「勤務間インターバル制度が企業にもたらすこと」
- 更新日:2020年01月29日
- 公開日:2020年01月29日
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2019年4月に働き方改革関連法案が一部施行され、半年以上が経ちました。
皆様はどのようなことに取り組まれ、どんな変化や成果を得ているでしょうか?
11月は過労死等防止啓発月間であり、過重労働解消キャンペーンが行われています。
働き方改革でも、時間外労働の上限規制や年次有給の確実な取得等、過重労働防止のための取組みが示されており、その強化が求められています。
そこで今回、働き方改革の中で努力義務とされながらも、その必要性がうたわれている「勤務間インターバル制度」についてお話しさせていただきたいと思います。
厚生省の勤務間インターバル制度HP
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/interval/
■勤務間インターバル制度とは■
「勤務間インターバル」制度は、勤務終了後、一定時間以上の「休息時間」を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保するものです。
■勤務間インターバルはなぜ必要か■
①健康維持に向けた睡眠時間の確保につながる
②生活時間の確保によりワーク・ライフ・バランスの実現に資する
③魅力ある職場づくりにより人材確保・定着につながる
④企業の利益率や生産性を高める可能性が考えられる
OECD(経済協力開発機構)の報告によると加盟国28国の中で、日本はノルウェーに続き2番目に睡眠時間が短いとのことです。
睡眠時間が短いと、心臓病や肺炎、生活習慣病、精神疾患など様々な病気を引き起こすリスクが高くなります。
またある介入研究では、夜間睡眠を1日当たり約 5.8 時間に制限すると、制限せずに 8.6 時間眠らせた場合に比べて眠気が増し、注意力が低下することが示されています。
さらに朝8時から持続的に1日以上徹夜で覚醒させた介入研究では、認知・精神運 動作業能力は、夜中の3時(17 時間覚醒)で血中のアルコール濃度が 0.05%(日本では、0.03%以上で酒気帯び運転)の時と同程度に低下し、翌朝8時(24時間覚醒)にはさらに血中アルコール濃度 0.1%(およそビール大瓶1本飲用に相当)の時と同程度に低下することが示されています。
これらの事から、睡眠時間を確保することは様々な病気のリスクを減らし、従業員一人一人の生産性の向上や低下の防止につながり、引いては企業の利益率や生産性の向上につながります。
次に、勤務間インターバル制度を導入することにより、生活時間の増加につながります。
家族、友人との充実した時間や趣味や自己啓発のための時間確保につながり、豊かな生活を得、リフレッシュできるようになります。
これまで、長時間労働の防止に焦点が向いていましたが勤務間インターバル制度を導入することにより仕事のオン・オフの切り替え、私生活を充実させることにも焦点が置かれ、仕事に対する意欲や作業効率・労働の質の向上が図られ、仕事と生活の好循環が生まれることも期待されます。
そしてワーク・ライフ・バランスが確立された職場環境を整えることは離職を減らし、人材の定着につながります。
またあるアンケートにおいて(経済産業省「健康経営法人 2018中小規模部門について」より)学生とその親が就職先に望むこととして「従業員の健康や働き方に配慮している」という項目が高い回答率となっています。
つまり勤務間インターバル制度を導入することによりその要望に対応することができ、人材の確保となり得ると言えます。
働き方改革において、勤務間インターバルの実施について、休息時間の長さや不就労時間の賃金の取り扱いなど多くの部分が企業に委ねられています。
それゆえ、導入前に検討しなければいけないことが多くあります。
そして自社のメリット・デメリットを十分に考慮したつもりでも最初から完璧な形での導入はなかなか難しいものです。
最初は、無理のない形で導入し、実際に導入後に不具合を感じたり、より良い形での導入が可能と判断したら修正していけばよろしいのではないでしょうか。
★導入において、助成金制度が設けられています。
時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150891.html
ご参照ください。
(文/産業保健師 小林智美)
産業保健師・メンタルケア心理士・アンガーマネジメントコンサルタント・叱り方トレーナー
北里大学看護学部卒業、昭和大学横浜市北部病院産婦人科病棟勤務。退職後、2007年より産業保健師として複数の健康管理の立上げや特定保健指導、健康管理に携わる。
2011年~大手IT企業関連会社にて産業保健師として勤務。またメンタルケア心理士・アンガーマネジメントコンサルタントなどの資格を取得。行政主催の子育て講座や企業でメンタルヘルスに関する講演を実施している。
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このブログは、さんぎょうい株式会社のお客様向けに配信しています◆さんぎょうい㈱メールマガジン◆2019年11月13日号に掲載したものを転載しました。