眠
  • 食欲不振(過多)
  • 動悸
  • めまい           ......などです。

【5月病の他覚症状】

仕事上の支障として出やすいのは、

  • 提出が遅れる
  • ミスが増える
  • 対人関係トラブルを起こす
  • 遅刻や欠勤など勤怠が乱れる  ......などです

これらの症状がどの程度の期間、どの程度仕事や生活に影響するか、他の疾患の可能性などを加味して診断がなされます。

もしも従業員が適応障害と診断された場合には?

医療機関で適応障害と診断された際には、薬物療法や環境調整などの治療が行われます。

程度によっては自宅療養などの休養期間を設けることもあります。
また、発症の背景を認識したり再発予防の手段を得たりするために臨床心理士等によるカウンセリングを行うこともあります。
通院の期間としては、早期に治療することができれば数週間~2,3カ月で、重い症状の場合は数カ月から半年くらいを目安としてもらえると良いと思います。

診断基準にもあった通り、ストレスイベントがなくなれば6カ月以内に症状がなくなるのが適応障害です。

企業としての対応方法

 会社としては、治療が滞りなく進むように経過を確認したり、自己判断で治療を中断していないか確認したりするなどのフォローアップがあると良いでしょう。
業務上の配慮については、産業医に意見をもらいましょう。

また、産業医を通して、あるいは(本人と主治医了解のもと)診察に同席するなどして主治医の意見を参考にするのも有用です。

回復に向けて、また同じような高負荷な状況になっても今度は発症しないという自信を本人が持てるようになることが必要な場合もあります。

5月病の本質のところでみたように、無理を続けたことが大きな要因であるなら、

  • 疲れを自覚する
  • メリハリをつけて適度な休養を取る
  • 人に頼るべきところは上手に頼る
  • 早めに上司に相談する
  • 緊張を緩和するためのリラクセーション技法を習得する...など

上記の様な対処を身に着けることが、そういった自信につながります。

一人で抱え込まないために周囲に頼ることなどについて、上司の指導で習得できる部分もあるため、目標設定に取り入れるのが良いでしょう。

上司として、適応障害で通院していたことは触れない方がいいのではと不安になる方もいるかもしれませんが、むしろ発症した経験をいかして、今後はより上手にセルフマネジメントができるよう、成長につながる指導を行うことが本人の回復をより確かなものにします。

3.企業が行うべき適応支援とは

5月病を避けるには、『①環境作りと②早期発見・早期対応』が必要です。

①環境作り

①環境作り

 筆者が経験する多くの事例において、入社や異動後にメンタルヘルス不調に至る背景に「抱え込み」があります。業務上で困ったこと、悩むこと、わからないことを誰にも訊けずに抱え込んでしまい、自分を追い詰めていくのです。

上司や同僚からすると、もっと早くに相談してくれたら教えたのにという感覚になりますが、往々にして相談する立場側はそのハードルを相談される側よりも高く感じるものです。
慣れてきたら自分から積極的に上手に相談ができるようになることを目標に教育していくことは大事ですが、慣れるまで(概ね半年)は職場側の複数のメンバー(上司と年の近い先輩など)から定期的に声をかけましょう。

その際に、「問題ない?」「困ってない?」「大丈夫?」といった声かけは避けるようにします。それらの質問には、本当は困っていても反射的に「はい」と答えて会話を終わらせてしまう結果につながりやすいからです。

そのため、「今一番困っていることは?」「今までの取り組みで何が一番問題になりやすい?」「何か私にできることがありそうだけど、どういうサポートがあったら良いと思う?」など、YESで答えられない質問を工夫して困りごとを引き出すようにしましょう。

②早期発見・早期対応

②早期発見・早期対応

不調に陥りかけている従業員を早期発見し、適切な形で早期対応を行うことで5月病や唐突なメンタルダウンをある程度防ぐことができます。早期発見はわかりやすい場合から、発見が難しい場合まで様々ですが、各職場の管理監督者が、部下のわずかなサインを逃さずキャッチし、健康配慮を行う努力が必要です。

メンタルヘルスの不調のサインを見逃さずキャッチし、適切に対応できるようになるには、知識とスキルが必要です。安全配慮義務を履行し、5月病等を予防することで大切な従業員を不調から守るためには、管理監督者を教育して知識とスキルを身に着けさせることが有効です。

これは、2000年に発表され、その後改訂を重ねている「労働者の心の健康の保持増進のための指針」にも「ラインケア」という名称で示されています。同指針によると「ラインケア」とは、管理監督者が、職場環境の問題点の把握と改善、部下の不調への気づき、声掛け、相談対応、職場復帰支援等を行うことです。
さて、管理監督者がラインケアを適切に実行できるようになるための教育手段として、社内外での研修、e―ラーニングや資料配布などによる情報提供があります。

やはり効果が高いのが社内で実施する研修です。
社内の課題を反映させた模擬事例を用いた参加者同士のディスカッションを通して、単に知識だけではなく経験の共有や他部署の状況が把握できるなど、一方的な知識の吸収では得られない体験が可能です。
実際、基礎編、発展編、実践編などで教育研修を重ねた企業では早期発見・早期対応できるケースが徐々に増えていきます。
ラインケアは管理監督者で完結するのではありません。筆者がラインケア研修で毎回必ず「一人で抱えないでください。みんなで一緒に対応していきましょう」と強調しています。

社内で実施する研修のメリットの一つとして、
人事総務などのメンタルヘルス担当者がメンタルヘルスに関する社内窓口であることを講師からアピールできることです。社内のメンタルヘルス体制の成熟度の指標のひとつに「マネジメントリファラル」があります。

つまり、ラインケアの一環として、早期発見した従業員の対応につい担当者への相談が増え、産業医面談のアレンジなどが管理監督者の活躍によって増えていくのです。メンタルヘルス担当者としても社内のメンタルヘルス不調やその背景となる職場の状況を早期に把握することができ、管理監督者と一緒に、より適切な対応が取りやすくなります。

4.さいごに

環境の変化が5月病を招きます。そういうタイミングだからこそ、規則正しい生活(睡眠・バランスの取れた食事・適度な運動)が重要です。どんなに忙しくても昼休憩はしっかり取り、栄養バランスの取れた昼食を取れる雰囲気づくりを進めましょう。

理想として、自然と職場の仲間同士で声をかけあい、助け合い、支え合う職場が5月病を防いでくれるのだと思います。とはいえ、現実にはそれぞれ忙しさや複雑な事情を抱えているため、なかなか理想通りにいきません。職場の声や専門家の意見も取り入れつつ、積極的な姿勢で仕組みを作り、社内の全ての職場で健全な関わり合いが増えるような施策を打っていきたいものです。

なお、本ブログで取り上げた5月病と適応支援について、「月刊総務」5月号にて11ページに渡り執筆しています。発売日以降に下記サイトからバックナンバーの購入が可能です。

月刊総務マーケット 「月刊総務」2022年5月号
https://www.g-soumu.com/products/articles/202205

(文/佐倉 健史)
神田東クリニック/MPSセンター 相談事業推進部マネージャー (臨床心理士・公認心理師・メンタルヘルス法務主任者)
大学院で臨床心理学を研究するかたわら、日本の労働者のメンタルヘルス問題において日本をリードする故・島悟氏に師事。大学院修了後は島氏が理事長を務める神田東クリニックにて多数の企業のメンタルヘルス担当者へのコンサルティング、社内研修、労働者のカウンセリングの実践経験を積む。
国内有数の大手企業から中小企業まで対象とし、メンタルヘルスやコミュニケーションにまつわるあらゆる課題解決を支援する。
お問い合わせ

本記事の執筆者を講師としたセミナーのご提案が可能です。
ご相談後にお見積りを作成いたしますので、
まずはお気軽にお問い合わせください。

TEL 03-6304-5560
(平日9:30-18:00)