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新型コロナ禍の中での健康管理と産業医との連携

  • 更新日:2020年06月17日

  • 公開日:2020年06月17日

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 今年1月以降にも国内で確認されるようになった新型コロナの影響で各社での事業運営に大きな影響が続いているものと思います。慣れないテレワークを急遽始めたり、首都圏では自粛解除で通勤ラッシュが戻りつつあり、顧客対応を行う部署では感染のリスクを気にしたりと、全ての関係者がストレスを感じながら、対応を続けておられることでしょう。

 今回は新型コロナ禍の中で、従業員の健康管理に関して、平時とは異なる視点で対応すべきポイントをご紹介します。その上で産業医の先生方との連携について、心掛けられるとよい点もご説明します。

目次

  1. 感染予防と健康管理
  2. 重症化の防止
  3. 産業医との連携強化のために

1. 感染予防と健康管理

 3月に新型コロナの新規患者数が増え、4月初めの政府による緊急事態宣言により一気に自粛ムードとなりました。国民、市民、自治体等の関係者の方々の努力でようやく新規患者数は減少してきました。

けれども新型コロナの流行は国民の7割が感染し、免疫を持つか、効果と安全性の確認されたワクチンが広く使用できるときまで続くと考えられます。それまでは断続的な流行と一時的な収束を繰り返す可能性があります。

そうした状況下では、職場の健康管理として、従業員の方々に対して、以下の適切な対応を求めていく必要があります。

  • マスクの効果と限界を正しく理解し、適切に着用し、汚染したら廃棄すること
  • 必要なタイミングで都度、正しく手洗いを行うこと
  • 新型コロナは三密と呼ばれる環境で感染する可能性があり、そうした環境に無用に近づかないこと
  • 職場のトイレの使用でも接触感染に気を付ける必要があり、歯磨きやお化粧の際には十分に注意すること
  • もしも発熱等の症状が出た場合には自宅待機の上、職場に電話連絡等で報告し、適切な対応を相談すること

 
これらの情報を衛生委員会や健康教育の場を通して、繰り返し従業員の方々に周知し、正しい対処を徹底行く必要があります。

2. 重症化の防止

新型コロナに感染しても、必ずしも症状が出るとは限りません。この点が新型コロナ対策の難しいところです。感染者のいくらかの割合の方に症状が出て、今のところは最終的にPCR検査によって新型コロナと診断されます。このうち2割くらいが重症化すると言われ、さらにそのうちの3割が一般には危篤と呼ばれる状態に陥ります。

 これまでの医学的な知見で重症化に関しては、高齢であること以外に高血圧症や糖尿病、呼吸器疾患や肝障害、腎障害等、さらには喫煙歴やがんなどの免疫低下が起きる病気を持つ場合にも、ハイリスクであることが明らかにされています。従業員の方が重症化しないように対応することは、健康管理上とても大事です。

 日頃の健康管理活動では、これらの情報は一般定期健康診断の事後措置の中で明らかになっていると思います。あるいは治療と仕事の両立支援の対応を行っていれば、ハイリスク者の把握もできていることでしょう。

 一方で70歳定年努力義務化からさらには75歳からの年金受給開始まで、極端な少子化に伴う高年齢労働が避けられなくなっています。60歳ないし65歳以上の従業員がいる場合には、特に重症化のリスクがないかを確認しておく必要があります。

 妊娠中の方もリスクがあると考えられますが、該当する従業員の人たちの通勤や業務を見直し、可能な限り感染の可能性を小さく抑えるよう、就業上の配慮を行うことが求められます。幸い、新規患者数の減少で6月からは緩和措置の期間と思われますので、その時期にこれらの対応を見直し、確実な把握と配慮の実行を行うのが良いと思います。そして、それらには産業医との連携が欠かせません。

3. 産業医との連携強化のために

 さて、職場にやってくる産業医の先生方との連携は上手くいっているでしょうか?

上手くいっているかどうかは、実は次の質問で分かります。

  • 新型コロナへの対策で困っていることをざっくばらんに相談できますか?
    ⇒上述の感染防止策や重症化防止の対策等に関する事項

  • メンタルヘルス不調者等への対応のアドバイスも日頃から求めることができますか?
    ⇒職場復帰の判断や主治医との連携等


実際には「どちらもあまり上手くできてない」という方が少なくないかもしれません。

職場の健康管理に携わって四半世紀以上になりますが、企業等の人事部門等の関係者と産業医の先生方との連携が進まない様子を多数拝見してきました。

 新型コロナにせよ、いわゆるコロナ鬱を含むメンタルヘルス不調にせよ、職場で頼ることができる唯一の医師である産業医とは、十分にやり取りができているはず・・。けれども、企業等の関係者から「良い産業医の先生を知りませんか?」と何度も尋ねられた経験があります。その背景には企業等の方々と産業医の先生方とのコミュニケーション・ギャップがあると考えています。

 医師である産業医は日頃はクリニックや病院で医学的な診断と治療を専門的に行っています。新型コロナにせよ、うつ病等の不調にせよ、医学的な知識は十分のはずです。けれども職場で求められることが何なのかをご存じない先生方が少なくありません。

 それは「働く人が仕事を通じて病気にならないこと」と「職場で持病を悪化させないこと」の2つです。そのためにお薬や手術で治すことではなく、職場を管理する方々に意見を伝えるというのが産業医の実務の核です。

 日本医師会認定産業医の研修会講師を務めることがあり、度々先生方に、これらの考え方を解説してきました。拙著、『嘱託産業医の虎の巻 ~初めて手がける時の勘所~』(日本法令)(https://www.amazon.co.jp/dp/4539727478/
https://www.horei.co.jp/item/cgi-bin/itemDetail.cgi?itemcd=2472747
もそうした意図で上梓したところです。

 新型コロナの最終的な終息にはさらに1年ないし1年半以上かかるかもしれません。上述の感染防止策や重症化防止の対応以外にも産業医の先生方に相談したいことは流行の経過に応じて、どんどんと出てくることでしょう。そうした場面で先生方になんでも相談できるよう、これを機会に連携を強化する対話の機会を持つことをお勧めする次第です。

(文/医師 亀田 高志)
株式会社健康企業代表・医師。1991年産業医科大学医学部卒。
大手産業医、産業医科大学講師を経て産業医科大学設立による(株)産業医大ソリューションズの創業社長を2016年まで務め、現職専従。福岡産業保健総合推進センター産業保健相談員、日本産業衛生学会エイジマネジメント研究会世話人、国際EAP協会日本支部理事を務める。
著書は上記以外に『【図解】新型コロナウイルス 職場の対策マニュアル』・『【図解】新型コロナウイルス メンタルヘルス対策(近刊)』(エクスナレッジ)、『第2版 管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント』(労務行政研究所)、『健康診断という「病」』(日経プレミアシリーズ)など。