「花粉症による生産性の低下を防ぐ」
- 更新日:2020年03月25日
- 公開日:2020年03月25日
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くしゃみ・鼻みず・鼻づまり・目のかゆみなどつらい症状に悩まされる花粉症。
今月はその中でも、冬の終わりから春にかけてのこの季節に発症するスギ花粉症についてお伝えいたします。
花粉症の原因やメカニズム、治療やセルフケアについて、厚生労働省がわかりやすいパンフレットをHP上で公開しておりますので、ご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000077514.pdf
1)花粉症と労働生産性
花粉症による企業の労働生産性低下の原因は、大きく分けて2つあります。
一つは、花粉症そのものによる低下です。
もう一つは抗ヒスタミン薬の中枢神経系抑制による低下です。
抗ヒスタミン薬を使うことによって眠気を感じ、仕事の能率が下がることがあります。
これらによる損失は非常に大きいと考えます。
ある研究では2008年の全般労働障害率が33%、その翌年が42%で、花粉症患者の労働生産性は大きく障害されていることが示されています。
また花粉の飛散量が多いほど労働生産性に与える影響が大きいということもわかっています。
つまり花粉症は、単に個人が辛いというだけではなく、労働生産性へも大きく影響しており、企業として対策していく必要がある課題となっているのです。
2)治療法
花粉症の治療には大きく分けて、対症療法と根治療法の2つがあります。
<対症療法>
症状の軽減を図るための治療法(薬物療法など)です。
しかし花粉の飛散が始まり、症状が重くなってから治療を開始したのでは、回復するまでに時間がかかります。
したがって、花粉の飛散が始まる前から治療を始めて症状の進行を防ぐという方法がとられています。
こうすることで、生産性の低下を最小限に抑えられます。
基本的な治療法について、ご存じない方も多いので、従業員に向けて正しい情報提供をすることで、労働生産性の低下を抑えることにつながります。
<根治療法>
こちらは、スギ花粉症自体を根本的に直していく治療法です。
根治療法には皮下免疫療法と舌下免疫療法、手術療法があります。
今回は皮下免疫療法と舌下免疫療法について取りあげていきます。
◆皮下免疫療法は、花粉の抽出液を最初は低濃度のものを皮下に注射して、その後少しずつ濃度を上げて注射し、花粉抗原に対する免疫を獲得させる方法です。
しかし濃度が安定するまで週1回程度通院しなければならず、常勤者には難しい場合が多いのが現実です。
◆舌下免疫療法はアレルゲンを含む舌下錠の服用、もしくはスプレーを舌下に毎日実施する方法です。
月1回程度の通院で治療できるため、現実的な治療法です。
舌下免疫療法は副作用も少なく2018年6月には小児(5歳から)にも認可され、私の息子(小学生)も実施しております。
毎日服用することに不安をおぼえる方もいらっしゃいますが、薬ケースの活用や服用のタイミングの習慣化により、特段の苦労なく治療を継続しております。
幸い効果も現れ、昨年のシーズンの際には症状が出ませんでした。
ただし、これらの治療は花粉が飛散していない時期に開始する必要があり、主治医と相談する必要があります。
早目に情報提供することで、来年度以降の生産性によい影響を与えると考えます。
3)企業としてできる花粉症対策
■情報提供(対処療法開始時期・根治療法などについて)
■エアコンのこまめな掃除
エアコン内部に入り込んだ花粉が送風ファンから噴き出てしまうため。
■加湿器の設置
空気中に飛散した花粉を、加湿器で湿らせて床に落とすと、それだけで花粉が飛ぶのを減らす効果が見込めます。
■空気清浄機の設置
■出入り口にブラシや粘着カーペットクリーナーの設置
服についた花粉を落としてから入室してもらうため
などがあります。
ティッシュやマスクなどの消耗品費、花粉対策メガネ購入費、通院費、薬代などの費用を一部負担。あるいは対策グッズを現物支給する「花粉症手当」をとりいれている企業もあるそうです。
それくらい、花粉症が企業の労働生産性にもたらす影響は大きいと認識されるようになって来ています。
先に挙げた花粉症対策は、花粉症に罹患していない従業員の協力や理解も必要になります。
その点も踏まえた上で、花粉症にたいする情報や対策を実践していっていただきたいと思います。
(文/産業保健師 小林智美)
産業保健師・メンタルケア心理士・アンガーマネジメントコンサルタント・叱り方トレーナー
北里大学看護学部卒業、昭和大学横浜市北部病院産婦人科病棟勤務。退職後、2007年より産業保健師として複数の健康管理の立上げや特定保健指導、健康管理に携わる。
2011年~大手IT企業関連会社にて産業保健師として勤務。またメンタルケア心理士・アンガーマネジメントコンサルタントなどの資格を取得。行政主催の子育て講座や企業でメンタルヘルスに関する講演を実施している。
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このブログは、さんぎょうい株式会社のお客様向けに配信しています◆さんぎょうい㈱メールマガジン◆2019年12月11日号に掲載したものを転載しました。