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企業に求められるコロナ対策 6000枚のマスク:企業の力|産業医解説

  • 更新日:2021年02月18日

  • 公開日:2021年02月18日

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企業に求められるコロナ対策  6000枚のマスク

歴史に残る年、2020年

忘れもしません。2020年の初め、その頃ニュースになっていた新型コロナについてどう思うか、産業医として訪問している企業の衛生委員会で尋ねられました。私は即座に「これは、今まで想像もできなかった大変なことになるでしょう」と答えました。その頃はまだ多くの人はそれほど深刻には考えていませんでしたので、私の反応は奇異に映ったかもしれません。しかし、その後それは現実のものとなっていきました。

私は長年、企業内部で産業保健関連業務に携わり、その経験を元に産業医として企業の健康課題、メンタルヘルス、関連法律などの問題に取り組んでまいりました。今回のコロナ禍はまさに未曾有の出来事で、多くの企業が対策に苦慮しているであろうことが容易に想像できます。メディアや国は様々なガイドラインや感染情報を配信していますが、企業内部の人事労務を担当される方々にとっては、それらをどう取り入れてよいのか、戸惑っておられるであろうことが容易に想像できます。

倉庫から出てきた6000枚のマスク

しかし、そんな中、驚いたことがあります。日本中でマスクが無くなっていった頃でした。私が産業医として訪問している企業で、倉庫から6000 枚のマスクを出してきた社員がいたのです。2009 年の新型インフルエンザの流行時、必要な量を全社員数から割り出して6000 枚とし、マスクを備蓄していたのです。

マスクの備蓄は企業内では地味で理解を得るに難しい案件です。この予算を通し、さらに備蓄場所を確保することは、簡単なようにみえますが企業によっては不可能に近く難しいことでもあります。私は産業医としての長い経験の中、社会の中で企業の力は国のそれに匹敵するほど大きいと感じてきました。それを実現するには、いかに具体性のある提示ができるかが鍵です。6000枚のマスクは一つの例ですが、企業はやろうと思えば何でもできるということの証明でもあります。

コロナ対策:郷に入れば、郷の言葉で

さて、産業医として日頃心がけていることがあります。それは企業の中ではそれぞれの組織に合わせたロジックでアプローチするということです。多くの医師は医療機関という特殊な組織で働いています。私もかつて病院から企業内の医務部門に移った時はそのギャップに驚きました。しかしそこで学んだのは、『郷に入っても、郷に従う必要はありません』が、新しいことをするならば、『郷の言葉、郷の方法論で進めなければならない』ということです。

今、それぞれの企業へ社会的要請としてコロナ対策が求められています。しかし、例えば衛生委員会などで、コロナウィルスの医学的知見を披露したり、単に「対策をしてください」と言うだけでは実現しません。まず、どうスタートさせるかという具体策の提示が必要です。例えば「対策のリーダーを決めてください」というような提案。これがリスク管理の第一歩となります。このような方法論が『郷の言葉』で進めるということです。

そして、その上で具体性のあるプランニングに落とし込んでいきます。例えば、職場で感染が疑われる人が出るということは何を意味しているでしょうか。いろいろなケースが想定できるわけです。仕事を終えて帰宅後に「感染しました」と電話がある場合。午後の会議中に誰かが「熱があるみたいだ」と離席する場合もあります。そのそれぞれにおいて社内の対応は全く違ってきます。前者であれば、何が危険とみなされなければならないか、後者の場合はどう対応すれば良いか。ここには科学的な知識が必要となってきます。こう考えた時、それぞれの場合に何が必要であるかが見えてきます。例えば前者であれば、「感染しました」という電話は誰が受け、誰に回すかということです。そして後者であれば、会議に同席していた人たちをどうするか、発熱している人たちをどうするかということになるでしょう。すると、そういう人たちを一時的に隔離する部屋が必要であることが容易に分かります。そしてその上で、医学的には隔離はどうすればよいのか、法律はどうなっているのかなどが疑問として浮上してくるでしょう。

産業医の役割は、このような流れをコントロールしてゆくことです。それにはそれぞれの組織の体質に合わせた提案と、医学的な知見の提示。その二つのタイミングとバランスをとっての協同が重要であろうと思っています。

新しい法律の整備が進み、これからワクチンが導入されるとはいえ、まだまだ社会的に免疫が獲得されるまでには時間がかかります。今までと同じでは社会を存続させていくことができません。さまざまな新しい習慣やルールが必要です。もし今回、新型コロナを収束させることができても、第二、第三の危機の可能性もあります。

書籍のご紹介:新型コロナの参考書

新型コロナの参考書 伊藤 博澄著 熊本文化出版会館発行.jpg

この度、新型コロナへの企業の対応に関する情報をまとめた本を上梓いたしました。上記のような具体的な対策方法はもちろん、理解しやすいようにイラストを多く使い、事例や法律、社会的支援などに関しても網羅した実用書です。対策関連の費用を社内で獲得するためには、稟議書なども必要となると思いますが、その資料とできるよう、引用なども記しております。

▼新型コロナの参考書
▼伊藤 博澄著
▼熊本文化出版会館発行(https://www.kumamotoshuppan.com

(文/産業医 伊藤 博澄(いとう ひろすみ)
熊本大学医学部卒、医学博士、認定産業医、ユタ大学リサーチアソシエイト、国立大学医学部助教授を経て、企業の医務、健康管理部門等に勤務。生命保険関連企業の立ち上げにも関わり、長年、企業の顧問として産業衛生に携わっている。
保険審査、賠償関連専門家
医科研究会株式会社 代表取締役
日本賠償科学会評議員
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